極楽タクシー

@ramia294

第1話  第1の客

「ついに、やった。これで完璧だ。これで奴との約束も成立だ」


 僕は、ついに発明した。




 死ぬと、人はどうなるのだろうか?


 全ての人が、必ず興味があり、永遠の謎だろう。


 洋の東西に、関わらず、語られているのは、だいたい天国や極楽といった、素晴らしい理想郷の様な場所に行くか、地獄が待ち受けるかだ。


 現世での善行や、宗教に対する熱心さが、どちらに行くか決めるらしい。


 そこで、僕は、現世での行動など、関係なしに、死んだ人を極楽へ送る事の出来る装置を発明した。


 名付けて、極楽タクシー。


 見かけこそ屋根の行灯に、極楽と赤字で、記されている以外は、黒いタクシーだ。


 しかし、これで移動するのは、普通の人には見えない霊的な道だ。


 霊能力者の間では、霊道というらしい。


 もちろん地獄にもつながっているが、霊道の中の極楽へ続く道をナビが選んでくれる。


 誰でも迷わず成仏できる。


 試験運転は、お隣の高校生、亜香里ちゃんでした。彼女は、優しく、明るい性格で、容姿端麗、頭も良く、スポーツも水泳で、ジュニアオリンピックまで行った、黒目がちな瞳が印象的な女の子だった。


 彼女が死んだ時、僕は、極楽タクシーで、送って行った。



 つまり、極楽タクシーには、運転手がいる。もちろん運転は、僕がする。


 最初は、軽快にとばしていても、極楽近くまで来ると、死んだ人達が極楽を目指し歩いている姿が、目立ってくる。


 普通、人は死後の世界へは、歩いて行くようだ。もちろん死んでいるのだから、疲れはしない。

 一歩踏み出すごとに、現世での穢れを捨てていき、身体が透き通っていく。


 透き通っていくごとに、意識もぼやけてしまうのだろう。極楽に近づくにつれ、歩調が乱れていく。ぶつかってもすり抜けるだけだが、なるべく交通事故は、さけている。


 第一の客は、狸山たぬきやまポン太郎さん。


 元、政治家である。


 もちろん、極楽タクシーは、慈善事業ではない。


 


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る