カンボジアでお坊さんになりました

レアクロエ

第1話 事の経緯

「カンボジアでお坊さんになれ」

親父からそう言われた。

僕にとっては人生の中の1ページに過ぎない。

それは特別でもなく、ただあったことだから。

でも、これを読んでいるほぼ100%に近い人々が在り来りではない経験なのだろう。

だからこそ、この場で書き記していこうと思った。

拙い言葉にはなるが、1人の人間が感じたことを楽しんで欲しい。


きっかけは情けない話である。


高校時代、どうしても僕は大学受験をしたくなかった。

大学に入る意味を見いだせなかったからだ。

そして、高校3年の受験シーズンの時のことだった。

センター試験の前は特に憂鬱だった。

勉強は一切していなかったし、いい点数を取れないことは誰よりも自分自身が知っていた。

親に勉強すると口だけでアピールするのも疲れてきた頃合だった。

もう嫌だ。

そんな自己中な現実逃避から親に連絡をした。

「大学受験はしたくない」

「いい暮らしはしなくていいから働きたい」

書いていて涙が出そうになるほど情けない現実逃避の言葉である。

その言葉に親父はただこう述べた。

「わかった。

ただ、3ヶ月カンボジアでお坊さんになってこい」

その言葉に拒否権は無かった。

そもそもその時の僕はカンボジアを全く知らない状態だった。

英語の偏差値も30程度である。

コミュニケーションも取れるか怪しい。

ただ、ここで嫌という感情は一切無かったのはよく覚えている。

どうなるんだろうと不安になれるのは「こうなりたい」と願うビジョンがある人のみが抱ける感情だ。

当時の僕はこうなりたいという姿もなく、ただ未知の場所に行く好奇心だけがあった。

そう思えた時点でカンボジア適正はあったのかもしれない。


実際は1年半カンボジアにいることになった。

めちゃくちゃ楽しかったし、カンボジアのことが本当に好きになれた。

そして、日本人としての誇りを感じるようになった。

日本人のすごい所を多くの日本人は心の底では理解していない。

カンボジアはいい国だってことを日本人は知らない。


いかせん、昔の記憶である。

今ではだいぶ違うだろうが、当時の記憶を振り返りつつ色々と語れればと思う。

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