映像記録② 魔女にして妖姫、彼女の名は……

 森林から場面が変わる。ぐにゃり映像がゆがみ、中世の城内と思しき寝室を映し出した。


「なぜだ! なぜこうも上手くいかぬ!!」


 青を基調とした広々とした寝室で、一人の女が怒りに美しい顔を歪めて叫ぶ。それは、森の惨状を作り上げた『あの女』であった。

 握りしめた手からは血が流れ、ぽたりと絨毯に吸い込まれていく。今にも折れてしまいそうなほどに、女は歯を食いしばっていた。それほどの怒りに、女は燃えていたのだ。


「色香で惑わし子を設け、あの男を殺せるようにと優秀な騎士に育て上げた! ついにはあの聖剣を盗み出したというのに!!」


 ガンっ!と卓上に拳をたたきつけ、女は叫ぶ。この結末に、自分への仕打ちに納得がいかないかのように、雪のような肌が赤く腫れようと叩き続ける。


「あの男は、どれだけ私から奪えば気が済むのだ! 私こそ、私こそが……」


 怒気を含んだ目から、悔しさのあまり涙が零れ落ちる。声を震わせて、力の限りに咆哮する。

 その声には呪詛と怒りで満ちていた。聞いている者全てを震え上がらせるほどに。



「このモルガンこそが、真のブリテンの支配者だというのに!!!」

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