白雪姫と八人目の恋人

三郎

第1話:魔女と鏡

「鏡よ鏡。この世で一番美しいのはだあれ?」


「それは貴女様です。ネラ様」


「おーっほっほっほ! そうでしょうね! このわたくしより美しい者などおりませんわ!」


 人里離れた森の奥に、一件の家が建っていました。その家には、魔女が住んでいました。魔法の鏡に話しかけている彼女がその魔女であるネラです。

 ネラの朝は、魔法の鏡に話しかけることから始まります。世界で一番美しい人間が自分であることを確認することが、彼女の日課でした。

 しかし、ある日のこと。


「鏡よ鏡、この世で一番美しいのはだあれ?」


 いつもの質問に、鏡は震える声でこう答えました。


「それは、ビアンカです」


「はあ!? 誰よそれ!」


 ネラの怒号が家中に響きました。いつもネラの姿を写していた鏡にはネラではない白い髪の美しい女性が写しだされます。それを見たネラは怒り狂い、魔法の鏡を投げ倒しました。そして、使い魔のネズミにハンマーを持ってくるように指示します。


「うわっ、ネラ様! おやめくださ——ぎゃー!」


 ネラはネズミが持ってきたハンマーで、魔法の鏡を叩き割りました。鏡は悲鳴をあげ、粉々に砕かれてしまいました。


「ビアンカという女を探しなさい。わたくしより美しい者など、この世に存在する必要はないわ!」


 嫉妬に狂ったネラは、使い魔達にビアンカという女性を探すよう命令を下しました。自分より美しいという女が居なくなれば、また自分が一番美しいことになる。そう考えたのです。

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