竜馬がゆく

坂本龍馬は実際ただの商人でそこまで偉大なわけじゃない。


よく見る論調。そして繰り広げられる龍馬リスペクツとの諍い。この戦いは昔から繰り広げられているらしいが、情報化したての十年前くらいが一番盛んだったような気がする。(そういう事知ってる知り合いいないし詳しくもないからひょっとしたらアナログ時代の方が激しかったかもしれない)。



龍馬リスペクツ達が何故こうも坂本龍馬をリスペクトするのか。そこに、司馬遼太郎の"龍馬がゆく"が影響しているのは周知の事実である。


竜馬がゆくは、土佐藩で郷士の家に生まれた坂本龍馬が色々あって江戸に行って諸々やっていくサクセスストーリーなわけだが、坂本龍馬がまぁいい感じでかっこよく書かれている。剣の腕は達人級で自由奔放。器がでかく人情家。人の顔を立てるために自分が損するなんて事を平気でできちゃうキャラクター設定。カッコいい。いや、実に。


この作品を読んだのは確か中学時分。胃腸が菌に侵され入院する羽目になったとき、親父に家族八景を買ってきてくれと頼んだら同作の文庫の一巻もついてきた。抱き合わせみたいだ。


親父は事あると「龍馬はいいぞ」と口にする龍馬リスペクツの一人で、家族旅行で桂浜へ向かうくらいの信者だった。綺麗だったよ桂浜。あと具足煮美味しかった。


話を戻す。

正直あまり興味はなかったが、まぁそこまで言うなら読んでやろうと手にってみるとまぁ凄い。面白い。一人の男のストーリーが淡々と描かれ、惹きつけられる。一巻最後の剣術試合で桂小五郎と戦って勝つ場面とかバトル小説かよってくらい熱く鳥肌が立った。なんやこれ。すご。他にもせっかく買った船が沈んだり悪口言われた時腹パン一発で黙らせたり何かと印象に残るシーンばかり。理想の男像として、本当によく書かれているなぁと感心する。


しかし、先にも述べた通りこの竜馬がゆく。間接的に論争の火種となっている。識者がいうには、あまりに史実とかけ離れているというのだ。


坂本龍馬は単なる商人。免許皆伝も刀ではなく薙刀のもの。上に書いた桂小五郎との剣戟を披露した試合も実際には行われていなかったそうだ。あと大政奉還にもそんなに関わっていなかったとかと聞いてるけど、作中だと龍馬が東奔西走した事になっている。作中の主人公ムーブはほとんど創作で、歴史的事実と大きく乖離があると、歴史を知る者はいう。



当初それを知った俺はマジかよ龍馬嘘だったのかよと大変ガッカリしてアンチ坂本龍馬にまでなった。西郷とか高杉の方が強いと謎のパワーカーストを自身の中に築き、龍馬リスペクツを大いに嘲笑していた。



でもね。思ったの。確かに歴史から逸脱しているとしても、竜馬がゆくの坂本龍馬がかっこいい事は事実だろうって。



史実は確かに大切だけど、物語にはロマンが必要だ。竜馬がゆくにはロマンがある。それだけで、読んで良かったと思う作品の一つに入った。面白いよ。竜馬がゆく。



今更遅いが、俺も竜馬のよう生きられたらいいなぁ……

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