Ⅱ 継母と二人の義姉

 それから4年の月日が経ちペティが12歳になった年に、伯爵は新しい妻をめとりました。

 新しい妻にはペティよりも少し年上の二人の連れ子がいました。

 ペティに継母ままははと二人の義姉ぎしができたのです。


「まあ、なんと可愛い妹でしょう」


 二人の義姉は代わり番こにペティの頭を撫でてくれます。それを見た伯爵はとても満足そうに微笑んでいました。

 ところがそれは演技だったのです。

 伯爵が仕事に出かけると、二人の義姉はペティをまるで召使いのように扱い、自分たちの身の回りの世話を命じました。

 見かねたサリーが手伝おうとすると、義姉はサリーをひどく叱責します。

 

「大丈夫よサリー。わたしは一人で何でもできるのですから。それにわたしが頑張ればきっとお姉様たちも認めてくださるわ」


 実際、ペティにとって部屋の片付けなどはお手のもの。

 誰の手を借りなくても義姉が脱ぎ散らかした洋服を手際よくハンガーに通して仕舞うことも、部屋の隅から隅まで床を拭き上げることだってできるのです。


 そんなペティを見て、義姉の意地悪な命令はどんどんエスカレートしていきます。

 それでもペティは一所懸命に頑張ります。

 いつか、自分のことを認めてくれると信じて。



 ▽



 ところがある日事件が起きました。

 上の姉が大切にしまっていた金のブレスレットがなくなってしまったのです。


「きっとペティが盗んだに違いないわ。クローネお姉様の細い手首の美しさに嫉妬したのよ!」


 下の姉がペティを指さして言いました。

 たかのように鋭い眼で睨み付けられたペティは動揺して何も言い返すことができません。

 すると下の姉はペティの部屋に入り、まっすぐチェストへと歩いて行き、引き出しを開けました。

 すると中から探していたブレスレットが見つかったのです。


 事件は次の日にも起きました。

 今度は下の姉が宝石箱にしまっていた指輪がなくなってしまったのです。


「きっとペティが盗んだに違いないわ。ヒエラの細くて美しい指先に嫉妬したのよ!」


 上の姉がペティを指さして言いました。

 からすのように真っ黒な瞳を向けられたペティは動揺して何も言い返すことができません。

 それから上の姉はペティの部屋に入ると、まっすぐチェストの引き出しを開けました。

 するとまた探していた物が出てきたのです。


「あの子は伯爵家の娘として相応しくないわ。この屋敷から追放しましょう」


 そう継母に詰め寄られた伯爵は、あろうことか首を縦に振ってしまいます。

 最近の天候不良に追い打ちをかけるように疫病が流行し、領民からの税の徴収もままならず、伯爵はすっかりやつれてしまっていたのです。


 お屋敷から追い出され、行く当てのないペティを気の毒に思った使用人達は皆で相談し、馬小屋の片隅にベッドをこしらえ、住まわせることにしました。

 それを知った二人の義姉は勝ち誇ったような笑みを浮かべたそうです。

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