四季と晴明の陰陽奇譚〜神と妖の棲う京屋敷〜
朱宮あめ
プロローグ
異界の門
真っ暗ななにも無い空間に、漆黒の大きな鉄の門が浮かんでいる。闇の中に浮かぶそれは、まるで闇と一体化したように空間に溶け込んでいた。
その扉は漆黒の鉄で造られ、門扉にはこの世ならざる生きモノたちの彫刻が細部まで丁寧に彫り込まれている。
開けることすら簡単にはできないであろう重々しい造りで鎖された門扉には、焼け焦げたような汚れが染み付いた、今にも剥がれ落ちそうな御札が一枚。その御札はどこからともなく吹く風にさらされ、心許なく揺れていた。
そして、一陣の突風がその御札目がけて吹いた。勢いに負けた御札は、あっさりと門扉から剥がされ、高く宙を舞い、闇の中に消えていく。
――ギィィィイイ……。
固く鎖されていた門が軋みながら、ゆっくりと開いていく。
どす黒い妖気が開いた門から漏れ出し、辺りを重く包み込んだ。
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