第11話  第3の客

「若いの、いい覚悟だな。わしがその気になれば、この国のどこに逃げようと、お前を狙ってどこまでも追いかける奴を差し向ける事が出来るのだぞ」


「どうぞ。僕の話に納得が出来なければ、どうにでもして下さい」


 それから僕は、彼に、既に病気が進行し過ぎて、治療が手遅れな事と余命がひと月という事を説明した。


「院長め、あれだけ金を積んでやったのに」


「彼らは、医者ですからね。医者を恨むのは、筋違いですよ。恨むなら基礎医学に予算をつけなかった政府でしょうね」


 さすがにショックだったらしく、院長の悪口後は、シュンとなっている。


「親分さんの死は、決定です。このままでは、ひと月後には、間違い無く地獄行きです。しかし僕は、親分さんを極楽に送り届ける事が出来ます」


「極楽?死後の世界は本当にあるのか?」


「もちろんです。金額は、そこそこ払っていただきますが、極楽門までは確実に送り届けます」


 親分さんは、今までの強面が、嘘の様に僕に泣きついた。


「幾らでも払います。払いますから地獄だけは、勘弁して下さい」


 僕は、銃を向けた男のひとりを裸にすると、意識を戻した。この男の持っていた銃を突きつけて、院長を呼んだ。


「親分さん。この男に持って来る物を持って来させて下さい」


「はい。しかし親分さんは、やめて下さい。今は社長と呼ばせているので」


 社長は、裸の子分に現金を持って来るように言いつけた。


「院長、この男たちは、もう廃人のままです。お好きに使って下さい」


 院長には、廃人になった男を押し付けてやった。院長は、大喜びだ。


 数日後、親分を改めて社長との契約が、成立した時は、ずいぶん弱っていた。


 社長の名前が、牛頭うしこうべギュウ次郎となっていたなので、確認するとき、笑いをこらえるのに苦労した。


 


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