差し伸べた手とおっぱいマッサージ

 後に残されたのは、バチバチとショートを起こして動かなくなった機械ラプトルと機械クワガタたちの残骸である。


「どうやらあいつら、壊れた機械ラプトルたちを置いて逃げたようだな」

『そうだね、でもなんかちょっぴり可哀想になってきたよ……』


 私のコックピットの中でやるせなさそうに漏らすハンナ。


 ふとウィルが機械クワガタの一体に歩み寄ってしゃがんでいるのが目に飛び込んだ。


 よく見るとその機械クワガタだけはショートを起こしながらも、まだ僅かに動いている。


 そんな機械クワガタに、ウィルは手を伸ばして触れようとしていた。


『ウィル!』

「危ないから離れなさい!」


 慌てたハンナとカレンが声をかけるも、ウィルは傷ついた機械クワガタから離れようとしない。


「キリャーッ!!」


 間近でしゃがむウィルに、機械クワガタが手負いでありながら強靭なおおあごを振り上げる。


「ウィル!」


「待ってください!」


 ボギーも大剣を構えて警戒するが、当の彼は仲間たちを止めながら、警戒心剥き出しの機械クワガタのおおあごに手を伸ばした。


「大丈夫、ボクは怖くなんかないですよ。キミを助けたいだけなんです」

「キリキリ……」

「だから安心してください、ボクがキミを直してあげます」

「キリ……」


 優しく声をかけるウィルの気持ちが通じたのか、機械クワガタは振りかざしていたおおあごを下げる。


『ウィル……』


 ハンナを始めとした皆がこの光景に目を奪われていると、ウィルが自分の頬をペシペシと叩いてこう発言した。


「それじゃあ今から修理を始めますね! クワガタくん、ボクについてこれますか?」

「キリリ」


 ウィルに返事をした機械クワガタは、六本の脚で身体を持ち上げるとぎこちなく彼の後に続く。


「よしよし。そうです、ガレージに入ればキミを直してあげられます」


 そのままウィルは機械クワガタをガレージに誘導していった。


「ウィルもさすがだな」


 何気なく呟いた私に言葉を返したのはカレンである。


「あの子機械のことになると誰よりも熱くって、それでいて優しいんだもの」

「あいつがいてくれるだけでオレらのジープも気持ちよく走り続けられてるんだもんな」


 やはりウィルも仲間として彼らに信頼されているのだな。


 私が一安心した途端、立ちくらみを起こして足をよろめかせてしまう。


『わわっ、デュークってば大丈夫!?』

「大丈夫、と言いたいところだが今の戦闘でエネルギーを多く使ってしまったようだ……」


 もしかしたら新しい装備を使うにもエネルギーを消費してしまうのかもしれない。

 それにさっきの戦闘で受けたダメージもゼロではないだろう。


『ホントだ、ゲージが半分切ってるや。――ちょっと待ってて』


 そう言うとハンナは服の隙間からもぞもぞと自分の胸をのぞかせようとした。


「待て待てっ、いきなり何をするつもりなのだ!?」

『だってデューク、さっきアタシのおっぱい気にしてたよね?』

「だからと言ってな……」

『もー、デュークってば相っ変わらず矛盾してるよ~』


 頬をぷくーっと膨らませるハンナにそう言われては私も反論はできない。


 確かにエネルギーの充填方法が性的なものだ、だからと言って私とて彼女に恥ずかしい思いばかりさせるのも本望ではないのである。


 まあそんなこと言ってもハンナは納得してくれないだろう、それならば代替案を出すまでだ。


「それならばハンナ。無理に露出はしなくてもいいから、その豊満な胸で目の前のコックピット内スコープを挟んでくれないか?」

『そんなんでいいの?』

「そうだ。露出するだけが男に対するご褒美ではないのだよ」


 もっともらしいことを言ってみたが、正直私もこんなこと体験したことがない。


『デュークがそう言うなら、アタシは全然いいんだけど』


 きょとんとしつつもハンナは豊満で柔らかそうな二つの膨らみで、私の頭に直結しているコックピット内スコープをもにゅっと挟んだ。


「むむっ!?」


 すると私の脳内にこれまで味わったことのない感触がダイレクトに伝わる。


 女の子の胸というのは、こんなにも柔らかくて温かいものなのかっ。


 ハンナの胸がスコープを挟んでむにむにと変形する様子もまた、性的にそそるものがある。


『どう? これで元気になりそう?』

「ああ、いい感じだと思うぞ」


 その手つきは半信半疑といったところであるが、それでもハンナの施しは今の私にとってこれ以上ない至福だ。


『元気にな~れ、元気になあれっと』

「ああ、効く……」


 なんだかマッサージチェアに腰かけたおっさんみたいで恐縮だが、それでもこの快楽は他に替えがたい。


 風のようによく通るハンナの声を聴きながら快楽に浸るのも乙なものだ。


 モニター越しに彼女を見つめていると、その胸元が次第に赤くなっていくのが目に止まる。


「ハンナ、その……胸はヒリヒリしないか? 無理はしなくてもいいんだぞ?」

『あ、ホントだ。いつの間にかおっぱいが赤くなってる。だったらっ』


 続いてハンナがウエストポーチに手を伸ばして、そこから何かで満たされた小瓶を取り出した。


「それは?」

『これ傷薬なんだけどね、ちょっとヌルヌルしてるからローションとして使えそうかもっ』


 そう言うなり彼女は傷薬と称した液体を胸元に垂らす。


『おお! これならおっぱいも痛くないよ!』


 もはやローションとして使われる薬でハンナの胸がニュルニュルテカテカになって、こちらとしてはさらに背徳感を感じるぞ。


 そうして私はハンナにこのちょっとエッチなマッサージをしてもらい、エネルギーを充填するのであった。

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