#ZOOM打ち合わせの話【1話完結!スーパー短編】




「こんばんは、クリス米村です。


いきなりだけど、リスナーのみんなは、最近どういう夜の過ごし方をしてる?


緊急なんとか宣言がなくなって、飲食店もけっこう遅くまでやってる。


油断はできないけど、席と席を離して、仲のいいヤツら同士で飲み食いする分には問題ないかもしれないと、マネージャーが言ってた。


席を離すのはいいことだ。


オレの場合、ファンが近づこうとしてくるから、都合がいいんだ。


近づいてくるファンに、「キモいぞ。それ以上よるな!」とは、なかなか言いにくい。


でも、「すまないが、ソーシャルディスタンスをとらなきゃならない。ソーシャルディスタンスだ。知ってるよな?」って言えば、どんなに頭の固いファンの脳みそにもスッと入ると思うんだ。


だけど、中には優しく言ってもダメなファンもいる。


きつく言わないといけないっていうか、オレがののしってはじめて、言うことを聞いてくれるファンもいるんだ。


その方が愛情を感じるらしい。


大勢のファンがつくようになると、そういうケースも交じってくる。


オレも大変さ。


とにかく最近、ちょこちょこパーティが開かれるようになってきた。


といっても、前みたいにシャンパンをガブ飲みする感じじゃない。


立食パーティータイプっていうか、立ち話をするだけのパーティーだ。


早い話が、「懇親会」だな。


なんだろうね。


懇親会だと、どうしても話がマジメになりがちなんだ。


くだらないイタズラばっかりして、こいつは本物のバカじゃないかと思ってたヤツが、懇親会だと急に政治の話を始めるんだ。


立候補がどうとか。


ほかにもギャンブルにしか興味ないヤツが、シーオーツーについて話し出したり。


もちろん、悪いことじゃない。


そいつらも、そいつらなりに勉強してるのかもしれない。


ただ、懇親会が終わって、少人数でアフターパーティをすると、またバカに戻るんだ。


顔つきもバカみたいになる。


目が垂れるんだな。


あれは不思議だね。


最近、流行ってるZOOMも、懇親会と似てる点がある。


固い話になりがちなんだ。


この間も、ある担当者とZOOMで話して。


マジメな話しかしないから、おもしろ味のないヤツだと思ってた。


ところが局で実際に会うと、バカ丸出しなんだ。


オレの目の前で、ポケットからミカンをとり出して食い始めるんだ。


自分の部屋にいる気分になったのか知らないけど。


サルみたいでマジ、おもしろかったよ。


ほかにも、画面越しだと、一流企業のエリートサラリーマンにしか見えなかったヤツがいて。


スーツ着て、ボタンを上まで留めてさ。


でも直接会ったら、そいつ、はじめましての挨拶から10分後には、踊り出してた。


パンツ1丁で。


盛り上げないとダメだと思ったらしいんだけど、たぶん本性が現れたってことだろうな。


とにかく、つい最近まで、きちんとした正式な話し合いは、直接会ってやりとりすることが多かったと思う。


面と向かって、目と目を合わせて会話しないとダメだって考えてた人が、ほとんどだろう。


だけど今回わかったが、マジメな話し合いをするなら、逆にZOOMがおすすめだ。


興奮しがちな話題でも、冷静に話し合うことができる。


直接会った場合、いったんふざけ出すと、歯止めがきかないことが多い。


オレの周りは特に。


この観点は、誰も言ったことがないだろ?


ていうか、オレも今、マジメな話をしてるな。


これ、ZOOMだっけ?


ハッハッハ!


じゃ今夜の1発目は、今の話題に関係した曲にしよう。


どんなにふざけた人間でも、マジメになる瞬間があると思うんだ。


マジメにならなきゃいけないっていうか。


それを歌ってる。


割りと最近の曲だ。


聴いてくれ。


『恋の始まりと終わりはZOOMがいい』


   ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

教訓👉そうかな? 必ずしも、そうじゃないような。







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ラジオ品川 99.92FM

Navigator クリス米村

『クリス米村のGO❗️GO❗️レインボー❗️〜今夜もパーリーしようぜ〜』

毎週木曜ほぼ21:30〜恋人たちが眠るまで

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