アリスの告白

「面倒な時代になったものさ」

「でも君の才能があれば今後も新しい作品が書けるだろ?」

「それなんだが……」


 アリスは今日はじめて、言葉をつまらせた。


「ミステリ作家”アリス”は引退しようと思うんだ」

「なんだって?」

「というか引退した」


 ボブは突然の告白に戸惑いながら、アリスの言葉の続きを待った。


「だってもう死んでるんだから」

「なんだって?」

「死んでるんだよ。今朝、君を殺して僕も自殺したのさ。僕らは幽霊なんだよ」


 ボブは何も言えずに黙っていると、アリスはこう言った。


「だからアリス名義での著書はもう出せない。これからはゴーストライターになるんだからさ」



<エピローグ>


その後、アリスはゴーストライターの初仕事として1冊の本を書き終えた。


本のタイトルについて著者と出版社で揉めたらしいが、最終的に以下のタイトルで出版されたらしい。


『アリスとボブ』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る