ハンナの仲間たち

 はにかむハンナの前で、仲間と思われる三人は口をあんぐりと開けていた。


「ハンナ、お前が操縦してたのかよ!?」

「それならそうと早く行ってくれればよかったのにっ」

「え~、最初からアタシだって言ってたよ~?」


 ぷくーっと頬を膨らませるハンナに、三人は苦笑する。


「あ、紹介するね。ボギー、カレン、ウィルだよ。アタシこの三人と仕事をしてるんだ~」


 ハンナの紹介で、ツンツンヘアーの少年がボギー、長髪の少女がカレン、小柄な少女がウィルという名前であることが分かった。


 ボギーは黒いシャツに金属製の防具とベージュの長ズボン姿で、黒髪ロングのカレンはへそが露出するグレーのインナーに褐色のジャケットと紺色のミニタイトスカート姿。

 そして桃色をしたショートカットの頭に大きな赤いリボンをつけたウィルは白くふんわりとした服にえんじのかぼちゃパンツを着ている。


 三人とも身軽そうな格好をしているな。


 おっと、私からも自己紹介をせねば。


「初めまして、三人とも。私はデュークだ、よろしく頼む」

「ちょっと待って、今この機械しゃべらなかった!?」

「最初からしゃべってましたよ、カレンちゃん」

「それでハンナ、なんでお前そんなのを連れてきたんだ?」


 少し虫の居所が悪そうなボギーに、ハンナは笑いながら説明を始めた。


「実はいろいろあってね、かくかくしかじか……」

「――なるほど、はぐれてる間にそいつを見つけて持ち主になったわけか」


 その簡易的な説明で分かったのか!?


 そんなことで少し驚いていると、ハンナがみんなにこんなことを訊ねる。


「それでみんな、調査で何か変わったこととかない? アタシが調べた限りだと犠牲者もいないみたいだし、少し山肌が崩れたくらいだったよ」

「こっちもそんな感じね。調査も一通りしたし、あとは帰りましょ」

「ボクもうくたくたですよ~」

「ふんっ、これくらいで弱音はいてたら先が思いやられるぜ」

「そんなこと言わないの、ボギーっ」


 悪態をついたボギーをカレンがたしなめたところで、ハンナが再び私のコックピットに飛び乗った。


「それじゃあみんなで町に帰ろ~!」

「おい待てよ、置いてくんじゃねーって!」


 ハンナの操縦で私が歩きだすと、ボギーたちも慌ててジープを走らせる。


『ちょっとー、みんな待ってよ~!』


 走り出したジープにすぐ追い抜かれたので、私も駆け足で進むことにした。


 ジープと並走していると、ポツポツと他の車を目にするようになってくる。


 その車を運転してる一人一人が、私を見てビックリ仰天していたが。


 私のような存在は他にいないのだろうか?


 少し走ると荒野の中にやや寂れた感じのビル郡が見えてくる。


「あれが町か?」

『そうだよ~。アルバスタウン、アタシたちが拠点にしてる町っ』


 ハンナからの説明を受けているうちに私は、ボギーたちのジープと一緒に町へ足を踏み入れた。


 町の中は道路が張り巡らされていて、私にしてみればレトロな車がいくつも行き交っている。


 そんな車の数々に混じって走っていると、私の前でボギーたちのジープがいつの間にかある小さな建物の前に停まっていた。


『もういいよデューク、そろそろ下ろしてね』

「分かった」


 大きな頭を下げると、キャノピーを開けたハンナがひょいっと身軽に下りる。


「それじゃあアタシたち調査の報告してくるから、デュークはここで待っててね」

「分かった」

「ほら行くぞハンナ。お前が迷子になってたせいでオーナーを待たせてるんだっ」

「それもそうだねボギー、ごめんごめんっ」

「ふんっ」


 軽く詫びるハンナに素っ気なく鼻を鳴らすボギー。


「まあまあボギーくん。ハンナちゃんが無事に戻ってきたんだからそれでよしとしましょうよ」

「ウィルの言う通りよ。いつまでも腹を立ててたら胃に大きな穴が空いちゃうんじゃないかしらっ」

「っ、余計なお世話だカレン!」


 ウィルとカレンの二人がなだめようとするが、ボギーは相変わらず機嫌が悪いようで。


 そんな彼の肩にハンナが肘をかけた。


「迷子で待たせちゃったアタシが言うのもあれだけどさー、さっさと報告済ませてパーっとやっちゃお? そうすればイライラも消えると思うからっ」


 彼女の気さくなフォローにボギーが軽く舌打ちをするも、それ以上毒をはくこともなく。


 そうしてハンナたち四人は建物の中に入っていった。


 しばらく待っていると、建物から出てきたハンナたちがビシッとした制服のようなものを着た女性を連れてくる。


「これが持ち帰ってきたものですか。ずいぶんと大きいですね~」


 女性は黒縁の眼鏡をくいっと指であげて感嘆の声を漏らした。


 彼女は仕事の関係者なのだろうか、巨大な恐竜型機械の私を入念にチェックしている。


「それでは調査お疲れさまでした。少しの間だけこちらで預からせていただきますので、ハンナさんだけは残ってくださいね」

「は~い」


 こうして私はハンナと一緒に建物の裏に連れていかれた。 

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