第46話 利点はあるらしいが…

『へぇ~…中ってこうなってるんだ! すごいわね! それに涼しい~すごく快適な環境ね! ここって!』


上機嫌に声を発する主の名は炎の妖精”フレイア”。

なんというか、どうしてそうなったのかは解らないが…ブイが胸部パーツへ帰ろうとした瞬間に一緒に乗り込んできたのだ。

元々はブイとブイの予備ボディを格納する場所であったが、いつの間にかもう一つのシートの上にはフレイアが居座っていた。


『はぁ~…本当に連れていくんですか~? これ?』

『これって何よ! 見た頃、ご主人様達って魔石を欲してるんでしょ?』

「ご、ご主人様…」


いつの間にかそう呼ばれていた俺は何と返していいのか解らない。


『って事は、あんた役に立つって事ですか?』

『えぇ! 立つわよ! なんせ、精霊を連れていれば…魔石の現れる確率が上がるの!』

『へぇ~…』

『その顔…信じていないわね!?』


と言われましてと言う話である、確かに魔石のドロップ率は最悪だ。

3体に1個出る事もあれば、10体に1個出る時もあったり…等と収集率は正直良いものとは言えない。


『証明出来るんですか?』


しかし俺達は知らない、このブイの台詞がフレイアが同行する事になる決定打になるとは…








――――――――――――――――――――――


『グギャァァァ!』

「う、嘘だろ…」


倒れるモンスターの身体からこぼれ落ちる魔石と――――

アサルトマシンガンの弾丸。

魔石が落ちる確率は確かに上昇した気もするが、本当に気持ち程度のものだ―――しかし、今までは違う現状が目の前で起こっていた。


それはアサルトマシンガンの弾丸…こいつはとんでもなく確率が低く正直無い物だと思い今までこうどうしていた。

それがどうだ、あの妖精を連れてからというもの―――5体毎に銃弾10発と安定してドロップするようになった。


『素晴らしい。 どういう仕組みなのでしょうか? データくを見ても、明らかに弾丸のドロップが以前の70%以上向上しています』


ただこいつは俺しか使用できない事と、おれしか触る事が出来ないので他の連中からすればゴミも当然だろう。

だがしかし、俺からすれば魔石よりもこっちの方が重要である。


つまり、10発以内に5体を倒せばお釣りがかえって来る訳だ。


『どう!? 私ってすごいでしょう!?』

『あ~はいはい。 すごいすごい…まさかとはおもうんですけど。 これから一生付きまとう気ですか?』

『つきまとうってなによ!? 私はもう仲間でしょ!? ねぇ!?』


正直、これでこいつを追い出す理由が無くなってしまったといっても過言ではない。

このフレイアを胸部へ格納していれば安全も保障され、俺は弾丸を獲得できる―――多少口五月蠅いがそれを差し引いても喉から手が出る程におしい…


「仕方ないか」

『えぇ、私は賛成です。 効率アップが図れるので――』

『えぇ…』


未だ納得していないブイ、むりもない…俺達はいざとなればフレイアの声を遮断する事が出来るが、ブイは同じ区画に居るせいで嫌でも聞こえてくる。


『まぁ、我慢しろ』

『えぇ~!!!』

『じゃ、そういうことでよろしく~! ブイ!」

『馴れ馴れしいんですよね~こいつ』

『こいつって何よ! フレイアって呼びなさい!』

『あ~はいはい』



―――――――――――――――――――――――


暫く狩を続けた俺は、妖精と制御ユニットのやり取りをBGM代わりに聞きながら魔石を淡々と回収する。

ざっと集まった魔石は――


炎の魔石×20

炎の魔石(エンチャント)×4


少ない様に思えるが、これはこれで上出来な方である…


「しっかし…帰ったらなんて言われるだろうな…」


出口に差し掛かった頃にふと家族の事を思い出す、炎の妖精”フレイア”果たしてこいつを連れ帰った場言どういう反応をされるだろうかと。

あいつ自身、自分がそれなりに希少な存在だとか言っていた…気がするし、また厄介な事にならないか心配だ。


ともあれ、俺の選択は”帰る”一択な訳だが…

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