第10話 帰還

エイミーたちが去り、完全に姿が見えなくなったのを確認した頃。


「やっと終わったか……」


緊張が解けると同時、急に足が笑い始めた。


バタッ!と、そのまま地面に尻餅をついてしまう。


いやはや怖かった。マジで死ぬかと思った。


願わくばこれが夢でありますように……なんて考えていても仕方がないワケで。


握った刀の感触に、俺は大きく溜め息という名の苦労を吐き出した。


今日の出来事を全部2ちゃんに書き込んでやろうか。どうせ「もうクソスレは立てないって言ったじゃないですかぁ――!」みたいないにしえのアスキーアートで返されるんだろうけど。


なんて考えていると、遠くから重機のようなタイヤの音が聞こえてきた。


その方を見ると、田中先生の運転する装甲車がこっちに近付いてくる光景が目に映る。


「みんな、大丈夫ー?」


車窓から手を振りながら、田中先生が暢気に叫ぶ。


いやいや、よく見たら……っていうかよく見なくても分かんだろ。大丈夫じゃねえよ。全員が悲惨な状態だろ。


あれからゆかりんは気絶しただけらしいが、他の連中については知らん。これ本気で死んでる奴もいるんじゃね?

 

「ふむふむ……これはちょっと情けないわね」


到着一番、田中先生の口から心無い一言が飛び出した。


この鬼教師めが。


「それにしても、不洞さんってとても強いのね。まさかたった一人であのアーナトファミリーを撃退しちゃうなんて。先生感激したわ」


「見てたんですか?」


「言ったでしょ?私はバックアップを務めるって」


バックアップらしい事なんて何一つしてもらった覚えが無いです。


「っていうか先生、こいつらどうするんですか?遺族になんて言うつもり……」


「さぁみんな、早く起きなさい。帰りますよー」


俺の言葉を無視し、先生は変な形のホイッスルを勢いよく吹いた。


すると、


「あ゙、あ~痛たた……」


「不覚……ですわ。まさかこのわたくしが……遅れをとるなんて」


「あいやぁ、こっぴどくやられたもんじゃのう……」


「……血、吸い損ねた……」


「うぇっ、ちょっと吐きそう……」


「今日も駄目だったか……悔しいなぁ」


さっきまで横たわっていた死体みたいな奴らが、一斉にその身を起こし始めたから驚きだ。


その光景たるや、まさにコスプレイヤーのバイオハザード。


「ふふ……驚いた?この笛は『天使の呼び音』っていってね。睡眠中や気絶してる人を半強制的に目覚めさせることが出来るの」


「日曜の朝とかは迷惑ですね」


「平日の朝は便利よ?」


そんな物で快眠を邪魔されちゃ敵わんだろう。


それはさておき。


見渡す限り、死んでいる奴が一人もいないことに俺は驚きと安堵を覚える。


何だかんだ言ってこいつらも丈夫にできてんだな。


「さて、それじゃあ学園に帰りましょうか。みんな、さっさと車に乗って乗って」


全員がゆらりゆらりと、おぼつかない足取りで装甲車に乗り込んでいく。


デスマーチすぎワロタ。


その中で一人、取り分け疲れていそうなゆかりんに、俺はさりげなく肩を貸した。


「ありがとう、不洞さん」


下心があるなんてとても言えましぇん。


しかしあれだな。こんなにボロボロなのにゆかりんからは非常に良い匂いがする。


もちろんクンカクンカしておくことも忘れない。


このまま腕にパイタッチでもと期待していたが、残念なことに俺の方が胸がデカい故、逆にパイタッチされてしまうという何とも不思議な結果となってしまった。


大きいというのも考えものですな。


「全員乗ったわね?」


先生が確認を済ませると、俺達を乗せた装甲車は走り出した。


車内はとてもカオスで、ほぼ全員がぐったりとした様子で壁に背を預けている。


平気なのは俺くらいだ。


「不洞さんって……凄いのね。まさか……あんなに強いとは……思わなうえっ……」


よせカレーパン。無理に話そうとするな。こんな密集した状況で昼のカレーでも吐かれたら大惨事になる。

 

それからは誰一人として口を開くことなく、車の揺れと共に時間だけが過ぎていった。


20分ほど経った頃だろうか。車が停止して後部ハッチが開き、先に降りていた先生が中を覗き込んでくる。


「みんなお疲れ様。到着よ」


ぞろぞろと車を降り、そして出発前とは正反対な低いテンションで廊下を歩いていくクラスの連中。


そんな光景を見ていた他のクラスの生徒たちから労いの言葉がかけられていたが、負け戦であったことは一目瞭然。みんな苦笑いだった。


あいつらだって見は目は普通の生徒だが、中身は超人なんだろうな、きっと。


「男子は廊下で待っててよ~……私たち先に着替えるから」


「覗いたら死刑ですので覚悟してくださいまし」


どうやら先に着替えるとのこと。


「ほら……不洞さんも」


「アウチ」


またもカレーパンに強制連行され、女子更衣室と化した教室に引き込まれてしまう。


べっ、別に嬉しくなんかないんだからねっ。


まぁ勿論そんなワケはないがピュアな俺にゃ少々刺激が強いので、俺はそっぽを向きながら着替える。


といっても、俺には着替えるなんて手間は無い。


黒若が送ってきたこの腕時計を使えば一発だ。


ポチっとボタンを押す。するとリボン状の光の粒子が俺の体を包み、それが消えた時には既に制服へと戻っていた。


しかも便利なことに、戦闘服だけでなくマサル・パンツァーまで時計の中に収納されている。

 

「何じゃそりゃあ!一体どうなっとんのけ!?」


変身を済ませるや否や、隣から響くネコミミの大声。


お前だけテンション戻るの早いのな。


あと早く着替えろ。ゆかりんと違ってお前はリアルに汗臭い。


という旨をやんわり伝えるためネコミミの方を向いた俺の視界に、突如爆弾が飛び込んできた。


さくらんぼ色の小さな爆弾が。


「ぬぽぁ!?おまっ、服服服服服服ふくぅうううう!なんですっぽんぽんなの!?」


まさかの裸族登場に俺は動揺を隠せない。慌てて目を背けた際に首が嫌な音を立てたり立てなかったり。


下の方はギリギリ視界の外だったので見えなかったが、それより上は全部モロ見えでした。


しかもこのネコミミ、恥ずかしがるどころか隠そうとすらしない。とんだ露出狂っぷりである。


っていうかこいつの臭い、服に染み込んだ汗じゃなくて体臭そのものだったのか。色々と歪みすぎだろ。


「どこ見とるさね?女同士なんじゃから遠慮は要らんじゃろ」


「せめて下着付けようよ、下着!ブラジャー&パンティ!」


「あんな窮屈なもんハナから付けとらんね」


「それは痴女だよ!」


廊下の方からぷしゃあああ!と液体が勢いよく噴き出すような音が聞こえてきた。


今誰か鼻血噴いたな。妄想乙。

 

「冗談じゃ。パンツくらいは履いとるよ」


そう言うと、横から衣擦れの音が聞こえてくる。


でもやっぱりブラジャーは付けてないんですね。








しばらくして着替えを済ませると、男子達も入ってきて全員が教室に揃った。


どうやら男子は廊下で着替えていたらしい。


時計を見ると、針は3時前を指していた。時間的にはまだ6時間目の最中なんだろうが、もう解散で良いんじゃないかと俺は思う。


「ねぇ、これまだ帰っちゃダメなの?」


女子らしい口調を心掛けながら、俺は後ろのカレーパンに尋ねた。


「この後はちょっとした反省会があるからねー。で、各自の悪かったところを纏めて、週末までにレポートで提出すんのさー。あーダル……」


憂鬱そうに机に頭を預けるカレーパン。


しかしそこは他の皆も同感らしく、勤勉そうなゆかりんや銀髪ロールのシェリーたんを除いては、みんな面倒臭さを露骨に現していた。


確かにレポートは面倒臭そうだ。普通の宿題と違って問題や答えまで自己流に作り上げないといけないからな。


そうして負のオーラが漂う教室に、ビデオ機材を抱えた先生が入ってきた。


「はーいみんな、疲れているところ悪いけど復習の時間よ。どこが悪かったのかみんなで話し合いましょうね」

 

黒板の上の天井からスクリーンを引き下ろし、電気を消して射影機の電源を入れる。


こんなに豪勢な学園の割に安上がりな設備だな。



で、反省会とやらがスタート。


映し出された場面はシェリーたんが敵の主将たるエイミーと啖呵を切り合うシーンからだった。


どうやって撮影しているのか、全体的が見渡せるように斜め上空から映像が撮られている。


【このアテ……者、シェリ……が……】


音声が上手く聞き取れないのは、遠くから撮影しているためだろうか。


そしてシェリーたんがロングソードを光らせ、30対4という超絶ハンデ戦が始まった。


そこからはもう色んなものが爆発したり炸裂したり、ごちゃ混ぜな感じで戦闘が進んでいく。


誰かが距離をとれば、その隙を埋めるように他の誰かが攻撃を仕掛ける。


剣だったり魔法だったり瓦礫だったりお札だったり、多種多様な攻撃が飛び交う中。


エイミーやチョココロネら4人は、焦るどころか汗一つ掻かずに全てを防ぎきっていた。


しかもその合間に、クラスの連中一人一人に対して確実に一撃を決めていく。


陰陽師が腹に拳をぶち込まれ、ネコミミが爆発をモロに喰らい、他の面々も次第に撃破される。


戦闘が続いた時間は15分くらい。たったそれだけで、30人もの超人達は全員が地にその身を伏せていた。

 

各々がその光景を眺め、自分たちの弱さに溜め息をついていた。


いや、あの戦場から生きて帰ってきただけでも相当なもんだと思うけど。




「「…………あれ?」」




そこまできて、全員が首を傾げた。


そう。


不洞新菜こと俺の姿がどこにも見当たらないのだ。


理由は簡単。一人だけずっと瓦礫の陰に隠れていたからなの。


この時点で大半の奴らは気絶していたのだろう、この後の展開を知らないクラスの連中は映像にぐっと見入り始める。


スクリーンの中ではエイミーが周囲を見渡し、そして俺が隠れている瓦礫の方へと近付いていく。


ちなみにこの時の俺は間抜けにも黒若と口論してたっけな。


そして瓦礫の陰を覗き込み、怪訝な顔付きで何かを言う。音声が届いていないのは幸いというべきだろうか。


そこに和田ア◎子やレオタードお姉さん、そしてチョココロネも集まってきた。


何だ?と皆が不思議がる中、俺は一人安心する。


確かこの辺りは俺が無様に土下座をしている場面だ。だが瓦礫が上手い具合に障害物となって、俺のエクストリーム土下座もギリギリ映像には収められていない。


あの瓦礫、好きかも……。

 

それからはまぁ、俺TUEEEEEEE!な無双シリーズばりの展開でチョココロネを撃破。


そしてエイミーらとの会話を終え、先生が装甲車を運転してきたところで映像は終わった。


「……とまぁ、今回の流れはこんな感じね。みんなが見たように一番頑張ったのは……」


「「すげぇえええええ!!」」


先生が言い切る前に、教室内で鼓膜が破れるくらいの歓声が巻き起こった。


うるせぇ。


「不洞さん、あんなに強かったんだ!」


「教えて!どうやったらそんなに強くなれるのか今度教えて!」


「むしろ俺と結婚してくれ!」


「あ、有り得ませんわ!わたくしを差し置いてあれ程の強さを誇るなど!」


「人数差を無くす為にわざと身を隠してたんだな!まったく、大した子が転校してきたもんだぜ!」


「ウチぁ最初から分かっとったぞい。お前さんの顔を見りゃ強さなんて一目瞭然じゃて」


それぞれ独自の解釈で俺の強さを感じているようだが、真相を知ればどうなることやら。


「ふふん、不洞さんってば本当に凄かったんだから。いや~生で見れた私ゃ幸せもんだわ」


そして何故か自慢気なカレーパン。こいつが土下座のシーンを見逃していたのは今日一番の僥倖かもしれない。

 

でもまぁ、こんなに褒められると俺も悪い気はしない。


こいつらとは上手くやっていけそうだ。


「不洞さんのこともいいけど、自分の悪いところもしっかり分析して頂戴ね。レポートは週末までよ」


収集がつかなくなる前に、先生が手を叩いて皆を窘める。


聞いた話によると活躍した俺もレポートを提出しなければならないらしく、果てしない面倒臭さに活気づいた教室の空気もしんと静まり返った。


まったく、単純な連中である。


……と、そこで時計の針がキリの良い時間を指し、授業の終わりを知らせるチャイムが鳴り響いた。


「それじゃあ、今日はもう解散にしましょうか。提出期限が過ぎたら職員室まで呼び出すので、そのつもりでね」


はぁーい、と皆の疲れた返事を最後に、俺の転校初日は幕を下ろした。


その後、自分のクラスだけでなく他のクラスの男子からも「一緒に帰ろうドゥフフフフ」と熱烈な申し込みを受けたが、もちろん全て断った。


誰が好き好んで下心丸出しの野郎共と帰るか。去勢してから出直してこい。








その日の帰り道、俺は例の時計で黒若と話しながら帰路を歩いていた。


というか、何も知らされずにこんな学園に放り込まれたことへの苦情ばっかりだったが。


【てへぺろ♪】と誤魔化してきたあのクソ医者にはいつか鉄槌を下してやろうと心に誓う。

 

それと同時に黒若から改めて詳しい説明を受けたが、そのどれもが俺を驚愕させる内容だった。


正義と悪の超人たち。両者の争いが繰り広げられている場所は日本や世界に留まらず、なんと地球上とは別の異世界でも起こっているらしい。


というか異世界が存在する時点でビックリだ。そういえば時○管理局みたいな組織が存在するとかも言ってたな。


で、ここ地球では聖ポルナレフ学園を含む幾つかの超人養成機関が存在し、卒業生を世界や異世界に輩出させて悪の超人と戦わせているとか。


【君が戦ったのは確かアーナトファミリーだったね。彼女らは最近地球に進出してきた悪の超人だが、その戦闘力は超人の中でもなかなか飛び抜けているらしいよ】


「よくそんな化け物に養成中の奴らを戦わせるよな、学園の教師は」


【彼女らは強者との戦いを好むけど、人を殺さないのをポリシーにしているのさ。施設や物を破壊することで正義の超人をおびき寄せてるんだね。だから戦わせても問題無いと学園側も判断したんだと思うよ】


つまりは相手役として養成の材料にされてるワケか。

 

ただ戦いたいだけなら普通に申し込めばいいだろうに、何故わざわざ回りくどい方法をとるのか。


競い合う相手ではなく倒すべき相手。スポーツのような試合ではなく身の危険を伴う真剣勝負。そんな緊迫した戦いを望んでいるからだろう、というのが黒若が寄越した答えだった。


まぁ真偽は本人達しか知らんだろうけど。


「……で」


【何だい?】


超人が存在したり戦ったりする理由や、その背景については何となく分かった。


そして黒若がそれに関わりたいというのも、その為に俺を学園に送り込んだ経緯も理解できないワケじゃない。


が、俺の言いたいことは一つ。


「俺は学園をやめるぞ、黒若ぁああああッ!」


【7億円】


いとガッデム……。


結局この請求がある限り、俺の意思は無いも同然。黒若に従い続けるしかない。


【まぁそう落胆することもないんじゃないかな。一般人と掛け離れた危険な生活とはいえ、君の力はそこそこチート級だ。学園でも上手くやっていける筈だよ】


「いや、俺が心配してるのは戦闘力のことじゃない。戦いという行為そのものが既に嫌なんだ」


【どうしてだい?不思議とファンタジーに満ちたスリリングな出来事だろう?サラリーマンや世間一般の職種よりはよっぽど有意義な仕事じゃないか】


「働きたくないでござる!!」


【君の名は体を表しすぎだね】


こちとら、伊達や酔狂で新斗ニートを名乗っちゃいないんでね。

 

学校ってのは勉学に励む場所だろ?何が楽しくて危険を冒してまで働かなくちゃならないんだか。


そりゃ魔法とか気とかの厨二的な現象に興味が無いと言えば嘘になる。だが、やっぱりそういう憧れは妄想の中に留めておくのが一番だ。


いざ実際に関わってみれば、それはリアルと何ら変わらない。


ごちゃごちゃ言うと長くなりそうだが、要するに面倒臭いワケです。


マウス片手にPCでファンタジー系のエロゲでもやってた方がよっぽど簡単にワクワク出来るし。


【とりあえず何事もこれからさ。まだ転校初日。卒業する頃には君の気持ちも変わっているかもしれないよ】


「鬱です」


【本当に鬱になった時には最高のカウンセラーを紹介するよ。医者のコネを舐めてもらっちゃ困るなぁ】


精神病になることも許されないとは、俺の人生は目茶苦茶なレールの上を進み始めてしまったらしい。





そうして絶望に打ち拉がれている内に、俺はいつの間にか自宅の前に着いていた。


「…………ただいま」


こんなに最悪な気分で玄関を潜ったのは人生二回目だ。


ちなみに一回目は告白でフラれた小学生の時な。


「にぃいいいいいいいちゃぁあああああああああん!!おっかえりなさい!!ぐへへへへへへへへへへへ!!」


ドアを閉めると同時、姉ちゃんが涎を撒き散らしながら飛び掛かってきやがった。


くそっ、危険なクリーチャーは学校だけじゃなく家にもいることを失念していた。

 

…………ん?


よく考えてみれば、俺の身体能力は常人のそれを遥かに凌駕している。チョココロネとの戦闘で実証済みだ。


ならば……この変態姉貴からも簡単に逃れられるはず!!


この結論に至るまで僅かゼロコンマ1秒。思考速度までもが化け物クラスな今の俺に死角は無い。


スローモーションで流れる視界の中、俺は素早くしゃがみ、空中にいる姉ちゃんの下を潜る形で瞬時に高速移動を開始する。


「痴将不洞真美、破れたり!」


「残像だよ」


「るぶぇっ!?」


何故だ。人間には出せない最高速度で移動した筈なのに、後ろにいたはずの姉ちゃんがいつの間にか俺の真正面で両手を広げておいでおいでポーズをしながら指をワキワキさせて舌舐めずりで涎を飲み込みつつハァハァと荒すぎる息遣いで俺のダイブを待ち構えているんだが。


ぶっちゃけ物凄く怖い。しかし動き出した俺の体は、再度勢いを殺すまで止まることができない。


悪魔よりも醜悪な罠に、自ら飛び込んでしまった。


「うぇるか~~む」


「ぐあっ、離せこの変態!」


全力でもがいているのに、何故か姉ちゃんのホールドはビクともしない。


黒若の奴、やっぱり設計ミスしてんだろ。肝心な時に超人の力を発揮できなきゃ意味ねぇじゃねぇか畜生。


「ハァ~クンカクンカ!今日のにいちゃん、なんだか仄かに汗の匂いがするよぉ!さては体育でハッスルハッスルしてきたんだねもう我慢できないい・た・だ・き・ま・す!!」


「あっ、ちょっ、やめっ、もうイヤ゙ぁああああああああああああああああああッ!!」




我が家という場所にすら安らぎを得られない、哀れな俺に幸あれ。

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