鍵付きの手帳の謎

"愛を知りますよ"


占い師がボクにそう言った。


ボクが1番分からないモノなのに…。


「ゼロちゃんお疲れ様ー。」


「遅かったな。」


「遅かった?そんなに時間が経っていたのか…?」


「1時間くらいだな。」


1時間も経っていたのか…。


「あ!ジャック達こんな所にいたの!?」


後ろからエースの声がした。


振り返ると汗だくになったエースが立っていた。


「あれ?エースじゃん!!どしたの?」


「女王がジャック達を呼んでるんだよ!!それもカンカンになって!!」


エースがそう言うとジャック達は深い溜め息を付いた。


「そんなに怖いのか女王は?」


「怖いもんじゃないよ!!あれは悪魔だよ悪魔!!気に入らないとすぐと首を刎ねるんだよ。」


エースは慌てた様子でボクに説明した。


「女王はアリスを殺した容疑者の1人なんだ。悪いが俺とミハイルは城に戻る。エース、ゼロを送ってくれ。」


「了解!!早く城に戻って!!」


「はいはい。」


そう言ってジャック達は走って行った。


「ゼロTrick Cardを貰ったの?」


「え?あ、あぁ…さっきな。エースも持ってるのか?」


「勿論!!僕のTrick Cardはコレだよ。」


そう言ってTrick Cardを見せて来た。


トランプカードの絵柄が描かれ"Magic"の文字が書かれていた。


「ボクの能力は最初に見たよね?ボクはトランプカード自由に操れる能力だよこうやってね。」


エースは自由自在にトランプカードを操って見せた。


「へぇ…。あの時もTrick Cardの能力だったのか。」


「そうだよー。あ!ゼロを送らないと!!そろそろ夜になるから。」


時計を見てハッとしていた。


「夜になるとまずいのか?」


「ほら、ロイドから説明があったと思うけどここの世界は殺し屋が多いから夜になると殺し屋ばっかになっちゃうだよ。ゼロは強いけどこの世界の戦い方が分からない間は出歩かない方が良いよ。」


「成る程ね。なら、ささっとロイドの所に帰りますか。」


「だね!行こうか。」


ボクはエースの後に付いて行った。

空がいつの間にかオレンジ色になっていた。


さっきまで昼間だったのにもう夕方になるのか。


エースと他愛のない話をしていたらあっという間に

ロイドの家に着いた。


家の前にはロイドが立っていた。


「あれ!?ロイド!!ゼロの帰りを待ってたの?」


「当たり前だろ。」


「へぇ…。ロイドもしかしてゼロの事…。」


「余計な事喋ったら舌を引っこ抜くぞ。」


「はいはい!じゃあゼロ明日本格的に動き始めるから宜しくね!」


そう言ってエースは帰って行った。


「おかえり。」


「た、ただいま?」


「ッフ。何で疑問系なんだ?」


「おかえりって言われた事がなかったからこう言う返しで合ってるのかと思ってな。」


なんかおかえりって言われると普通の生活をしてるって実感するんだろうな…。


「そうか…。さ、中に入ろう。」


「あぁ。」


ボクとロイドは部屋の中に入った。


中に入るとビーフシチューとフランスパンそれと生ハムのサラダが出来ていた。


「ロイドが作ったのか?」


「ん?あぁ。」


「わざわざ悪いな。ボクはあまり食事を取らなくても平気だから作らなくても良いぞ。」


軍にいた時もあんまり食事を取らなかったしな。

必要な栄養はサプリで補って居たし。


「お前は痩せ過ぎだ。ゼロはもっと太った方が良い。そんな事は気にするな、俺の好きでやっている事だ。」


ロイドがコップに水を注ぎながら話した。


ジワッ…。


胸が温かくなる感覚がした。


なんだか気恥ずかしい感じだ。


「さ、食べるぞ。」


「あぁ…。い、いただきます。」


「いただきます。」


この世界に来てからボクの心がおかしい。


こんな感情を抱いた事がなかったのに変だ。


ずっとこの世界にいたら前の自分に戻れるのだろうか…。


「街はどうだった?」


不意にロイドに話し掛けられた。


ボクは今日あった事を話した。


チェシャ猫と帽子屋とインディバーに会った事とTrick Cardの事。


「ロイドのTrick Card はどんな能力なんだ?」


「俺か?俺のTrick Cardはコレだ。」


ロイドはそう言ってTrick Cardを見せて来た。


時計の絵柄が描かれ"Timer"の文字が書かれていた。


「俺の能力は時間操作が出来る。」


「時間を操れるのか凄いな。」


本当にファンタジーだな…。


「チェシャ猫を味方に付けたのは強いな。奴の能力は時空を自由に行き来する事が出来る"Free"のTrick Cardを持っている。今注意する人物はインディバーか。もしかしたらゼロがアリスじゃない事を勘づいているのかも知れないな。」


「それを言うなら帽子屋も勘づいているかも知れないぞ。」


「ゼロには容疑者達の顔を覚えて欲しいからな…。単独行動は危険だな。行動する時は俺かエースが同行する事にしよう。」


「了解。ジャック達は?」


ボクはロイドに尋ねた。


「ジャックとミハイルは城に仕えているからな。あまり自由に動けない。それに女王マレフィレスの動きを監視してる。」


「ジャック達はジャック達で仕事をしてる訳ね。」


「そう言う事だ。」


ボク達は食事を済ませそれぞれの部屋に入った。


ガチャッ。


アリスの部屋を探索してみるか…。


昨日はそのまま寝てしまったからな。


ボクは窓を開け煙草を吸いながら部屋を探索した。

ドレッサーの引き出しの中から赤い鍵付きの手帳が出て来た。


「あ?この手帳鍵が掛かってる…。」


鍵らしき物がないな。


改めてじっくり部屋を探索した。


だが、鍵が見つかる事はなかった。


「この手帳がきっと鍵になるだろうな。」


ドレッサーの前でジッと鍵付きの手帳を見つめていると鏡から声がした。


「ゼロなのか!?」


聞き覚えのある声だった。


不意に鏡に視線を向けるとそこに映って居たのは…。


「ヤオ!?」


「やっぱりゼロなのか!?」


鏡に映っていたのはヤオだった。


「どうしてヤオが…?」


「どうして…ってずっとゼロを探してたに決まって

るだろ?屋敷の中を探し回ってたからこの鏡が急に…。」


ヤオはずっとあの屋敷の中を探索していたのか。


「その格好はなんだよ!?それとこの現象はなんなんだ!?」


「ヤオ落ち着け。説明しても分からないだろうな…。だが、暫く戻れないと言う事は言える。」


ボクはヤオに簡単な説明をした。


「…。とりあえずお前は無事なんだな?」


「あぁ。心配する事はない。」


「なら良いけど。戻って来るんだよな?」


ヤオの言葉に胸が重くなった。


"戻って来るんだよな"


その言葉で急に現実に戻された気がした。


「あぁ。用が済んだらな。」


「またこの屋敷に来てコンタクトを取ろうぜ?気をつけろよゼロ。」


「ヤオの方だろ?敵陣の屋敷なんだ気をつけて軍に戻れ。」


「はいはい。じゃあな。」


プツンッ。


ヤオの顔が鏡に映らなくなった。


胸に錘が付いたように重い。


ボクはアリスの代わりに呼ばれただけって事を忘れていた。


いつの間にかこの世界に染まりつつあったのか。


ボクは重い気持ちのまま煙草を携帯灰皿に押し付けた。


ハートの城にてー


パリーンッ!!


ジャックの足元でワイングラスが割れた。


「私が呼んだら直ぐに来いって言っているだろ!!」


ネイビーカラーの巻き髪は高めのハーフツインテールにしていて色白の肌にワインレッドの瞳。


赤いランジェリー姿の女がジャックを睨み付けた。

「女王様。急いで来たじゃないですか。またこんなにワインを飲んで…。」


ジャックがワインボトルに手を伸ばした。


ガシッ!!


女王マレフィレスがジャックの腕を引きベットに押し倒した。


「お前は私の物だろうジャック。私と同じ肩のタトゥーがお前の肩にも入っているのだから。」


そう言ってジャックの首元に触れた。


「…。女王様酔っておいでですか?」


「お前に酔っているのだ。」


そう言ってマレフィレスはジャックに口付けをした。


「2人の時は私の名前を呼べと言っておるだろう?」


「マレフィレス退いてください。」


「嫌だ。お前を離す気はない。」


そう言ってジャックの服を脱がした。


ジャックは乱暴にマレフィレスの頭を掴み口付けをした。


マレフィレスの甘い声はジャックには聞こえなかった。


ジャックは淡々と仕事をするようにマレフィレスを抱いた。


全てはアリスを殺した容疑者を殺す為に。


甘い夜の物語の真相は感情のない愛だった。


哀れな女王はそれでも構わないと思っていたのだった。



 第1章  END

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