第6話 隠れ家

日曜になりお昼を食べに天空カフェへやって来た。当たり前のように新くんと希和ちゃんが手を振って迎えてくれる。食事の前なのに胃もたれする感じがした。


「おはようございま〜す」希和ちゃんが無邪気で元気な声をかけてくる。

「もうお昼だけどね」俺は冷ややかに返す。

「友希くん、ちょっと冷たいんじゃない?」

「そうですか?日頃から俺はこんな感じですけどね」

「クックッ………」新くんが含み笑いをしている。

嫌な化学変化を起こしそうな現状に眉を寄せ少しため息をつく。


「ねえそこのお客さんっぽい人達!お店が混んできたから邪魔なんだけど」

綾乃さんが笑顔と睨みをミックスして話しかけてくる。

「ですよねー」新くんは少し考えると「そうだ!友希くんの隠れ家を見に行こう!

よ」とんでもない提案をして来た。

「やったあ!」希和ちゃんは大喜びではしゃいでいる。

「俺お昼を食べて無いんですけど」何とか阻止しようと試みる。

「大丈夫、ちまきをお持ち帰りすれば問題なし!」

「みんな知ってしまったら隠れ家にならないんですけど」

「えっ?ガレージハウスだよね?」

「新くん……」キレそうになるのをなんとか堪えた。

「希和ちゃんは彼女だから見せてもいいんじゃ無いかなあ?」笑っている。

「(仮)でしょう、だから見せない」

「そんなあ……」希和ちゃんは頬を膨らませた。


結局押し切られ、ちまきを買ってガレージハウスに戻ってくる。

新くんと希和ちゃんは軽トラで後をついて来た。


「へー!隠れ家なのに何にも隠れてないんだね、しかも普通の家っぽい」希和ちゃんはあたりを見渡す。

俺は何も言う気がしない。

「どうぞ!」ふてくされながら玄関のガラス戸を開けると、中に入った二人は子供のような目で室内を見渡した。

「カッコいいねえ友希くん!」

「そうですか、それはどうも」さらにふてくされる。

「キャー!キャンプできる」そう言って希和ちゃんはテントの中に入り込む。

「こらこら、勝手に遊ぶな!」

隣の部屋を覗いた新くんが「工具も揃ってるねえ」と感心している。

「2階もあるよねえ」

「えっ、2階まで見るつもり?」

「「うん」」二人とも小刻みに頷く。

階段を上がって小川の見える部屋へ来た。

「わー凄い!大きな画面でゲームができる!」

「いいねえ、ここで映画を見たり出来るんだ」そう言いながら本棚のブルーレイやDVDを物色している。

「もういいでしょう、これで全部です」1階に降りようとすると横の部屋も見ている。

「ここはこれからなんだ」

「ここはこれからじっくり作る予定だから」

「希和ちゃん、この部屋は希和ちゃんのお部屋にしたら」

「いいなあそれ」

俺は怒りが頂点に達した。

「新くん!あ・の・ね」怒りを滲ませ睨んでみる。

「こわ〜……希和ちゃん下に降りようか」逃げるように二人は降りていった。

「ここでバイクを磨いたりするんだ、いいなあ」

「まあ……」

「男のロマンだねえ」新くんは口角を上げた。

「………………」

「俺コーヒーでいいや、友希くんちまき食べるんだろう?」

俺は怒りを通り越して可笑しくなってきた。

コーヒーを入れ、ちまきをレンジで温めて食べ始める。

希和ちゃんは勝手にテントの中で寝袋を広げて中に入り込んで遊んでいる。

俺はこのガレージハウスを作ったことを少しだけ後悔した。

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