第9話


下から見た水面が揺れている

青い空の中に居るように全てが淡い青に染まり腕を動かすと合わせて泡が宝石に似た輝きを煌めかせながら上へあがる

「雨が空に降ればこんな感じかしら」

ぼぅと眺めているカノンがビッチを真摯に見つめた

「アンナって結構詩的な表現するね」


「そうかしら」

首をかしげ聞きかえすと微笑みながらカノンが言う

「アンナは素敵だよね」

「なに?急に」

「素直に新しいモノを受け入れる力は持つ人と持たない人がいるから」

「?」不思議な顔をしたビッチはそのままドンッと長身でツナギを着た男性とぶつかった

「ああ、悪いね」男が振り向き謝る

「あらこちらこそ」ビッチが言うと少し会釈してすれ違った


しばらくして男はビッチが歩いていく様を睨み鼻をフンと鳴らした「居たな。アイツだ」



「あんがい、人が多いわね」ビッチのゲンナリした言葉にカノンが頷いた

「まーね、話題のランドだし結構並ぶよー」



階段を降りた先には大きな門があり目の前にはヨーロッパ風な街並みが広がるベンチや煉瓦で出来た広場で2人は話していた

カノンからしばらく散歩しようかと言われ広大な敷地を歩き人混みに慣れていないビッチが何回か人にぶつかるその度に謝る人もいれば楽しそうにしていて気づかない人もいた


「初めは綺麗で水の中凄いわねと思ったけどそれも慣れると普通ね」

ビッチが小さな泡を口から浮かせながら言い

カノンが水の感触を楽しむように手を閃かせた

「うちらもはじめさ、泳げる〜とか思ってたんだけど来てみたらさ歩けるように重力あってさ泳げないじゃん!とか笑った」

「ああ、そう言えばそうね」ビッチが足をあげ地面を軽く踏む

「でもちゃんと身体は軽くなってるから今なら超シンデラ体重だよプロフィールに書き放題」

「いやそれは嘘でしょ」

「バレた?」

2人で笑い合っているとカノンが思いだしたように空を指さした

「慣れてきた所でー、パレードがあるよ」

「パレード?」

見上げるとヒラヒラした赤いヒレが見えた

魚に見えたそれは更に金色の帯を連れ翠の瞳がこちら見た

「人魚?」

金髪に、翠の瞳と彫りが深い顔がこちらを見て手を振ったその下半身は赤いヒレと煌めく鱗で覆われている

「せいかーい。マジな人魚がいるよ」

1人の人魚は沢山の人々に笑いかけ黄色や黒いシマのある熱帯魚が増えてきた

更に筋肉隆々な男が現れ青いヒレを力強くひるがし褐色の肌を見せつけながら泳いでいく

「きれい」

大きな御輿が現れ人魚が近づくすると宝箱が現れ珊瑚や金で出来た王冠、コイン、装飾品ありとあらゆる財宝が降ってくる

ひとつを手の上に載せると泡とともに消えた

「これは映像?」

「そそそそ。あれ人魚はスタッフが本物で演じてるけどー」

カノンがブンブンと腕を降ると人魚が先ほどと同じように手を振り返した

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