第16話「汽車ぽっぽ」

ここは遠い世界。一行は汽車で移動中である。そんな中の出来事である。


十六話「汽車ぽっぽ」


先程まで続いていた会話も疲れからか途切れる。

皆思っている、何時までこの汽車に揺られなければいけないのかと。暫くの沈黙が続く。沈黙を破ったのはリリアだった。

「席替えしましょう!」

リルムはそれに反応する。

「それいいね!」

女二人は乗り気だが男二人はどうか。

「面倒臭い。」

「いいねそれ!」

「俺はもう尻から根が生えたから動けん。勝手にやってどうぞ。」

窓側に座って動かない竜輝。それを放置して三人は席替えだ。これで男と女が交互になった。

「男女が隣り合わせで座るなんて何だかドキドキしちゃうわね!」

「別に・・・。」

反応の薄い竜輝、それに比べて・・・。

「「ドキドキ、ドキドキ。」」

リルムと星彦丸は隣り合わせで相当ドキドキしているらしい。それを見てリリアはとっても嬉しそうだ。

リリアは汽車の走行音に隠れて聞こえない位の声で竜輝にひそひそと話す。

「両片思いって素敵よね。キュンキュンしちゃう。しない?」

竜輝は気怠そうに答えた。

「どうでもいい。」

「釣れないわね~。」

またしばらくして。

リルムと星彦丸の二人は緊張が限界突破してうとうとしている。それを見てリリアは小声で言った。

「ああ、そうよ。もうちょっと・・・くっついちゃえ・・・。やった!見て、二人が身を寄せ合って寝ているわ!お姉ちゃん感激!」

そう言って竜輝の方を見る。

「仲良しでいいじゃないか。ん、なんだその目は。」

期待に胸を膨らませている様にも見える。

「りゅうちゃんもデレて良いのよ!?私が膝枕してあげる!」

「誰がりゅうちゃんだ。そういうのは遠慮しておくぜ。」

「でもさっきから壁にもたれかかって寂しそうよ?」

疎外感を感じていることは間違いなかった。

竜輝は思う。

(甘えたいような気もするが。しかしここで耐えるのが俺の昔からの美学であるとなんとなくだが覚えている。困ったものだな・・・。)

竜輝が考え込んだ隙にリリアは・・・。

「えいっ!引っ付き虫!」

「や!何をする!」

「えへへ、そっちが来ないならこっちからよ?こう見えても私は夢魔よ?こういうのが大好物なのは当たり前じゃないスリスリ。」

「むぅ。」

「止めてっては言わないのね?むっつりスケベさんなのね。そういうの・・・大好き。」

耳元で囁く。

まんざらでもない様子の竜輝だった。この変態。

更にエスカレートするその行為。

「ベタベタ、ベタベタ。なでなで、ナデナデ。」

「ちょっと、しつこいぞふふっ。」

「とか言って嬉しい癖に。べたべた、なでなで。」

列車の一角はピンクの空気に包まれた。

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