第3話「砂上の軍隊」

ここは遠い世界。星彦丸の感じた殺意の正体は神の如き煌めきを放つワイバーンであった。三人はこの窮地を凌げるか。


三話「砂上の軍隊」


それはとんでもなく大きな咆哮であった。三人は思わず耳を塞ぎ立ちすくむ。


「ぎょえー!耳に穴が開くー!」

「ほっ・・・吠えたって無駄よ!?私こっここわくないもん・・・!」

「気を付けて!何か来る!」

竜は大きくのけぞりながら息を吸い込む・・・。

そしてそれは放たれる。ただ、極光であった。極光が線状になって周囲を薙ぎ払う。幸いにも三人には当たらなかったが。

「す、砂が焼けてガラスになっている・・・ひえっ。」

「あんなの喰らったらぜっーったい死ぬ!ヤバいよこれぇ!お姉ちゃんやっぱり逃げよう!?」

「HE(ハイ・エクスプロシブ)パンチ!」

拳が当たり爆発を起こすがしかし蚊の涙。

リリアと竜の目が合う。これは不味い。

どんなに度胸があってもこんなでかい怪物に睨まれたら腰が抜けるってもんだ。百戦錬磨のリリアだって例外じゃない。

「あ・・・。」

声すらも出ない。その直後であった。大銅鑼を叩く音が聞こえる。鈍く大きく響き渡る。

「この音は!」

リルムが少しだけ懐かしい気持ちになる。

「・・・!船!?」

星彦丸は驚いた。祖国には海にしか船はいなかった。

だが、確かにそれは砂を滑る大きな大きな船だ。巨大な帆には独特な文様が刻まれていた。そしてその船は機関砲や巨大バリスタで武装されていた。

再び大銅鑼が響き渡り船が竜を横切る瞬間、それらの武装が一斉に火を噴く。バリスタから放たれたロープ付きの弾が竜に絡みつき自由を奪う。竜はそれに驚いて大暴れだ。

「星彦丸、あれはロックスターの軍艦だよ!助かった!」

「ロックスターって砂漠の国でしょ!こりゃ大船に乗ったと思って良い!」

固まったリリアを艦から降りた軍人が素早く回収し再び船に乗る。

「お嬢ちゃん大丈夫か!」

「はっ!リルム、星彦丸!まだあっちに仲間が!」

「分かった!舵手、七時の方位に向かえ!」

「了解!取舵一杯っ!」

そして無事二人も船に乗る。

「お姉ちゃん!」

「私は無事よ、心配かけてごめんね。」

そこに軍人の叫びが聞こえる。

「拘束弾のロープが千切れちまったぞ!こっちに来る!」

「九時の方位に舵を取れ!野郎、羽は有るが飛びやしない脳無しだ!同航戦で仕留める!」

「了解!徐々に面舵!」

先程までは艦が背を向けていたので砲塔が一基しか使えなかったがこれで前後の砲塔合わせて二基四門の機関砲が火を噴く。艦上は硝煙にまみれ轟音が耳を裂く。

「打ち方、止め!」

「居ない・・・!?野郎、何処に行きやがった。」

艦上は緊張に包まれた。

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