流星のプロキオン

第八章 子犬

 『あー、こちら氷河。ゲート発生に巻き込まれました、どうぞー。』



 そういえばライトから借りっぱなしだったトランシーバーから、そんな気の抜けた声が聞こえてきたのはそろそろ武器庫を出ようかと思っていた時だった。その文章の意味を理解した瞬間に俺は思わずレナの顔を見る。おそらく俺も同じような顔をしているのだろうが、怪訝な顔をしたレナが同時に俺の方を見る。ゆっくりと顔を前に戻して状況を考えるが、いまいちなぜそうなったのかわからない。何が起きているのかがわかるだけ、大したものだ。

 俺はため息を吐きながら武器庫を出ると、レナが出たのちに部屋を再び施錠する。どう動こうか、といったところで、レナがつぶやく。


「……まぁ、死にはしないでしょ。」

「そんな薄情な……」


 あまりにもかわいそうである。まぁ俺もそんな気はするのだが。


「とりあえず、なんか返すよ」


 そうレナに言って俺はトランシーバーに語りかける。


「はーい、ゼクルでーす。氷河大丈夫?」

『まあ、多分。草原に出て、周りには何もいない。と言ってもゲートはもう閉じてるだろうから帰るのに時間かかりそうだな。』

「そっか。こっちで何かすることあるか?」

『いや特には………あ、そういや政府で人工ゲート作る装置がどうこう言ってたから、それの確認だけしといてくれるか?』


 俺がそれに答えるよりも早く、氷河とは別の声がトランシーバーから聞こえてきた。


『ライトだ。俺がやっとく。ゼクルは忙しいだろうからそっちに集中しとけ』


 俺は一瞬迷ったが、「わかった」とだけ返してから通信を終了した。隣でレナがが小さく頷いてから、俺の方へと向きなおる。


「ゼクル、大会の調整に入るんでしょ」

「うーん、そうだな。ただ……」


 言いよどむ俺にレナが首をかしげる。


「何?」

「………ライトがあれだけの理由で俺を大会に出させるのが腑に落ちないだけ」


 俺のその言葉にレナも腕を組んで考え込む。


「まぁ、確かに……」

「ただ、狙いを言わないことにも理由があるんだと思う。聞いても無駄だろうな」

「だね……。とりあえず練習しに行こ」


 そうだな、と頷いて準備をしようとしたところで、ふと新たな疑問が浮かぶ。


「……なんでついてくる前提で話してるんだ?」

「……早く準備したら?」

「なんだコイツ」

「コイツいうなその口凍らせるぞ」

「こっっっわ」


 いつも通りのおふざけがひと段落したところで本格的に準備を始める。と言ってもやることは少ない。普段から剣を使っているし、普段と違う部分に慣れるだけだ。そう、普段と違うところ、それはレナの援護である。

 純粋な剣士の強さを競うこの大会では、魔法の使用は禁止されている。体術を使うことはできるのでたまーに体術メインの人間が入ってきたりはするのだが。

 また、属性使いと通常の人間では身体能力に差があるため、それぞれを分けた二部制で大会が進行する。俺はもちろんのことであるが、属性使いの枠になる。二年ぶりの剣術大会がどのようになるのか、せっかくならそれを見ながら大会に出よう。そう思いなおしながら、静かに目を閉じる。




 そして問題の、レナの援護がない状態での動きの練習だが、せっかくレナが来ているのだからこの方法しかないだろう。


「よっこいせ」


 気の抜けた声と同時に数十発の魔法弾が俺に向かって順番に飛びかかってくる。それをひたすら躱すだけ。やることは確かにこれだけだが、レナが放った魔法弾をすべて自身の力だけで躱さなければならないのはかなり難易度が高い。元は嫌々のような雰囲気で始めたこの練習だが、レナもしばらくやっているうちに乗り気になったらしい。現在地は東七区の平原だ。


「はぁい」


 再び魔法弾が充填(本来この言い方は間違っている気もするが、レナの周りで一度とどまってから飛んでくる様を見るとこの言葉が妙にしっくりくる)されると、連続で襲い掛かってくる。右から迂回してきた魔法弾をバックステップで避けると、正面から他とは違う魔法弾が飛びかかってくる。それを半ば反射的に右に飛んで回避すると、その隙を突くようにもう一度右から魔法弾が流れてくる。あたりを一瞬見回したところ、四方八方から魔法弾が飛びかかってきている。レナは俺の癖を知っているため、完全に詰めに来ている。が、確かにこのぐらいの状況じゃないとちゃんと感覚を取り戻しているかがわからない。俺は残された回避できる唯一の方向へと回避する。その方向は、前。

 そう、前に回避するということは、レナとの距離がつまるということ。それも射線に入った状態で。レナの左右に浮いていた魔法弾が急加速してこちらに飛んでくる。恐ろしい速さで飛んでくる魔法弾には、回避を許すような隙はない。しかし。

 俺はこうなることを予見して、右腰に差したままだった片手剣を一気に抜き放った。炎と闇の魔法弾をその剣で切り裂き、魔法弾が消滅する。後ろで行き場をなくした魔法弾が空中で弾けて消える。魔法弾の生成をやめたレナが俺に軽く回復をかける。


「お疲れ。結構いいんじゃない?」

「まぁ、思ってたよりかは動けたな。最後は避けれないと思ってたし」

「……ちょっと楽しくなってしまった」

「知ってた」


 さてと、とレナが腰に手をつきながら背筋を伸ばす。


「ここからが本番だよ」


 にっこり笑った彼女の顔を見て、俺は


 さすがに恐怖を感じた。


 俺がまたも反射的に全力で上に跳躍した途端に、さっきまで俺がいた足元は爆発していた。土煙がすごい。爆風をなんとか利用しながら距離を取って着地すると、叫ぶ。


「おいいいぃぃぃ!? 殺す気かああぁぁぁ!?」


 が、その叫びに対しての返事は無言の魔法弾だった。


「くそ野郎がぁぁぁ!」


 俺は土煙が七色に光る景色を見た瞬間に全力で横に走った。ギリギリ離れたタイミングでさっきまで俺がいた場所を十数発の閃光が染め上げる。いやな予感がした俺は、振り返りながら右手の剣を体の中心線をかばうようにしながらバックステップする。最悪なことに俺の嫌な予感は的中したらしく、俺の方向に寸分違わず狙いをすましたマジックアローが射出される。


「いや、ちょ…!」


 俺が何かしらの文句を言う暇もなく、俺の体に矢が次々と刺さる。と、その直前。右手に持っている剣に、矢が全弾当たった。正確に言うと、右手に持った装飾華美なこの白銀の剣が、矢を引き寄せた。矢をひきつけたこの刀身に当たった矢は、すべてが音もなく消滅する。


 レジェンド武器というのは、それぞれが属性以外に何かしらの特異性を持っている。俺の普段持っている電竜刀であれば、その所有者に電気を可視化できる能力を付与するという特異性があるし、レナの杖は龍脈の力を魔力に変換できるはずだ。このように、レジェンド武器には固有の能力が付与されているのだが、残念ながら俺はこの武器の能力を知らなかった。しかし、おそらくこれがこの剣の特異性だ。

 皮肉にも完全に当初の目的を忘れて暴れているレナの攻撃のおかげではあるが、この剣の能力を知ることが出来るかもしれない。そろそろレナに突っ込みを入れて終わろうと考えていたが、この際そのまま続けて完全に能力を明らかにすることにする。続けてレナがマジックアローを撃ちこんでくる。その矢に対して、回避という考えは捨てて、その全弾を弾き落とすつもりで、剣を構える。その本数は二十を軽く超えていると思う。おいおいやりすぎだろ……と考えながら、剣を握る手から少し力を抜く。さっきの防御の時には、刀身に当たりさえすればいいと思っていたからそこまで力を入れていなかった。今回も力を入れずに構えてみる。剣から力めいたものは何も伝わってこない。しかし、力ではなく、動きは感じる。剣が震えるような感覚。右手の主導権をその震えに任せ集中すると、途端に剣が動き出す。動き出したのは剣だけではない。魔法の矢も同時に、この刀身の方へと標的を変えたかのように曲がる。そのまま刀身と矢があたり、


「消えた…!」


 これが特異性か!

 次々と迫りくる矢を消滅させながら、考える。この剣の特異性は魔法に反応して消滅させる能力。おそらくこれであってるはずだ。この能力は正直かなり強力だ。何かしらデメリットか条件があるとは思うが、今はそれを試している暇はない。そろそろ歯止めが利かなくなっているレナを止めに入る頃合いだ。俺は矢を一通り消滅させてからレナにテレパシーを使って止めるように伝える。途端にあたりに感じていた魔力はなくなり、俺の右、数十メートルの位置の空間がゆがむ。おいおい、練習で光学迷彩を使うなよ。と思いながらレナの方に歩み寄る。さすがにもうすぐ昼時のため、ここからは遊んでいる場合ではない。ちゃんと意味のある練習をしなくちゃならない。


 と、その後、レナが出したゴーレム(レナの魔法でテレポートする)との斬りあいや、レナが魔力で生成した剣(レナの魔法で飛び回る)をひたすらパリィするなど練習を続けて、早くも昼を少し過ぎ、俺たちは昼を食べるために南2区の喫茶店へと戻った。


「マスター、アイスラテと照り焼きサンド」

「ミルクティーとボロネーゼくださーい」


 俺たち二人で並んでカウンターに座ると、そろって注文を終える。スツールに腰かけてスマホを取り出すと、今やってるソシャゲの周回を始める。推しのイベントなんだから周回するしかない。仕方ないよなぁ。横でレナが小さくため息を吐く気配がしたが、そんなもの関係ない。そのままスマホをポチポチしていると、レナがゆっくりと話し始める。


「やっぱりさ」

「なに?」


 レナが一瞬言い淀む。こいつが言い淀むことはあまりない。


「天くんはゼクルの昔の事、知ってるんだよね」

「あぁ、そうだな」

「ゼクルのあのときの事、私知らないからさ。教えて欲しいんだ」

「………」

「わかってるよ。ゼクル、意味も無く戦ったりしないもんね」


 そこでレナが一泊置く。


「けど、やっぱりさ…私としてはコンビの昔を知らないのが不安なんだよね」


 確かにそう言われればそのはずだ。とも思う。だが、おそらく


「……大体の目星はついてるんだろう?」

「…まぁね。けど、確証が欲しい。ぼんやりとしか知らないなんて、嫌だ」


 レナがそんな事を考えているとは思わなかった。レナはいつだって、思ったことをすぐに言うタイプで、誰にも物怖じしない。けどこの前に俺が思ったように、自分でも気付かぬうちに"そんな自分"を演じているのかも知れない。そんな状態だからこそ、駆られる不安も大きくなっている、のかも知れない。


「まぁ、色々あったんだけどな…」


 また誤魔化すのか、といった顔。だけど、まぁ。もう誤魔化す必要もないか。


「あの時…俺は自分を信じ過ぎてたからな…」


 あれは4年前のことだ。

 昔の俺は自分の他に興味がなかった。自分と、剣があればいいと思っていた。それが、全てだった。剣術大会にずっと出続けて、そして、友達ができた。俺は少しずつ、他のことに興味を持ち始めたし、誰かを気遣うこともできるようになった。あいつと出会うことで、俺が変わった。それは間違いない。そこから、今の俺ができた。


 ある日、街中で襲われている女の子がいた。俺とあいつがそれを放っておくわけがない。女の子を襲っている男数人に放せ、と言った。けど、男達は標的を俺たちに変えてきた。だから俺たちは迎え撃った。男達は普通より少し喧嘩が強いぐらいで、属性使い二人に勝てるほどじゃなかった。男達はその後逃げていって、女の子も無傷だった。けど、その男のうち一人、政府の人間の息子だった。

 たまたまそいつと直接あたったのが、俺じゃなく、あいつだった。あいつは捕まって、騎士団や憲兵団じゃなく、政府直属で拘束された。

 ……あぁ、あいつに直接色々したかったってのもあると思う。けど、それだけじゃない。


 俺はいてもたってもいられなくて、直談判しに行った。あのとき襲われてた女の子も、どこから聞いたのか知らないけど、来てくれた。それで王宮に行ったんだ。要件を伝えると、しばらく経ってから入ることができた。あいつが囚われているのは王宮じゃないと思っていて、けど、政府にもまともな人間がいるはずだと思って、自分が会える一番偉い人を出してくれって伝えた。それで、案内役の男が出てきて、王宮内を歩いていたとき、後ろから殺気を感じた。咄嗟に振り返ると、そこには、あの時相手にした男がいたんだ。

 咄嗟に剣を握った俺は後ろにいる案内役に声かけようとして、そして……女の子が捕まっているのを見た。


 そうだよ。案内役の男が、犯人の父親だったんだ。そこからは、想像通りだよ。王宮内で奴の息がかかった近衛兵と乱戦になった。逃げ隠れしながら戦っているうちに、見たことのない場所に来ていた。俺は、王宮には何回か入ったことがあったし、珍しいものだったから、王宮の中で行った場所はほとんど覚えていた。警備に入ったこともあったし、結構知っているつもりだったけど、それでも知らない場所だった。そこは地下で、近くのドアを一つ開けてみた。見たことの機械が大量に置いてあって、周りを見ても、装飾はなかった。簡素な作りでここが本格的な研究施設だってことはすぐにわかった。


 そこには見渡す限り人はいなかった。重要な施設のくせに人がいないのか、それとも研究者は総じて避難しているのか。どちらにせよ好都合だったから、俺は隠れやすい部屋を探すことにした。敵のホームグラウンドで戦っている以上、こっちだけが疲労していくのは目に見えていたから。そして、十数個の部屋を見ていた時だったよ。人の足音が聞こえた。耳をすませば、話し声も聞こえる。俺は壁沿いに進みながら、話を聞いていた。女の子の声が聞こえた。それに、その子とは別に、若い男が痛みをこらえるような声も聞こえた。


 やっぱり俺、我慢できなかった。その部屋の扉を開けた。

 あいつがいた。縛られた状態で機械のスキャンにかけられている最中だった。それを見てすべて察した。奴ら、あいつの特殊体質を研究対象にしてたんだ。あいつはちょっと特殊なんだ。


 俺の姿を見た数人の科学者とその護衛の兵が驚いた。驚いたのは俺も同じだったけど。まずはじめに科学者の一人が助けてと叫んだ。そしたら兵の一人がそいつを掴みあげた。他の兵三人が俺に剣を向けた。科学者も、研究に強制参加させられた被害者なんだとわかった。俺は兵と戦った。一対多数で不利だったけど、なぜか勝てた。あの戦闘についてはよく覚えてない。多分頭に血が上ってたからだと思う。気づいたら終わってて、女の子は泣いてて、研究者の一人が介抱してくれてて、他は呆然としてた。あいつを開放してくれと頼むとすぐに開放してくれた。ボロボロで、よろよろで足取りも覚束ない状態で、あいつが引きつりまくりながら笑った。科学者の一人が魔法を使える人で、2人に回復魔法をかけてくれた。あいつも普通に立てる状態になって、科学者が泣きながら謝ってきて、あなたのせいじゃない、と2人で伝えた。女の子の方も同じようなものだった。女の子を連れて、王宮を脱出するために、正面玄関へと向かった。


 ……なぜって、このことを大事にするためだよ。政府の役人が大量に噛んでるようなことじゃないと思ってたから、大事にすれば脱出したあとの追手もすぐに消えると考えた。俺の目的はあいつを連れ戻すことで、王宮を攻撃することじゃない。脱出したあとも追われるような生活はごめんだ。

 正面玄関には結構な人数の兵がいた。俺たち二人と彼らの戦闘になったけど、兵はそこまで強くなかった。おそらく可能性が高い裏口に強い剣士を集めたんだろうと思った。結果的には作戦は合ってたってことだ。それで、王宮を出て、駆けつけてきた憲兵団とも戦闘になった。憲兵の方が王宮の彼らより弱いから、何回か撃退して、追手がなくなった。

 それから、俺はあいつに剣を渡した。その子を頼むと。あいつは少し剣を見つめて考えてから、うん。とだけ言った。俺はそれから憲兵本部に行って自首したんだ。理由がどうであれ、王宮に被害を出したのは事実だ。罪は償わなくちゃいけない。どんな罰だろうと受け入れるつもりだった。俺はそれから捕まった後に、しばらくしてから王宮に身柄を移動させられた。それで、手錠をかけられたまま国王の目の前に出された。処刑されるのかな、とか思ってたよ。王宮内で暴れたんだから国家転覆罪になってもおかしくないし。


 国王は静かに俺に近づいて、ゆっくりと俺に土下座した。


 驚いたよ。こんな国王が世の中にいるのかって。国王が事態を把握したのは俺が自首したあとだったらしい。避難はしていたらしいけど、事態の全貌は当然わかってないわけだし。問題の官僚とその息子は速攻で監獄行き、息のかかった近衛兵も相応の罰を与える、と言われた。あの時の科学者達が証言してくれたらしいし、兵のそこそこの数がこう証言したらしい。


 『彼の戦い方は攻めるような戦い方ではなかった。何かを守ろうとするように見えた』


だとさ。

 でも俺が損害を与えたのも事実だし、何人かには大怪我を負わせたと思う。それに官僚にそんな奴がいたこと。一人に王宮の警備を突破されたこと。これらを公表することは難しい。王宮近くにいた一般人には戦闘が見られている。理由を説明できない以上、釈放もしにくい。だから、公務執行妨害のみで更生プログラムを使うことになった。

 それで俺は政府からの任務で動くことになって、結果として天と出会った。



「これがすべてだよ」

「………あのさ、その友達って、誰?」

「レナは知らない人だよ」

「そっか。あと、その国王って…」

「あのクソ国王以外いると思うか?」

「……だよね」


 レナは少し笑った。俺の話はとても笑えるような話じゃない。少しぎこちない笑い方だ。


「そっか。だから陛下と仲がいいんだね」


 まぁな、と返しながらそう言えばこんな話をしたのはいつぶりだろう、と思った。俺は自分の過去を人に話したくない。思い返すと辛くなることもあるし、ただただ懐かしい記憶もある。けど、人に言わない一番の理由は、俺が怖いからだ。俺は昔のようになることを恐れている。なぜかはわからない。けど恐れていて、言ったらそれが現実になってしまいそうな気がして。それで、言えない。


「……そういえば、なんで出ようと思ったの?」

「え?」

「剣術大会。だって前の君なら絶対断ってた」

「あー、なんでだろうな」


 自分でもよくわからない、というのが本心だ。確かにレナの言った通り、以前の俺なら理由も聞かずに断っていただろう。………いや、もしかしたら


「……もしかしたら」

「何?」



「春だから、かな」


「そっか」



 俺の心に花びら一枚。桃色のその花びらは上から降ってきて、いつの間にか俺の手のひらにあって、そして消えるのもいつの間にか。その匂いもひどく鼻にこびりついて、拭おうとするその拳に、少しの鱗粉。

 なぜか、涙が流れた。

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