第4話 ダンジョン初作成

 満腹亭の前に到着! 非常にいい匂いがしているとだけ言っておこう。


「すいません、食事がおいしいと冒険者ギルドに聞いてきたんですが、泊りはいくらでしょうか?」


 40代くらいのふくよかな女性が出てきた。


「あらあら、冒険者ギルドからなのね。駆け出しには高いけど大丈夫かしら?」


「値段を聞いてくるのを忘れてしまったので、聞きに来たんです」


「そうだったのね、ここ満腹亭は一泊夕食朝食付きで銀貨3枚3000フランになるわ。食事が一食500フランで、泊りの料金が2000フランだよ」


 異世界のアイテムをDPで交換した際に、1フラン=1円くらいの感覚でいたが、泊りの料金がカプセルホテル並みか? 金貨もあるから2000フランくらいなら何の問題もないな。DPでもお金は出せるわけだしな。


「田舎から出てくるまでにお金は結構稼いでたので、そのくらいは問題ないです。何より食事がおいしいって話ですので楽しみにしてるんです。田舎から出てきたからそういうのが楽しみなんです」


「そうだね、私の宿はそれが売りだからね。宿の名前も満腹亭だからね、期待してくれていいよ」


「いい匂いしてますもんね。とりあえず10日程泊りたいです。3万フランだから、大銀貨3枚でいいですか?」


「おや? 君は、計算ができるのかな? 書かずにできるってことは相当精通してるのね。自己紹介がまだだったね、この宿の女将のアイシャよ。宿帳つけるから名前聞いてもいいかしら?」


「あ、失礼しました。自分は、シュウって言います」


「シュウさんね、食事の時間は適当だけど、早すぎたりするとさすがに準備できてないから注意してね。一応食事の時間になったら各階に声をかけに行くよ。それを聞いたら降りてくれば問題ないよ。部屋は209ね、2階に部屋があるよ」


「アイシャさん、ありがとうございます。夕食楽しみにしています」


 女将にお礼を言って、今後の計画を試すために部屋へ向かう。


「よっし、手始めにこの宿をダンジョンエリアにしてみよう」


 ダンジョンステータスを開いてエリア掌握をする。思ったより広い宿で、30DPほどかかった。部屋に置かれていたタンスの隅にダンジョンコアを設置する。


 俺のカンが正しければこれでもDPが入ってくるはずなんだよな。それにダンジョンを作っただけじゃモンスターがわくわけじゃないからな。これが成功すればこの先の計画が立てやすくなる!


 たそがれていると、


「お泊りの皆さん、お食事ができましたよ」


 っと大きな声が聞こえてきた。昼ご飯を食べていなかったから、俺の腹はかなりの空腹をうったえていた。いい匂いにつられて階段を下り食堂へ向かう。


「おや、シュウ早いじゃないか。飲み物は別料金だけど酒もおいてるよ。今日の夕食は鳥の丸焼きを取り分けたのにパンとサラダだから、エールがおすすめだよ」


「そうなんですか? お酒は飲んだことないけど、エールを一杯いいですか?」


「はいよ、エールは一杯100フランだよ。料理と一緒に持ってくるよ」


 お金を受け取ると、アイシャは厨房の中へ入っていく。日本では違法でも、この世界では俺の歳でも飲酒は当たり前なのかな? ミリーさんに12とかに見えるって言われたけど、そんな歳から飲んでるのだろうか?


「おまたせさん。今日の夕食だよ」


 目の前に置かれた夕食は、結構な量だった。サラダはドレッシングのようなものはなく塩のみの味付けのようだ。チーズの粉もかかっているようにみえるな。


 調味料がほとんどない世界で、どうやってここまでの味を出しているのか気になるくらいの鳥の味だ。パンにはさんで食べてもうまいし特殊な調理法でもあるのか、肉自体が美味いのか?


 美味い飯が食えるようで助かった。異世界って聞いて一番気になってたのが食事だったのだ。お風呂も重きを置いていたが、この世界では水浴びが基本でお風呂にはいるのは、貴族くらいなもんだとさ。貴族でも毎日入るのは大変なんだとか。


 食事の量は少し多かったが、問題なく食べれた。エールは、常温でありとてもうまいとは言い難かったが、少し酸味のある味は確かに食事にあっていた気がする。これが冷えていたら最高だったに違いない。魔法や魔導具がある世界でも物を冷やすことは大変なんだろうか?


 周りを見ると、泊まりの客より食事で来ている客多い気がする。何部屋あるか知らないが、仕事帰りのような格好と思われる人たちが多くみられるのだ。おそらく、宿屋だけでなく食事処も兼ねているのではないかと思う。


 のんびりと食休みしてから部屋に戻る。この宿についてからどのくらいたったのだろう?太陽を見る限り地球の時間で五時間は経っているのではと見当をつけてみる。


 することがなくなり、後は眠るだけだったがダンジョンステータスが気になり開いてみることにした。4976DP……お? 増えてるじゃないか!


 やっぱり、ダンジョンといっても穴掘って洞窟みたいなTHEダンジョンじゃなくても、地上でもエリア掌握した場所がダンジョンと認識されるのだろう。俺は、実験が成功したことを喜びレベルの高そうな人が多いところをエリア掌握しようと行動する。


 街の人の話や宿の食堂での話を思い出し、レベルの高そうなところのめぼしはついてるし大体の位置も把握してるから、エリア掌握で宿からまずは冒険者ギルドを範囲に収める。


 次に、この街を収めている男爵の屋敷を範囲にいれ、東西南北に配置された門の付近にある詰め所、兵の駐屯地、後は人の数の多そうな外周部あたりを残りの掌握していく。


 掌握したエリアは、街の七分の一程でゲームのマップの様に表示され認識することができるようだった。地形は正確に表示されるようで、範囲の中には、3000人を超える人がいた。5000DPすべて使ってしまったが、数日中に問題なく回収できると考えている。


 ダンジョンコアが取られたりしないように注意しなきゃいけないだろうけど、部屋のタンスの隅に目立たないようにしてあるし、持っていた荷物の袋もかぶせてあるからすぐにどうこうなることはないだろう。


 そのうち自分の家でもほしいな。そうすればできることが広がるはずだしな。まずは、この街全域を支配エリアに入れてしまいたいところだ。


 ボーっとしていると突然頭の中に声が響き渡る。


『ちょーーっとあんた! ダンジョンも作らないで何してくれちゃってるのYO!』


 チビ神だった。


『ダンジョン作らないでアイテムも出さないで、エリア掌握だけでDP使い切るとか前代未聞なんですけど!』


 そういえば、基本的には干渉しないとかいう話じゃなかったっけ? まぁどうでもいいのか? とりあえず、ダンジョンは作っただろ? よく見てみろよ。


『いいえ、どこにもダンジョンなんてないじゃない! ダンジョンってのは地下に作られた迷宮をさすのよ! あなたのしたことはエリアを掌握しただけじゃない』


 そうなの? でもエリア掌握だけでも範囲内に侵入者と認識されるものがいるから、DPはこれでも入ってくるぞ。むしろ今までのダンマスは、迷宮でしかDPを稼いでこなかったのか?


 人間牧場ってその迷宮内に人間を無理やり連れてくることだろ? それは思いつくのに、人の住んでいる街を掌握するって発想が出ないことに俺はビックリだよ。


『え? ええ!? あれ? 言われてみれば、迷宮じゃなくてお城や塔みたいなダンジョンを作ったダンマスがいたわね。そう考えると、エリア掌握してれば地上でもDP獲得は問題ないのかな?』


 そうだ、問題ない。もしもの時があったら困るから実験してDP稼げることを確認してから残りのDPも使ったしな。


『あなた、意外に色々考えてるのね。初めは行く気なさそうだったのに、思いっきり順応しちゃってるし……』


 だってDPで作った家ならゲームとかできるんだろ? 俺は、俺だけのための快適空間が作りたいんだよ! だからDPを持続的に稼げるようなシステムを作って、気ままにゲームして気が向いたらこの世界を冒険してもいいかなって考えてるわけだ。DPさえあれば何でもできるしな。


『おうふ、すがすがしいまでにダンマスの常識を否定された。ダンジョン作らないでダンマスしてた奴も少数ではあるけどいたけど、そいつらだって冒険者として旅をしてモンスターや盗賊狩ってDP稼いで装備を整えてたりしたのに』


 まぁ、チビ神がどう思おうとこの世界に来たからには自由なんだろ? ここがダンジョンだとわからなければ勇者たちに目をつけられないし、どうやらマップには検索機能がついてるみたいだから、勇者を視認しなくてもこちらから把握ができそうだな。見つかる可能性はぐんと低くなるじゃん。


『確かに、確かに理にかなってはいるんだけど、ダンマスってこうじゃないのよ! わかるかな? 極悪非道のダンジョンを作って、わはは! 的な魔王的なポジションを確立してほしかったのに!』


 もしそうしてほしいなら制限をかけるべきだったな。この世界には何人もダンマスがいるみたいだから、次もあるんだろ? そいつに期待しなよ。制限がかけれないっていうのなら、次からはこういうことしないように会話で誘導していくべきかと思うぞ。


『うぅっ! あなたに助言されるとは屈辱だわ。初めはあんなにやる気がなかったのに』


 うっさいわ、ボケ! 無理やり連れてこられて拒否権もなくこの世界に来た俺の身になれよ、チビ神が!


『チビじゃないわよ! アリスっていう立派な名前があるんだから!』


 ツルペタのくせに。


『グスン……ツルペタで何が悪いのよ!』


 悪いとは言っていない! どこかの女の子が、貧乳はステータスだ! って言ってたしな。俺は見た目をそのまま言っただけだ。胸の大きさに関しては、個人の趣味だからどうでもいいんじゃね? コンプレックスはあるだろうけどな。ちなみに俺は、大きすぎるのは嫌いだ!


『そんなカミングアウトいらないわよ!』


 そっか、残念だ。


『ま、まぁ、この世界のルールにのっとってるから問題はないんだけどね。それに、あなたがこれから何をするか楽しみだわ』


 DP溜まって気が向いたらチビ神が言ってたようなダンジョンも作るだろうし楽しみにしとけ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る