第9話 もう嫌な予感しかない

 なんだかんだで会話は弾み、いつの間にか自宅の前にいた。

メリーが俺に甘えたいって言ってたけど、どうすればいいんだろう?


「悠真」


「ん?」


「今日久しぶりに悠真の家にお邪魔してもいい?」


「え、なんで急に?」


「良いじゃない別に。久しぶりに行きたくなったのよ」


「い、良いけど」


 今日の咲はどうしたんだ?

なんか変なものでも食ったのだろうか。

普段遊びに来るなんて言わないのに……。

まぁ、1人でいるよりは2人とか、3人とかいた方が楽しいもんな。


「咲が俺の家に来るのって何時ぶりだ?」


「うーん……小学生以来?」


「確かにそのくらいだったな。毎日のように来てたよな?」


「うん、懐かしいね……」


 俺はその頃を思い出していた。

近くに公園がなかったせいで、ほとんどは咲の家か俺の家の中で遊んでいた。

どっちかというと2人ともインドア派だったせいもあると思う。

 ゲームして遊んだり、ボードゲームしたり色んな遊びをしていたなぁ……。


『2人とも昔から仲が良かったんですね』


「なんで膨れっ面なんだよ……」


「もしかして羨ましいとか?」


『そ、そんなわけないじゃないですか!』


「と、言いながら本当は羨ましいとか思ってるんでしょ? 残念だったわね!」


『うぐっ……』


「いやいや、何で挑発してんだよ……。そしてメリーも何でそんな悔しそうな顔してるんだ……?」






◇◇◇






「お邪魔しまーす!」


「随分ハイテンションだな」


「だって悠真の家、チョー久しぶりなんだもん!」


 咲はさっさと靴を脱いで俺の部屋へと走って行ってしまった。

ここまでハイテンションな咲は初めて見た気がする。

 慣れたように2階に上がって行き、ドアを勢いよく開ける音がした。


「ドア壊すなよ!?」


『咲さんっていつもあんな感じなんですか?』


「いや……今日は何かおかしい……」


 メリーと俺は苦笑しながら、俺の部屋へと向かった。

 部屋に入ると、


「おい、俺のベットの上で何やってんだ」


 何で俺のベットの上で足ばたつかせてるしてるんだよ。

そんなに俺ん家に来て嬉しいのか?

 すると咲は体育座りして、膝に頭を乗せた。


「悠真」


「ん?」


「今のわたし、どう見える?」


「わざと可愛く見えるようにそういう座り方して、お姫様みたいでしょ? 的な言葉を頭に浮かべているように見える」


「なんでそうなるのよ!」


『咲さんってそういう性格だったんですか?』


「昔からだよ」


『へぇー……』


「う、うるさいわね! 別にそんなんじゃ」


「『ほーう』」


「2人してなによぉ……」


 おっと、からかいすぎたようだ。

泣きそうになってしまってるし、これ以上やるのは可哀想だ。


「んで、俺ん家来て何するんだ?」


「えっと……」


 咲は両人差し指の指先を合わせると、


「今日だけ、泊めてほしい欲しいんだけど……だめ?」


 ビシィっと背中に電気が走る感覚がした。

な、何で!?

家近いから別に俺の家じゃなくてもいいじゃん!

 今日の咲は本当にどうしたんだ?


『―――――』


 メリーからはなんか黒いオーラが出てるような……。

さっきより肩を掴む強さが強い気がする。

痛いからやめて欲しい。

なんでそんな恨み込めたような雰囲気になっているのかはわからないけど……。


「―――――ふっ」


『な!? ガルルルルルル……』


「メリー!?」


 何故メリーに挑発するような笑い方したんだ……。

 メリーの赤い目がさらに光っている気がする。

とにかく、俺がいない時にしてくれ……。

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