第2話

「きゃー! エイル様!」


講堂に入った瞬間黄色い歓声が聞こえてきた。

いきなり居たよエイル様。

しかもレン様とスペンサー様も一緒だ。

まっ、眩しすぎる。


「聞いた!? エイル様の武器!」


「ええ! 太陽の剣ですわよね!」


「スペンサー様は、叡智の杖ですって!」


「レン様は古代の鏡らしいですわよ!」


この学園では入学生の魔力や戦闘力を測り、自分にピッタリな武器や装備を与えてくれる。

適性が高い人は伝説級の武器を貰えるらしく、彼らはそれを貰ったらしい。


「うわあああ! もっ、モルガナ様! やっべー!」


「ふん、大した事ないわよ」


冷たい氷のようなオーラを放つ美しい少女を見て私は心をときめかせる。

……もっ、モルガナ様!

前見た時より美しくなってる!


「伝説級の装備、灰色の魔女のベールじゃないですか!!」


「大袈裟よ」


あの綺麗なベールを付けて戦うモルガナ様……想像するだけで萌る!

いいなーあの子、モルガナ様の親衛隊だ。

羨ましーなー。


「すっ、素晴らしい!すばらしいぞ! ノンシュレ厶!」


教師が声を荒らげると生徒全員が、講堂にある女神の泉の上に立つ彼女を見る。


「聖女の御旗だ! 光魔法の伝説級アイテムだぞ!」


……うわぁ、すっごい。

あの笑顔可愛いなぁ、皆から期待されて羨ましい。


「すごいなメアリー 」


「あっ、エイル様! そんな私なんか大した事ないですよ~」


「何言ってんだよメアリー、伝説級手に入れてんだぜもっと誇れよ!」


「あぁ、自分に自信をもてメアリー」


……しかもあの3人と仲がいいってまじで主人公だよ。

凄いなーつい数年前まで私と同じだったとは思えないや。


「うわああ!!!!! きっ、君! どっ、どういうことだ!?」


「嘘だろ!? 信じられない!」


「どっ、どうしましょう! 政府に連絡するのですかこれ!」


「出来るわけないだろ! こんなことってあるもんか!」


先程までの雰囲気とは違った盛り上がり。

先生達が何やら焦っている。

何か凄いことが起きているらしいけど、一体なにが……


「えっ、なになに? どういうこと?」


ちらりと見てみると泉の上にはポカンとしている私の親友の姿。


「レイ・アルペジオ! 君普段どんな事をしてきたんだ!? これは選定の剣だ! かつてこの大陸を治めた王が使ってたと言われる剣だぞ!?」


レイ……が?


「いや、普通に勉強と遊びと運動ですけど」


「それでかい!? 魔法は!?」


「たまーに悪戯で使うくらいで」


困った顔をするレイ。


「選定の剣が彼女に渡ったという事は、君はこの世界に王として認められたんだぞ!?」


一気にざわつく人々。

嘘だ、レイが王だなんて。

王族じゃない彼女が王になるだなんて!

まって、じゃあエイル様は……!?

ちらりと彼を見ると鬼のような気迫を出している。

やっ、やばい! これは本当にやばい!

とっ、とりあえず私も泉に行ってなにか貰おう!


「すっ、すみません! 私まだ貰ってないんで貰いますね!」


「えっ? あっ!? ちょっと君!?」


「はいはい! レイちゃんどいたどいた!」


「ちょちょ! シェリー!」


「早く逃げてとりあえず静かなとこ! 何も言わずに早く!」


彼女を押し出して私は泉の上の石版に立つ。

すると泉の中が光って空中に丸い光が浮かぶ。

それに手を触れるとその光は私の手に馴染むように姿を変える。


「こっ、これは!」


周りが私の武器を見てザワついた。

そして次の瞬間


「見事な『ひのきのぼう』じゃ!」


「「「「ぎゃーはっはっ!! ひのきのぼうじゃん!」」」」


別の意味で会場が湧き上がった。


「えっ、あっ!? なんでうそでしょ!?」


「伝説級とかそんなんじゃなくって最弱装備!!」


「最弱武器! ひのきの棒!」


「本当に出るなんて! 今年は逸材揃いだな!」


不穏な空気が一気に明るい雰囲気に変わる。


……なっ、納得がいかない!

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