第10話 家政"夫"ゲームする

 京介の家に戻ったふたり。早速買ってきたゲームで遊ぶ。そして夕飯は本当に宅配ピザを。


「意外とおいしいもんなだな。康太さんも美味しい?」

「はい、とっても」

「食べたらまた一緒にやるぞ!今度は負けないからな!」

「はい。京介様はすごいです。本当に初めてですか?上手いから僕ももう負けそうですよ」

「まだまだこれからだ!よし行くぞ!」


ソファではなく、ソファの下の床に座ってゲームを楽しむ2人。



 テンションが高まった京介は


「おい康太、ちがうって」


 呼び捨てにしてみます。

 ヤバい!怒るかな?と康太の反応を見る。

 呼び捨てにされたことへの違和感などは無さそう。


  ゲームに集中しててわからなかったのか?


「これでいいんですよ!京介様!」

康太は『様』をつけて返事をする。


「いやいや!康太ちがうよ、こっちのが正解だって!」

もう一度、呼び捨てをしてみる。


「ほんとだ、京介様の言う通りでしたね、すごい」


やっぱり様をつけて呼んでくる。

少し京介はイラつき、ゲーム中なのに康太の顎をつかみ京介の方へ向ける


「康太、俺に言うことないか?思うことないか?」

「え?…………なんのことでしょう?」


康太には何を言われているかさっぱりわからない。


「俺、康太って呼び捨てにしたんだけど、わからなかった?」

「わかってますよ」

「どう思った?」

「んー、友人になれたようで嬉しく思いました」

「だよな?だよな?嬉しいよな?じゃ俺が言いたいことはわかるよな?」


「…………」

「康太、もう俺に様は禁止!さまはいらないからな。俺のことも呼び捨てにしろ」

「そんなことできません!京介様は雇い主で私は家政夫ですよ!それなのに呼び捨てなどと……無理です」


「俺が良いって言ってるのに?」

「無理です!」

「でも様はイヤだ!」

「無理です!」

「他にないのか?」


「他に……ですか?んー……"さん"なら……なんとか許容範囲かと……」

「"さん"か。んー、じゃとりあえず、さんから始めようか。呼んでみて」

「今ですか?」

「今!」

「わかりました…京介……さん?」


呼び捨てではないが、さんだけでも十分くすぐったい感じがした。

「よし!!」


 京介は康太のあたまをくしゃくしゃに撫でる。照れる康太。


  ヤバい……可愛い………

  クソこいつかわいい………

  俺、ヤバい……


「さ!負けないぞ!」

「僕だって京介さんにはまだまだ負けませんから!」


夢中でゲームをしていると、和子が帰ってきた



「たっだいまー!ってあら?2人でゲームしてるの?」

「あぁ、母さん邪魔しないでよ?俺勝つ気でやってるんだから」

「どっちが強いの?」

「僕です。おかえりなさいませ、お茶でもお入れしましょうか?」

「いいのいいの。ちょっとみせてみせて。ほらほら2人とも集中して!康太さん是非とも勝ってちょうだい。京ちゃんなんかに負けちゃダメよー!


 なんかいいわねー、

 京介がダメダメなところを見るなんて滅多にないことだからちょっと嬉しいわ。

 アッハッハ!なにやってんのよ京ちゃん」


「うるさいな、見るなら良いけど黙ってて!ったくなんで俺の応援じゃなくて康太のなんだよ」

「あらー、当たり前じゃない。だって、康太さん可愛いんだものねー!

 もううちの子に本当にしたいくらいだわ。素直だし、優しいし、真面目だし、仕事も早いし。ほんっとに良い子なんだから」



「あ、そうだ言っとく。明日から康太も一緒に3人でご飯を食べることにするから」

「え……」

驚く康太


「3人で?いいわね。これからは毎食一緒に食べましょう」

「いやいやいやいや、僕は家政夫ですよ。皆さんが食べてから自分の時間で食べますから大丈夫です」


「俺が良くないって言ってるの。ご飯は一緒に同じものを食べる!

 それから康太さ、客用のトイレ風呂使ってるよな?あれもやめてな!今日から俺のトイレ風呂を使え」

「え?何でですか?」


「毎日そのせいで風呂洗いが3箇所になってるだろ?一つでも減せば時間に余裕ができるだろ。

 俺らとご飯食べようと思ったら拘束時間が増えるわけだからその分、他で調整しないとな。

 掃除の時間も掃除機をあれだけ買ったんだから少しは余裕出るだろ。任せれるところはロボットに任せば良い。

 他にも時間短縮になりそうなのがあれば遠慮なく言ってくれ」


「京ちゃんお買い物は?康太さん車ないよね?今バスとかで行ってるでしょ」

「そうなのか?じゃ買い物は俺が一緒に行くよ。車だすから」


「いいですよ!いいです。そんなことまでしてもらったら僕の仕事の意味がないです!そもそも時間に余裕が出来ても何をどうしたら良いかわかりませんし」


「時間に余裕が出来たら俺と一緒にこうやってゲームでもなんでもやって遊んでくれたら良いよ。毎日でもさ。」

「良いわね、それいいわ」


「康太は俺と遊ぶのイヤか?」

「イヤなわけないですよ。今もめちゃくちゃ楽しいですし。

 でも、仕事は、ちゃんと仕事をさせてください」


「頑固だなー、真面目人間か!ま、それだからいいんだろうけど。わかった。買い物は任せるよ。

 でも時間短縮になりそうなことがあれば何でも言ってくれ。

 ご飯と、トイレ風呂は一緒でいいな?」


「そのことですが、お風呂はまだしもトイレは別でお願いします」

「なんで?」

「僕の部屋から遠いからです」

「あぁそっか。たしかに。わかったお前の言う通りでいいよ」

「明日からなんだか楽しくなりそうね」



家族の新しい形がスタートするそんな気分の3人なのでした。

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