1日目-5

「最初は信士だな、お前が降りたら次に俺も行くから、ノロノロして追いつかれるなよ」


「わかってるよ」


 和哉は余裕綽々ようゆうしゃくしゃくだな。彼が先にいけばいいのにな。でも仕方ない。


「じゃあ、行ってきます」


「男の子だから大丈夫だとは思うけれど、本当に真っ暗だから気をつけなさい」


 清院住職の声に送られて、僕は階段を降りていった。


 階段を降りると、住職さんが言っていたように本当に真っ暗闇だった。光が全く差し込んでいなくて、目が慣れるということはなさそうだ。奪われた視覚に恐怖心が湧き上がってくる。



 フフフ、フフフ、フフフ

 キャハハハハハハハ


"ひっ"


 突然聞こえてきた声に、思わず体が強張って、声を出しそうになってしまった。


 フフフ、フフフ、フフフ

 キャハハハハハハハ


”風……か”


 よく聞いてみれば、通路を吹き抜ける風鳴り音みたいだ。だとしても、いきなり怖すぎでしょ。何も手にしていないことが不安になり、すぐに横に手を伸ばして壁を確認した。ひんやりとした壁の冷たさに加え、地下独特の匂いだけでも怖いのに、さっきまでより強くなる見られている感じ、肌を撫でつけられる嫌な感じ。

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