ハートの城へ潜入捜査III

これはかなりヤバイ状況だ。


少し軽率に動きすぎたか…?


マレフィレスはボク達に気付いている可能性が高い。 


背中に嫌な汗が流れた。


マレフィレスがクローゼットを開けようとした時だった。


「女王様。」


「ジャック?」


ジャックの声を聞くとマレフィレスは動きを止めた。


マレフィレスに声を掛けたのはジャックだった。


耳栓をしているから何を話しているか分からない。


ジャックが何故ここに?


「お、お前が何故ここにいるの?」


「女王様が暴れてるから止めて欲しいって使用人達に頼まれましてねー。あー、また首刎ねたんですか。ミハイル。」


「うっわぁ…。また派手にやりましたね…。」


ジャックの後ろからミハイルが現れた刎ねられた執事長のを見て真っ青になっていた。


「私の為に来てくれたのジャックー♡」


マレフィレスはジャックに近付き腕を絡めた。


ジャックはクローゼットに一瞬だけ視線を送った。


ボクの存在に気付いているのか?


「俺しか止められないでしょう。死体の処理をしますから部屋を出ましょう。」


「分かったわ!!ミハイルさっさと掃除してちょうだい。」


「分かりましたよ…。」


「早く行きましょうジャック♡」


ジャックとマレフィレスは部屋を出て行った。


カツカツカツ。


「……。出て来て大丈夫だよ2人共。」


ミハイルがクローゼットに近付き小声で話した。


ボク達は恐る恐るクローゼットを出た。


「はぁぁー、マジで助かったよミハイル!!」


CATがミハイルに抱き付いた。


「お、おい!?抱き付くなよ!?」


「どうしてミハイルとジャックがここに来たんだよ?」


ボクはミハイルに尋ねた。


「ロイドから連絡あったんだ。」


「ロイドから?」


「うん。ゼロちゃん達が潜入するから様子を見て欲しいって。たまたま俺達がこの部屋に入るゼロちゃんと後から来た女王様と鉢合わせたんじゃないかと思ったら…。危ない所だったね。」


ロイドがジャック達に話していたのか…。


だったらジャックがマレフィレスを部屋から離したのに理由が付くな。


「ゼロちゃん達の代わりに執事長が死んで良かったよ。」


そう言ってミハイルは執事長の頭を軽く蹴った。


ミハイル?


わざわざ頭を蹴る必要があったのか?


ボールを蹴るみたいに…。


「この写真は?」


そう言ってミハイルは床に落ちて居る写真を拾い上げた。


「黒いドレスを着たアリスの写真だ。」


「この部屋はもしかしてアリスの事を調べる部屋だったのかな…。女王様はこの部屋に誰も入れなかったから。」


「多分な。この部屋にある書類はアリスの事ばかりだ。マレフィレスは何故アリスの事を調べているんだろうか。」


「分からないけど…、マレフィレスが1番容疑者に近いのかも知れないね。」


ボクとミハイルが話しているとCATが廊下を見に行った。


「CAT?」


「この香水臭い匂いは…。あっちゃー。」


そう言ったCATは苦笑いをしていた。


「どうかしたのかCAT。」


「いやー。もう1人アリスの事を毛嫌いしている子がいるんだけどその子がこっちに向かって来てる。」


「え!?マシーシャが!?」


CATの言葉にミハイルが反応した。


「マリーシャ?誰だ?」


「ゼロちゃん達は早くこの部屋を出て城を出るんだ。」


ミハイルの顔を見たらこの状況がまたヤバイ状況に変わったのだと悟った。


「分かった。」


「ごめんね城の外まで送ってあげられなくって…。」


「いや、大丈夫だ。」


「早く行こうゼロ!!」


ボクとCATは走って部屋を出た。


「マリーシャって奴はヤバイ奴なのか?」


「アリスの事めちゃくちゃ嫌って居る女だよ。いつもアリスの事を殺そうとしてたなー。帽子屋の経営してる殺し屋の女。」


「その女が何故マレフィレスの城にいるんだ?」


「女王が飼ってるんだよ殺し屋達をね。多分マレフィレスが呼んだんだ。ボク達が城に入って来た事を知ってるのかもー。」


「っ!!」

後ろから気配を感じたボクはCATの腕を引き床に倒れ込んだ。


「え、え!?ど、どうしたの!?」


「頭を失せろCAT。」


バンバンバンバン!!


頭の上に銃弾が飛んでいた。


「え、え!?発泡音?」


「後ろから銃を撃たれてる。」


「マジ?」


カツカツカツ。


後ろからヒールの音がした。


ボク達は物陰に隠れ様子を伺った。


「さっさと出て来なさいよ。」


ミルクティー色の縦ロールヘアー、グリーンの瞳にセクシーな格好をしている黒いうさ耳をした女が銃を持って歩いて来た。


バンバンバン!!


女は彼方此方(あちらこちら)に銃弾を放った。


「ッチ。面倒臭いけどコレ使うか。」


ポケットからTrick Cardを取り出した。


Trick Card?


奴の能力は何だ?


「Magic。」


そう言うと置いてる家具達が浮き上がった。


マリーシャは浮き上がった家具の裏側を隅々見て回った。


幸いなのがボク達とマリーシャの距離が少し空いている事だ。


「わわ、わどうしようゼロ!!」


「まだロイドから貰った時計を使う訳にはいかない。少し実験をしてみようかな。」


ボクは太ももに隠しておいた銃を手に取った。


「流石オレの主人だね。Trick Cardを使った戦いが

あるだろうし…。良い機会だよね。」


「あぁ。CAT、お前に渡して置く。」


CATにロイドの時計を渡した。


近付いて来るマリーシャにボクは銃を構えた。


5、4、3、2、1…。


今だ!


パァアン!


ボクはマリーシャの足に向かって銃弾を放った。


グシャァ!!


ボクの放った銃弾はマリーシャの足にヒットした。


「いったぁぁ!?そこに居るんだろ!?出て来いこのウジ虫が!!」


マリーシャは血が出ている足を押さえながら叫んだ。


ボクとCATはマリーシャに言われた通りに前に出た。


「お前誰だ?見ない顔だな。」


カチャッ。


そう言いながらマリーシャは銃を構えた。


カチャッ。


ボクもマリーシャと同じく銃を構えた。


「お前より強い相手とでも言っておこうか兎ちゃん?」


挑発的な言葉をマリーシャに投げ掛けた。


「はぁ?アンタがあたしより強い?冗談?」


「冗談なのはその格好だけにしてくれよな。」


「あららら…。」


CATはマリーシャの顔を見て苦笑いした。


「殺してやるこのウジ虫!!!」


「アンタには実験体になって貰うぜ?」


ボク達は同時に銃口を引いた。

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