#緊急事態宣言中に学んだことの話【1話完結!スーパー短編】


「こんばんは、クリス米村です。


のっけからこういうのはイヤなんだが、リスナーのみんなに言っておきたいことがある。


心を鬼にして言う。


ちょっと浮かれすぎじゃないか?


確かに、緊急なんとか宣言は、なくなったと聞いてる。


めでたいことだ。


それは認める。


祝杯を上げたくなる気持ちも、わからないでもない。


オレも昨日、シャンパンを1本空けた。


先週、アップルティーにハマってる話をしたな。


だが、アップルティーを飲むことは、二度とないと思う。


キンキンに冷えたシャンパンは、やっぱり最高だ。


でも! だ。


その1本だけだ、空けたのは。


前は、オレ1人で5本も空けてた。


自分でも信じられんよ。


昨日は1本だけ。


それ以上は飲まなかったし、飲めなかった。


1年近くパーティに行ってないせいだろう。


でも、そのときオレは気づいたんだ。


緊急なんとか宣言がなくなったからって、前とまったく同じ生活に逆戻りしていいのかと。


1年も禁欲生活を送ってきたんだ。


お坊さんで言ったら、1段階どころか、3段階ほど位が高くなってるはずだ。


阿闍梨とか言うんだっけ?


よく知らんけど。


なんの成長もなかったら、恥ずかしいだろ。


オレは成長した。


自分でもはっきりわかる。


前より体が軽いんだ。


最初はアルコールが抜けたせいかなと思った。


だが、それにしては軽すぎる。


100メートルを9秒台で走れるんじゃないかと思うほどだ。


それで思い出したが、ウサイン・ボルトはお調子ものだな。


あとで先生に怒られる小学生みたいだ。


それはともかく、成長したところは、ほかにもある。


人のためになることをしたいんだ。


とりあえず、人のためになることを。


オレはもう動いてるぜ。


さっそく今日、局の廊下に落ちてたゴミを、マネージャーに言って拾わせた。


以前のオレなら、そんな指示は出さなかったはずだ。


というか、前はそもそもゴミなんて目に入ってなかった。


まだある。


楽屋の空調の温度を、2℃上げさせた。


環境のことを考え出したんだ。


2℃上げると、エネルギーを使わなくてすむんだろ?


これ全部、今日1日のことなんだぜ。


どんだけ人のためになることをしてるんだよ。


周りのスタッフもびっくりしてた。


リスナーのみんな、オレからのお願いだ。


マジで成長してくれ。


そうしないと、オレはおまえたちの手の届かない、ずっとずっと先へ行っちまうことになる。


気安くラジオを聴けなくなるぜ。


オレの背中を見ながらでいい。


とにかく成長するんだ。


具体的にどうすればいいかは、自分で考えろ。


人それぞれ違うからな。


曲に行こうか。


今夜は、おまえたちの新しい門出にふさわしい名曲を選んだ。


歌詞の中に、なんていうか、みんなをまとめるリーダーが出てくるんだ。


その勇敢な姿に、注目してみるといいんじゃないか。


聴いてくれ。


『迷える仔羊たち』」



  ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

教訓👉誰も迷ってません。



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ラジオ品川 99.92FM

Navigator クリス米村

『クリス米村のGO❗️GO❗️レインボー❗️〜今夜もパーリーしようぜ〜』

毎週木曜ほぼ21:30〜恋人たちが眠るまで

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