#14 八木の企み





 杉浦の暴力事件から10日ほど経過した。


 未だ失恋のキズ跡が残っているものの、学校にはなんとか毎日通学している。




「おはよう!栗山くん、一緒に学校行こ?」


 今日も朝から待ち伏せだ。


 おかしーなー

 八木カンナには彼女と別れたこと言ってないから、この人の中では俺は彼女持ちってことになってるはずなのに、なんでこう諦めずに付き纏うのだろう?



 学校へ向かう道すがら、八木カンナに疑問をぶつける。


『八木、1つ聞きたいんだけど』


「なになに? 何でも聞いていいよ! ついにスリーサイズ公表しちゃおっか???」


 朝からうぜー


『八木のスリーサイズなんか興味ない』


「えー、それ酷くな~い? 折角栗山くんにだけ教えてあげようと思ったのにぃ~! 後から教えろっていっても、もう教えてあげないからね!」


 こいつ、イライラさせる天才じゃね?


『あーもー!黙って聞け! そもそも何で八木はそんなに俺に付き纏うの? 何が目的なのさ』


「それは・・・そう!友達だから! 友達だからだよ!」


『いや、いくら友達だからって、毎朝は待ち伏せして、休憩の度に押しかけてきて、昼飯の度にオカズの交換要求して、放課後は毎日迎えに来るなんて普通じゃない! 絶対何か企んでるはずだ!』


「た、企んでるだなんて酷い! わたしの魅力でメロメロにしようだとか、彼女さんよりわたしの方が一緒に居る時間長くしようだとか、隙見て寝込み襲うだとか、そんなこと企んでないもん!」


『そうか、そんなこと八木は企んでたんだな。 八木がバカで助かったよ。 これからは全力で自分の身を守らせてもらうよ』


「あ!あ!あ! 今わたしのことバカって言ったでしょ! バカって言った人のがバカなんですからね! 栗山くんのがバカですね! ざ~んね~んでした~」




 学校に着いても「バカ、バカ」連呼している八木カンナを放置して、さっさと自分の教室に向かった。



 教室に入ると桑原が相変わらず、うっとおしいことを言って来た。



「朝からカンナちゃんと熱々ラブラブだね?」


『お前、目ん玉腐ってるのか? 八木がバカで勝手に暴走してるだけだぞ?』


「でもみんな二人が付き合ってるって思ってるよ? だから二人が口ゲンカしてても、ただの夫婦喧嘩してるとしか誰も思わないよ?」


『・・・それホント?』


「うん、ホント」


 なんてこった・・・

 杉浦事件の噂が、ここまで悪影響を及ぼしてるのかよ・・・


「それにどうせ彼女とはもう別れちゃったんだし、そのまま付き合っちゃえば? カンナちゃんが栗山のこと大好きなの判り切ってるんだし」


『あ!お前まさか、俺が彼女と別れてること八木に言ってないだろうな!?』


「言ってないよ、流石に。 そのことは一応わたしだって責任感じてるし」


『そうか、ならこのまま秘密にしておいてくれ・・・八木に知られたら今以上に恐ろしいことになりそうで怖すぎる』


「はいはい」


 なんかもう、八木カンナから逃れられる未来のビジョンが思い浮かばない・・・

 俺この先もずっと八木カンナに付き纏われ続けるのか・・・?



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