第44話 火属性の魔石を集める男

昨日は散々だった。

暴れまわるカイネをひたすらに抑え続ける俺達、おまけにカイネは今朝の様子からして昨日の事をほとんど覚えていない様子。


『いやぁ~昨日は散々だったみたいで!』


呑気に母さんと買い物を楽しんでいたブイ。


『申し訳ありません。 敵意が無かったものでアーマーの使用は控えさせて頂きました』


死ぬようなことではないので、アーマーは要らないだろうと判断したZ。

くそが!!



――――――――――――――――――――――――――――――――


「さて、ここが火炎城とかいうダンジョンか」


不気味にポツンと建っている周りがマグマに囲まれた大きな城。

このダンジョンはシンプルにこれだけ、しかしあまりの何度の高さから同ランク更にはCランク程までの冒険者達がこぞって嫌がるワーストダンジョンの一つである。

理由としては、この暑さとダンジョンに蔓延るモンスター達、どれも属性持ちで属性持ちのモンスターは何かと耐久が高く経験値効率もそれほど良くない。


しかし、このダンジョン―――俺にとっては利点しかない。

このダンジョンのモンスターは高確率で魔石をドロップするらしい、おまけにあの高値の属性付魔石がだ!


まぁ、しかし――それでも割に合わないのが”火炎城”の落とし穴ポイントである。

なんせほとんどのモンスターは見つけ次第確実に城内の至る所まで追ってくるとか。

つまり逃げれば数で追われ、処理したとしてもまた襲い掛かられる、それが高耐久のモンスターならば尚厄介である。



「んじゃま、行きますか」


俺はアサルトマシンガンを構え突入の準備を始めた。

残念ながらこのダンジョンは場内を散策する系統のもの、サーチ用のビーコンは役に立ちそうではない。


ガチャン…

城の入り口の巨大な扉が音を上げながらゆっくりと開く。


「普通の城だな…」


何とも不気味と言うべきか、綺麗なエントラスが俺を迎えた。

辺りを見渡せば鳴き声は愚か――声の一つも聞こえやしない、そしてこのダンジョンが不人気な理由のもうひとつは。

”気配がしないor不気味”という点だろう。


なんでも事前情報によれば、廊下の隅だったり――色々と冒険者を困らせる様な位置で奴らは待機しているらしい。

とは言え――


『熱源感知――スキャンニングを開始致します』


室内であってもこいつがいれば別の話だ。


「よし、ローラーは使わない方がいいか…」

『ですね~! 正直あれは小回りがそこまで聞かないんですよね。 まっすぐ逃げる場面とかであれば役に立つとは思いますけど。これくらいの天井の高さでは――』


確かに、天井の高さもそれなりに高いが…動き回れるほどスペースが空いているという訳でもない。

狭いし、不気味だし、あつい。


これだけ聞けば最悪だな。



―――――――――――――――――


ズガン、ズガン、ズガン!


『グギャァァ!!』


蜥蜴の様な見た目をした赤いモンスターに銃弾を浴びせる。

どうもドラゴンやらそいう類のモンスターは頭部の強度が全体に比べ柔らかいらしい。


だからといっても、流石にアサルトマシンガン無しでは難しい話なんだが。


「魔石は?」

『確認できました。 マナチャージを開始致しますか?』

「マナチャージねぇ…本当に効果があるのか?」

『わかりません。 どれ程の効力があるの検証してみない事には、こちらでは何も―――』

「そうか」


どうやら”マナチャージ”と呼ばれる工程を踏めば、モンスターの身体を犠牲にし、更に魔石の質を上昇させる事が出来るらしい。


「素材が無いのは痛手だしな…」

『じゃあ、4体に1回位でどうですか?』

「それ位にしておくか」


流石の俺も、稼ぎ無しで帰るのは怒られてしまう気がする。

しかも…こいつらの素材ってなかなかの稼ぎになるんだよな…


「さて、しかし…ここじゃアックスも振れないな」


なんせ壁には何かそういった魔法か何かが作用しているのか、傷一つもつきはしない―――更には壁に何かが触れようものなら、反発してこちらが無駄に吹き飛んでしまう。


「接近攻撃も基本的には跳ね返されると…」


がいぃん!


試しにアックスで壁を殴ってはみるが、こちらが逆に後ろへ倒れそうになる。


「どうなってんだこれ」


あまりに綺麗な城内は、おそらくこれが理由だろうな。

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