告知と夜月の配信と
『マジか…アツい!!』『豪華すぎるメンツ』『既に待ちきれないんだが』
『√』の2人が配信の最後に行なった告知は、つぶやいたーでトレンド入りを果たす盛り上がりを起こしたのだが、疲れて寝入った2人は知るよしもない。
「えーっと、『ライムライト』から歌が出ます」
と告知を開始した環は、その概要を説明する。
「東方さんがストーリー、小説を書いて、それにAyaさんが曲を付けて、僕が歌います。『くらうん』さんは既に自作で楽曲作ってるので、これには不参加です。で、それにyoruさんと朝はぜ先生、東アニさんがイラストとMVを付けます。今も絶賛制作中なので、お楽しみに!」
『√』の配信終了と共に『ライムライト』公式つぶやいたーが同じ内容をつぶやく。詳しい情報は明かされておらず、期待と憶測が飛び交った、というわけだった。
『世界獲れるかもだぞ、早速』『とりあえず東アニがMV作るってのが強すぎる』『←プラスしてAyaに東方先生、期待のイケボ歌い手の重装備』
『化学反応ってこういうことか』『待ち切れなくて朝眠れません』『←大丈夫だ、合ってる』
と、ネット界隈は夜通し大きな盛り上がりを見せ続けたのだった。
「おっぱいばっかり見ないでくださーい!太ももとかもちゃんと見てよー!」
と声を張り上げるのは、『√』チャンネル、ソロでお絵描き配信中の夜月。
『女の子がおっぱいって言うのなんかいいな』『おっぱい助かる』『イラストのおっぱいも先生のおっぱい呼びも助かる』
「ねえ気持ち悪いよ!!……イラストレーターってそういうとこあると思うんです、絶対私だけじゃないもん」
『それは分かる』『そういう人多いよねw』
「でしょ!?朝はぜ先生とかもっとすごいこと言ってる時あるも……やめとこ」
と、元来人見知り気味な夜月も慣れた様子で配信を進めていた、はずだったのだが。
『お兄ちゃんっていつも呼んでるんですか?w』
「初配信からそのイジリ多いよね!?最後の(笑)が煽りでしかないよ!」
『好きです付き合ってください』
「無理でーす」
『↑言葉足らずでした、tama君の方です』
「ねえ絶対わざとでしょ!?」
『お兄ちゃんを僕のお嫁さんに下さい』
「少なくとも君にはあげない!」
と、夜月の隠れたトーク力が覚醒した配信になったのだ。視聴者と漫才、コントを繰り広げながらもイラストを描く手は止めないあたりが夜月の凄いところかもしれない。ちなみに、この漫才は環が『√』のチャンネルから『全員通報したい』とコメントするまで続いたのだった。
そして、この配信がファンから『伝説』と呼ばれるようになったのは、漫才と開眼したトーク力だけではなかった。男性リスナーが思わずトキメキ、女性リスナーが親近感を抱くに至ったのが次の一幕だった。
きっかけは、何のことはない質問。
『お兄ちゃんのこと好きですか?』
「好きか嫌いかで言ったら……好きですけど」
という、思春期全開の返答に盛り上がるコメント欄。それを見た夜月は瞬時に失敗を悟るものの、時すでに遅しである。
「くっそぉぉ……適当に『さぁどうでしょう〜』とか誤魔化しておけば……!」
『ねぇねぇお兄ちゃんのこと好き?好き??』
『どんなところが好きですか?w』
ここで夜月は、環からスマホを没収し部屋から叩き出した。余りに恥ずかしかったのである。「いいから出てって……!」という抑えた声も配信に乗ってしまい、リスナーはまた大喜びである。
『被告人、お兄ちゃんへの正直な気持ちをお願いしますw』
「別に何も無いですけど!?あと最後の(笑)は必要だったかな!?」
『お兄ちゃんの方、何の気なしに仲良しエピソードめっちゃ話してたからなぁ……』
「……後でしばきます」
『お兄ちゃんのどんなところが好きですか?ねぇどんなところが好きですか??w』
「ねぇ話聞いてた!?君、私の話聞いてたかなぁ!?」
『笑わないから聞きたい』『マジで聞きたいんよな』
「……優しいところかな、えへへ」
『チョロいw』『野生のツンデレだ!保護しろ!』
『ツンデレ助かる』
「〜〜〜っ!!もうさいあく!!」
『『『か〜わ〜い〜い〜!!』』』
自覚の薄い兄とは異なり、夜月は自分達が世間一般の兄妹よりもだいぶ仲が良いことを知っているので、当然恥ずかしくなってくるのだ。兄が垂れ流しで語るエピソードが全部羞恥プレイみたいなものである。
「今日はもうおしまい!ありがとうございましたいい夜を!!」
ガチャガチャバッタン、とやけ気味に配信が終わった後、『良いものが見れた……』と、心なしかリスナー達はツヤツヤしていたそうな。
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作者より
さて、後書きに書くことが一切見当たらないもろ平野です。今話もお読み頂きありがとうございました。
ん?ダジャレが聞きたい?しょうがないですね……
ダジャレ型シャーレ、なんつって。
それではまた、お付き合い下さいませ。
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