第一部・第2話

 ナツメが国軍に入隊したのは一六才の歳だった。

 孤児院には四才から。

 両親の面影は微かに残るくらい。顔も満足に覚えていない。

 孤児院では無口で感情の薄い子供だと言われて育った。友達がいないまま年齢だけを重ねていく。友達の作り方すら分からない。なぜ友達が必要なのかも分からない。

 八才の時、ナツメは引き取られた。

 都市部の街ではあったが、決して裕福な家庭ではない。

 父は民間部隊の兵士。母は専業主婦だが、たまに近くの店まで働きに出ていた。

 引き取られたことで名字も変わる。

 義理の父と母は優しい人達だった。

 子供が出来ないことで孤児院を周り、やっと気に入った子供を見つけたのがナツメだった。

 どうして自分を選んでくれたのか──とうとう聞くことの出来ないままだったが、義理の両親とは言っても、貧しいながら、精一杯自分を育ててくれたことはナツメも感じていた。

 そして、幸せだった。

 実の両親がどうして自分を捨てたのかは分からない。

 その行動に愛情があったのか、無かったのか、それはもう知り術のないことだ。ナツメ自身も知りたいとは思わなかった。

 新しい両親の元で、ナツメは何も不満を感じなかった。

 むしろ、仕事で国軍と関わることもあった父のストレスが心配だった。日々、愚痴も増えていく。しかし、それで家庭にヒビが入ることもなく、ただナツメは何も出来ない自分の幼さを恨んだ。

 戦況が悪化していくことで、当然それは経済的な不安も生み出す。物価の高騰から貧しさは益々圧迫されていった。

 ナツメも、次第に両親の溜息を聞くことが増えたような気がしていた。肌で感じる暗い空気が増えていく。

 義務教育を卒業し、高等学校へと進む段階で、ナツメは徴兵制度への応募を決意した。

 国軍への入隊は、収入の安定を意味した。最初の三年間の訓練過程でも、今の家計を助けるには充分すぎる給料が出る。

 やっと両親を助けることが出来る。

 やっと両親に恩返しが出来る。

 人付き合いの分からない自分を、家族というものを知らない自分を、愛情を持って育ててくれた。

 もはや義理ではない。

 本当の両親だと思って生きてきた。

 何としても助けたい。

 しかし、そんな両親の反応は、期待とは真逆だった。

 国軍に対して悪いイメージしか持っていない父から、もちろん賛成などされるはずもない。

 しかし父も母も、それに強く反対できるような生活水準ではないことも分かっていた。国内、しかも狭い地域だけが活動区域の民間部隊の給料は次第に下がっていた。母も働き口を無くし、もはや食べていくことも大変な状況だった。

 ナツメは訓練施設に入ると、給料の大半を仕送りへと回した。

 自らは最低限の生活費だけで寮生活を続けていける。

 困りはしない。

 他の女性隊員のようにお洒落を楽しむことが出来ないだけ。

 元々、それほど興味があるわけでもない。

 他の隊員のように休日に遊びに行くことも無い。

 元々、友達を作ることは得意ではない。

 しかし孤児院にいた時と変わったと自分でも感じることがある。あの頃は友達を欲しいとすら思わなかった。しかし両親に育てられていく中で、友達というものの意味を考えるようになった。

 同時に、寂しさを学んだ。

 幼い頃とは違い、他人と話すことに抵抗はない。しかし本気で友達と呼べる相手はまだいない。しかし積極的に友達を作ることにはまだ迷いのようなものがあった。元々孤児であったことを負い目と感じているのか、誰に対しても自分の過去を語ろうとはしなかった。

 休日──。

 寮の食堂も閉まってしまうため、こういう時だけ、ナツメは寮の近くのパン屋まで足を運ぶ。田舎の訓練施設に併設する寮。しかも街中ではなく郊外。歩いて行けるのはその店くらいだ。元々少食のせいか、一日分と言っても大した量ではない。

 寮に残る者はいない。実家に帰る者。寮の仲間、もしくは外の友達と出かける者、様々だ。

 もちろんナツメも声をかけられたことはある。しかしその度に適当な理由をつけて断っていた。お金の無いことを理由にしなかったことは勿論だが、やはり、軍人であることに馴染めなかったのが一番の理由だろう。

 両親に喜んで欲しかった。

 両親を助けたかった。

 また両親に会いたい。

 しかし今は、両親の反応が怖くて帰ることが出来ない。

 自分は間違っていたのだろうか……。

 入隊の最初の動機すら揺らいでしまう。

 もしかしたら、自分を救ってくれた両親を……裏切ってしまったのかもしれない……。

 そんな生活が続いて数ヶ月、ナツメは休日に寮に残っているのが自分だけではないことを知った。

 いつものようにパン屋の紙袋を抱えて寮の門を潜り、すぐに現れる小さな中庭で、彼女は走っていた。

 短い距離しかなかったが、軍服のまま、そこを何度も繰り返し走っている。

 何をしているのか、もちろんナツメには不思議でしかない。

 そんな呆然と立ち尽くすナツメの姿に気が付いた少女が、走るのをやめて声をかけてきた。

「なに?」

 おそらくナツメと同じくらいの年齢に見える。低い身長。ボーイッシュな短髪の綺麗な顔立ち。

 しかしその鋭い目のせいか、少女というには大人びている。

「あ……ごめん」

 ナツメは話しかけられること自体が苦手だった。誰に対しても、いつも一歩引いてしまう。

 そして、辿々しく応える。

「……誰も、残ってないと思ってたから……」

「いつもいるよ。訓練を休むと体が鈍る」

「いつも?」

「やっと最近、湿度が落ちてきた。走りやすい。後はトレーニングルームがあるから問題ない」

「……そうなんだ」

「あんたは? どうしてここにいるの?」


 ──どうして……?

 ──どうして、いるんだろう…………


「……行く所が……なくて……」

 いつの間にか、ナツメは呟くように口を開いていた。

「私は……ナツメ……あなたの名前は?」

 少女は体をナツメに向けて応えた。

「……ティマ…………」





「私がつけたの……その名前……」

 ナツメのその言葉に、シーラはラップトップに落としていた視線を再びナツメに戻した。

 ナツメは、弱々しい目を落としたまま続ける。

「ティマは輝いて見えた……いつも成績が良くて……強くて……でも周りの何も知らない連中は彼女を嫌った……付き合わないように忠告してきた奴もいる…………」

 シーラにはナツメの目の色が少しだけ変わったように見えた。

 ティマのことをナツメが語るのは初めてだった。

「ティマは私にとって〝天使〟だった……でも彼女の過去を聞いたのは戦場に来てから……ティマが人を殺すところを初めて見てから……人間には見えなかった……怖かったの……」

 ナツメの体が微かに震えていた。

 それに気が付いたシーラがやっと口を開く。

「ナツメ……休んで」

 ナツメは黙ったまま、後ろのスライドドアへ体を向けた。

 一時間後──

 スコラとチグの哨戒が終わる。

 全員が少しの休憩を追加し、車両、銃器の整備。

 その中、通常のレーダーチェックと共に、チグはティマが手に入れてくれた〝謎の物体〟を調べていた。

 チグは元々民間部隊の中で電子員に就いていた。

 コンピュータ関係の操作、整備。それに付随してコンピュータを使用した銃火器からドローンまで。担当できる分野は幅広い。今までレーダー員を中心にやっていたわけではないが、その知識と技術の高さから、即席部隊とは言ってもシーラにとっては心強い一人だ。

 ヒーナと違って命令にも素直──真面目な印象を受ける。

「これが透視映像です」

 装甲車の運転席と助手席の間の小さめのシートに座ったチグが、助手席のシーラにラップトップのモニターを見せて続ける。

「火薬類は無いように見えます」

「爆発物ではないってことね。でも、私は専門ではないけど、こんな機械?は見たことがない」

「私もです……何かの端末でしょうか…………」

 チグが軽い溜息をついて続けた。

「外装の素材は98%アルミニウム合金と考えていいと思います。ただ、我々が知っているデータの中にはありません。知らない素材であることは事実です」

「どこの国が作ったのか──構造のクセとかで想定は出来ない?」

「蓄積されてるデータは押さえているつもりですが……〝コレ〟はその枠を超えています」

「でも、地球に存在する素材で、かつ地球で製造されたから、だからここまでは分かったわけでしょ? つまりはどこかの国が作ったことは間違いない」

「開けることが出来ていないので分からないことはありますが、この物体からは微弱な電波が出ています」

「電波?」

「しかも不規則です。微弱すぎてレーダーにも引っかかりません」

「解析は?」

「進めてはいるんですが……まだ……」

「時間がかかるなら、暗号とか?」

「コンピュータとしては、小さな画像データの羅列として判断している可能性が高いんです」

「既存のテキストデータだって、文字なんて画像みたいなものよ──暗号用に新しい文字を作った可能性もあるわけね」

「しかし、ここにあるコンピュータでは今まで学んできたものの集積として答えを出すしかありません。本部の量子コンピュータがあれば……」

「続けてもらうしかないわね。誰かにこの情報は?」

「まだです」

「伝えて……専門的なことだとは思うけど、全員で情報の共有はしておきたい」

「分かりました」

 チグが情報の開示をしても、もちろん全員が理解出来ることは少ない。

 しかし、またいつ攻撃を受けるか分からない謎の兵器とあれば、シーラとしては他に選択肢は無い。

 シーラが全員に号令をかけた。

「三〇分後にここを出る。ルートを作っておいて。物資を補給出来そうな施設は押さえておくように」

 この地下に来てから、すでに五時間が経過していた。大きな集合住宅のようなビルの地下──周りの建物に比べたら、よく残っているほうだろう。

 すでに空が薄らと明るくなっている。

 それでも雨が止む気配はない。

 空は厚い雲で覆われたまま。

 太陽の位置も分からない。

 全員が装甲車に乗り込んだ。

 ナツメがエンジンをかける。

 いつものようにシーラがチグに声をかける。

「チグ──レーダーはどう?」

 反応が無い──。

「チグ?」

 再びのシーラの呼びかけに、チグの声が小さく応えた。

「……だめ……出れません」

 貨物スペースの全員が、ラップトップに視線を落とすチグを見た。

「どうしたの? チグ、報告を」

 シーラの語尾が強くなる。

 チグが応える。

「……ここの一番上に二〇機……ドローンです」

「屋上に⁉︎ 突然⁉︎」

 ナツメのその声の直後、全員が動いた。

 腰を浮かせてヘルメットを被り、銃を手にする。

 チグが続ける。

「エンジンがかかった途端にレーダーに浮かんで……でも動きはありません」

 シーラが冷静な声で口を開いた。

「エンジンに反応してから動かない──古いタイプね。高さの計測に時間がかかってる。相手の機体は──」

「出ました。速度的には振り切れる──かなり初期のタイプです」

 チグの声に、すぐ横のヒーナが呟く。

「兵士がいなくなってドローンだけとはね……」

 全員のヘルメットにシーラの声が届いた。

『チグは新しいルート作成──スコラは上の機銃を出して──ヒーナは後部ドアから自動小銃で弾幕の用意──ティマは?』

 全員がティマを見る。

 ティマは表情を変えないまま、いつものように冷静に返す。

「気付かれてることは間違いない。相手の散開の動きを見る。それから」

『分かった──チグ、ルートは?』

「送ります」

『スコラ──準備は?』

『今出たとこ。いけるよ』

『ヒーナ──』

「大丈夫。弾幕用の弾なら足りてる」

『よし────ナツメ、出して』

 キャタピラがゆっくりとコンクリートを削り始めた。

 チグがモニターに神経を集中させる。

 キャタピラの回転が速くなり、一瞬遅れて装甲車が飛び出す。

 同時にティマが動いた。

 かなりの揺れを全員が感じたが、それを感じさせない動きでサイドのスライドドアから外に出た直後、素早くドアを閉めたティマは屋根の上のスコラの横に陣取る。

 その片手には大型ライフル。

 まるで自動小銃のように軽々と持っている。

 驚いたスコラだったが、冷静に後方上に視線を送った。

 ヘルメットからチグの声。

『来ます!』

 ビルの上から、小型のドローンが沸いて出るかのように一気に地面スレスレまで。

 ヒーナの自動小銃の音が聞こえる。

 ドローンからの射撃はまだ届く距離ではなさそうだった。

「オート照準を切って──あいつらならマニュアルのほうが当たる」

 ティマがスコラの耳元で囁く。

 額から汗が流れ落ちるのを感じながら、スコラは応えた。

「……分かった」

 スコラが指示に従う。

 更にティマが続けた。

「まだ──もう少し──」

 引き金にかける指が、まるで自分のものではないような感覚──スコラは今までにない緊張を感じていた。

「距離は充分──スコラ──始めて──後は任せる」

 ティマのその言葉がまるでスイッチだったかのように、スコラは無意識に引き金を引く。

 雨が降り続いていたせいか、埃が舞い上がることはない。

 面白いように重機関銃の弾丸が当たった。

 ドローンが崩れ落ちていく火花が早朝の薄闇に広がる。

 薬莢が次々と装甲車からこぼれ落ちていく。

 やがて、ドローンの塊が崩れ始め、そして、一機、大きく上に飛び跳ねた。

 思わずそれを目で追うスコラ。

「だよね」

 横からティマの声が聞こえる。

 ティマは前方に体を向けると、屋根に腰を落として大型ライフルを構えていた。

 本来なら小柄の女性で支えられる反動の銃ではない。

 ドローンが一機──装甲車の前に──

「ナツメ! そのまま!」

 ティマは叫んだ直後に引き金を引いた。

 重機関銃並の低音が響き──ドローンが砕け散る。

 煙に包まれた薬莢がスコラの足元まで転がるが、スコラはそのまま。

 ──私の敵は後ろ────

 スコラは撃ち続けた。

 しかし、一機がすり抜ける──素早くすぐ後ろまで──

 ヒーナの自動小銃の音が激しくなり、その一機を地面に叩きつける。

『まだ‼︎』

 ヒーナの声がヘルメットから響いた直後──最後の一機がすり抜けた。

 早い──スコラの高さで、その横を一気に前方へ──

 緊張が走る──

 スコラからは、それは一瞬でありながらスローモーションのようにも見えた。

 助手席のシーラの横を追い越す。

「ナツメ! 回せ!」

 ティマの叫びと同時にシーラの声。

『右!』

 車体が大きく右に旋回し、同時にシーラが自動小銃で応戦するが、ドローンの自動小銃も狙いを定めていた。

 突然、シーラの目の前で、ドローンが大きく歪む。

 ティマのライフルからの二発目で、地面に砕け落ちる。

 装甲車は動きを止めていた。

 助手席を見ながら顔を歪めたナツメが叫ぶ。

「チグ!──ドローンは!」

『全機落としました! 周囲にレーダー反応無し!』

 ナツメが続けて叫んでいた。

「スコラ! 負傷者‼︎ スコラ‼︎」

 スコラが屋根から飛び降りる。

 ぐったりとするシーラの顔を見るなり目の色を変え、助手席のドアを勢いよく開けた。

 大きく目を見開くが、直後叫んでいた。

「中へ! ヒーナ! 手伝って!」

 あくまで冷静に、スコラは救護手順を踏んでいく。

 その後ろでナツメが叫ぶ。

「チグは哨戒! 近くに隠れられる所がないか探して」

「……了解!」

 応えたチグは震える手でラップトップを操作する。

 貨物スペースに救護用の担架を吊り下げ、簡易ベッドとした。

 右肩に一発、腹部に一発、左太腿に一発、いずれも弾は貫通。

 出血が多いため、消毒と止血に続いて輸血も開始。

 痛み止めも打ったためか、シーラは意識のある状態で落ち着いていた。

 チグの見つけた建物の中に装甲車を隠すと、雨が止む。

 ライフルを持ったまま哨戒に出たティマを除いて、全員が貨物スペースにいた。

 スコラはシーラの横に付いたまま、輸血用パックや包帯のチェックを繰り返す。

 その後ろでスコラの助手を務めていたのはヒーナだった。衛生兵の経験はなかったが、訓練施設で習った軽い知識はあった。しかし誰の指示もないまま、ヒーナはスコラのサポートをしていた。

 ──いつもあんなに反発してるのに…………

 ナツメはそんなことを思いながら、口元に軽く笑みを浮かべ、そして開いた。

「落ち着いた?」

 スコラが振り返らずに応える。

「……大丈夫……これなら……さっきやっと眠った……」

「そう……よかった」

 しかしナツメは、突然に自分の左腕に違和感を感じた。

 見ると、いつの間にか軍服の左腕の袖が血に染まっている。それを見て呟く。

「あれ……?」

 あっという間に鈍い痛みが左腕を襲った。

 ナツメが顔を歪め、それを見たヒーナが口を開く。

「ナツメ──あんたそれ……何やってるの!」

 その声に振り返ったスコラがナツメに駆け寄ってヒーナに顔を向けた。

「救護ボックスを──」

 ヒーナが素早く動く。

 崩れ落ちるように腰を落としたナツメが、かぼそくなった声で口を開いた。

「気付かなかった……そんなもんなんだね……急に痛くなったよ……ごめん」

「大丈夫。左腕だけみたい──貫通してる。シーラだけじゃない──あなたも大事」

「……ありがとう……スコラ……」





「常に背筋を伸ばしなさい」

 母のその声質だけで、五才のシーラはいつも体の中心に嫌な緊張を感じた。

「人となりを作るのは、立ち振る舞いです」

 これが、母が祖母から譲り受けた口癖。

 同時に、シーラがこの世で最も嫌いな言葉。

 学校に通うようになるまで、シーラは家の外をほとんど知らずに生きてきた。

 家、家族が総て。

 何代も続く軍族の家に産まれ、父、祖父、兄共に国軍の幹部の立場にいた。

 裕福な家に育ち、容姿は淡麗。

 何不自由ないはずの、理想的な人生。

 しかし、幼い頃から、家族での楽しい思い出など記憶にない。

 父との思い出、母との思い出、兄との思い出、思い返せば、まるで軍隊のような家族。

 厳しいルールの中で、自分の感情を表に出すことは許されず、勉強の毎日。

 それが普通の家族というものではないということを知ったのは、義務教育校に通うようになってからだ。少しずつ世の中に触れていく中で、自分の中の何かが崩れていき、家族への反発心も生まれる。しかし、それはことごとく砕かれた。

 ルールに従うことを求める自分と、それに抗おうとするもう一人の自分。

 毎日繰り返される母の口癖は、やがてシーラの頭の中で毎日木霊していく。

 何度か母に聞いたことがあった。

「わたしは軍人にならなきゃいけないの?」

 質問を許されない世界での、僅かな反抗。

 決まって母はシーラを見下ろし、冷たい目で応えた。

「あなたはそのために産まれた。それ以下でもそれ以上でもありません」

 〝母〟というものが、本来はもっと何かが違うものなのだろうと、その頃のシーラはすでに分かっていた。

 いわゆるエリートコース。

 高等学校を卒業後、当然のように防衛大学へ行き、首席で卒業。女性幹部候補生としては成績は歴代トップ。

 二四才で正式に入隊後、防衛省へと配属される。

 血筋のお陰で上からの受けもいい。

 しかし、それはシーラにとって苦痛でしかなかった。

 防衛省で二年が経とうとする頃、当然のように〝結婚〟の話が囁かれ始めるが、そのことから逃れるようにシーラは部隊への転属を願い出る。

 〝女〟であることを否定されて育てられてきた自分に、家族は〝女〟になれという。

 女性らしさというものがどんなものなのかも知らない。

 しかしまるで家族に反発するかのように〝女らしさ〟を追い求めてきた自分もいる。

 軍人であり、女でありたい。

 決してそれは、相容れないものではないはず。

 家族からの反発があることは想定していた。

 シーラの家族へのささやかな反抗──。

 しかし、それに反して、なぜか家族はそれを受け入れる。

 結局シーラは、父の〝余計な口利き〟によって無難な部隊へと配属されることになった。どこまで行っても呪縛から逃れられない恐怖と絶望感。

 定期的に実家にも帰される。それは軍部を掌握する祖父の意向でもあった。

 しかしシーラには防衛相を通じたコネもある。人事部を経由して、直接最前線の部隊への転属を強行する。

 最前線の特殊強襲部隊──国が〝捨て駒〟を用意して編成をするくらいの危険な部隊だ。

 それが発覚したのは、部隊遠征から三日振りに家に帰った夜、人事の定期通達を見た父との食卓だった。もちろんシーラは、それが家族で最後の食事になることを知っている。

「どういうことだ? シーラ……」

 父の声がいつもと違うことが分かった。

 初めての父親の声。

 父とは離れた席の母が、いつもの冷たい口調のまま言葉を繋げる。

「シーラ、説明しなさい」

 シーラが、鍛えられた、冷静な口調で応える。

「通達の通りです。私は最前線に配属されます──」

 その言葉が終わる前に父親は口を開いていた。

「お前はそれがどういうことか──」

「軍人として──」

 シーラが父親の言葉を遮るようにして続ける。

「その使命を全うするのみです。私は軍人として育てられました。父と母が夕食で──間に三つも席を離して座るような、この家で──」

 シーラはその直後、母の表情が曇るのを初めて見た。

 父も母も、始めて娘の前で苦悩の表情を見せている。

 その時、初めてシーラは両親と向かい合っている気がした。

 しかし、父も母も、視線を落としたまま。

 決してシーラと目を合わせようとしない。

 思い返せば、いつもそうだったのだろう。

 家族から、自分への愛情というものを感じたことがない。

 家族は常に教育係だった。

 母と一緒に寝たことすらない。

 父に甘えた記憶がない。

 自立心という言葉で、いつも一人で耐えることを教え込まれた。

 従軍エリアが他国になることも多い。実家に帰ってくることなど、早々出来る配属先ではない。

 家から、家族から開放されたかった……。

 防衛大学での成績、数年の防衛省勤務、数ヶ月の部隊経験──いきなり副隊長の位置に就任出来たのはエリート扱いとしては当然だった。やがて隊長の怪我での除隊で、そのままシーラは隊長へと昇格する。


 女であることよりも、家族への復習…………


 そんな頃にシーラの部隊に配属されてきたのがスコラだった。

 最前線の部隊からではあったが、衛生部隊からの部隊の再編成に伴う人事異動。

 部隊の移動直前に着任の挨拶に来たスコラのことを、シーラは忘れたことはなかった。

 小型の指揮車の助手席に乗り込みながら、目の前で敬礼をするスコラにシーラが尋ねる。

「最初から最前線を希望したようね……スコラ少佐。それでその若さで早くも少佐か……どうして?」

 すると、真っ直ぐシーラの目を見ながら、スコラがはっきりと応える。

「家に帰りたくなかったからです。二度と両親には会いたくありません」

 ふざけてなどいない。

 その目は真剣だった。

「そう……分かった。衛生隊員としての手腕を期待する」

 軍人として、感情を表に出したことはなかった。

 〝立ち振る舞い〟を重んじて、上官として作戦に邁進してきた。

 周りからの期待の目も知っている。

 そんなシーラが、軍人として初めて感情を揺さぶられている。

 スコラは、いわゆる中流階級の出身だった。

 しかし、その家庭環境は明るくない。

 幼い頃から両親が仲良く接しているのを見たことがない。毎日のように暴力を振るう父と、それに虐げられる母を見てきた。スコラ自身も痛みが日常と化していた。

 誰も助けてはくれない毎日。

 父からは言葉にならない暴力。

 母からは存在を否定される暴力。


「あんたなんか産まれてこなければ……」


 母のその言葉は、物心が付いた頃から、浴びせられない日はなかった。

 その繰り返しの中で、両親どちらに対しても、感情を殺すほうが無難であることを学んだ。

 高等学校の卒業と同時に入隊。

 それ以来、両親には会っていない。

 入隊直後、訓練施設に入ってすぐ、両親が離婚する。戸籍上の親権は母親。

 スコラは、それを伝える母親からの手紙を、一読して破り捨てた。ゴミ箱に捨てたその紙切れを拾い上げ、床に叩きつけて踏みつける。

 なぜ涙が出てくるのか、スコラには分からなかった。

 自分が何を悲しんでいるのか、自分の感情が分からない。

 感情の行き場を見失っていた。

 何かに取り憑かれたような訓練の終了と共に、当然のように最前線への入隊を希望したスコラは、訓練課程で好成績を収めた衛生部門へと配属される。しかし物足りなさも感じていた。自分の中に湧き上がってくるものがある。

 それは自殺衝動だろうか。

 それとも殺人衝動だろうか。

 決して先陣を務めることのない衛生隊員として、その衝動はしだいに大きくなっていく。

 全ての兵士がそうであるように、衛生兵も上官の指示によって初めて動く。

 しかしその日のスコラは違った。

 先陣部隊が次々と銃弾に倒れていく光景を見ると、無意識に体が動いていた。

 誰の声も耳に届かない。

 いつの間にか、部隊の最前線の中で、何人もの兵士を救っていた。

 同時に何人もの敵兵を撃ち殺していた。

 いつの間にか、他の衛生兵は誰も近づけない現場で、自分の命を賭けていた。

 敵の物とも、味方の物とも分からない血だらけの姿でスコラは戦列に戻る。そんな姿を目にした部隊長は、何度目かに呟いた。

「……悪魔か……」

 スコラがその名を持つことを、もちろんシーラも事前に聞かされていた。

 命令を無視し、人を殺し、人を救う──どれだけの兵士だろうかと、シーラにももちろん興味はあった。命令に従いもしないのに、部隊での立ち位置は失わない。最悪の場合、強制除隊されてもおかしくはない。しかし、それを補えるだけの戦歴──エリートコースでもないのに若くして少佐まで上り詰めた。しかし一兵卒。部隊を任されることは無い。


 ──家に帰りたくない……本当にそれだけ…………?

 ──家に帰りたくないのは……私も同じ…………


 部隊にとって〝天使〟か〝悪魔〟か──

 その判別の機会は思ったより早かった。

 シーラが部隊の全滅を覚悟した日──

 シーラが自らの死を覚悟した日──

 その日は、完全にシーラの作戦ミスだった。

 前方の敵部隊の猛攻に集中しすぎた結果、後方からのドローン部隊の襲撃に兵力を割くことが出来ないまま、囲まれ、孤立する。

 自らも何箇所か銃弾を浴びているらしい。

 体が動かない。

 銃を持とうにも力が入らない。

 すでに痛みは感じなくなっていた。

 周りからは悲鳴と怒号──。

 耳のすぐそばを、何度も銃弾がかすめていく。

 きっと、もうすぐ意識が遠くなっていくのだろう……そう思い、地面に顔を埋めた時、何かが体に覆い被さった。


 やけに熱い。

 生ぬるい……。

 ──……スコラ…………?


 何度も、ライフルの銃声が上から降り注ぐ。

 その振動が体を震わせる。

 痛みも感じないはずなのに、シーラの神経は何かを感じていた。

 やがて到着した応援部隊のお陰で撤退──僅かに生き残った兵士の中で、地面に立っていたのはスコラだけだった。

 血塗れのその軍服は、逆光で黒い──。

 自分の体の中に、スコラの指が入ってくるような、そんな感覚をシーラは抱いていた。

 重い瞼を開けた先には、真っ赤に染まったスコラしか見えない。

 もはや誰の声も聞こえなかった。

 そして、いつの間にか、無意識に口を開く。

「……ありがとう……スコラ…………」


 ……真っ赤な天使…………


 やがて数日後に部隊が再編成される時、シーラは真っ先にスコラを指名する。本来ならば、人事の決定権はシーラには無い。しかしシーラは直接上層部に掛け合っていた。

 今まで頑なに嫌ってきた〝コネ〟を使った唯一の事例でもある。

 その話は、やがてスコラの耳にも噂話として聞こえてくる。

 〝悪魔〟と言われた問題児の自分を、なぜ欲しがるのか……スコラの中に初めての感情が湧き上がっていた。

 編成直後、前線基地のテント──。

「どうして、私のような兵士を部隊に……」

 敬礼を解いて最初に口を開いたのはスコラのほうだった。

 それ自体が珍しいことだった。上官よりも先に口を開くのはスコラくらいのものだろう。

 ──この子らしい、かもね…………

 そう思ったシーラが応える。

「あなたは私の命を救った──それだけじゃ、いけない?」

「任務ですから」


 ──ちがう……?


「私は軍人として──」

「──いいわ。とにかく、あなたには感謝してる」


 ──もっと……何か…………


「スコラ少佐──あなたを副隊長に任命する。これからは私の右腕として任務に邁進してもらいたい」

 テントを後にしたスコラは、初めての感情を抱いていた。


 自分を認めてくれる人がいる…………

 自分を受け入れてくれる人がいる…………

 自分が求めていたのは、なんだったのか…………


 ──認められたかった……?

 ──求められたかった……?


 見上げた夜空が、滲んでいた。





 ティマが装甲車に戻った頃、時間はまだ朝──。

 哨戒に出て一時間も経ってはいなかっただろう。

 階級的に、シーラの次はスコラが中心になるべき状況だった。

 しかしスコラは衛生担当でもある。シーラとナツメが負傷している現状で、その責務は重い。

 装甲車のスライドドアを閉めながら、乗り込んだティマが口を開く。

「外は大丈夫そう。チグ──レーダーは?」

 すぐにチグが応える。

「大丈夫です。反応はありません」

 ティマはスコラの横にしゃがみ込んで声をかけた。

「シーラは?」

「大丈夫……落ち着いてる……」

 スコラはシーラから視線を外さない。

 ティマは近くに腰を降ろしたままのナツメに顔を向けた。

「ナツメは大丈夫そうね」

「私は腕だけ。問題ないよ」

 そう応えたナツメにヒーナが噛み付く。

「問題あるでしょ。誰が装甲車運転するのよ。整備だけならまだしもこんなクセの強い機体なんて──」

「ヒーナ」

 言葉を拾ったのはティマだった。

「あなたもこの装甲車の運転が出来るって──チグから──」

「チグ!」

 ヒーナの大声にチグが振り返る。

「あんたいつの間に──!」

 その声を遮ったのはティマだった。

「どっちにしても──しばらくは動けない……そうでしょ? スコラ」

 すると、スコラが背中を向けたまま応えた。

「そうね……休息も含めて、もう少し容態を見たい。チグ──レーダーの索敵を引き続き頼むわ。ティマは──」

「私は大丈夫。足手まといにはならない」

「うん……お願い。……ヒーナ──」

「仕方ないなあ」

 立ち上がったヒーナが続ける。

「運転席のシート調整くらいはしておくよ。ナツメより私のほうが身長低いし……」

「任せるわ」

 スコラの階級は少佐。確かに六人の中ではシーラに次いで二番目。しかし、一人の兵士としての実力を評価された昇進だった。リーダーとしての部分を見られたわけではない。

 正直、スコラの中には不安と同時に恐怖があった。

 今まで、シーラに寄りかかってきた自分がいる。そして、そんな自分を認めてくれた唯一の人がシーラだった。そのシーラが目の前で倒れている。しかも以前とは違う──補給物資のない孤立無援状態。

 国境まではまだ遠かった。

 数時間後、外がだいぶ明るくはなってきたが、未だ雲は厚い。

 そして、再び雨が降り始める。

 強い雨ではない。

 ほとんど音を立てないような、そんな雨だった。

 しかし、それは同時にティマの索敵能力を微弱ながら鈍らせる。

 あまり大きくないビルの一階──それほど広さもなかった。決して隠れるのに適した状態ではない。誰もがそれを感じていた。

 その中で、ティマはレインコートを着て外に控えていた。

 空には微かに太陽の位置がわかる程度のぼんやりとした明かり──だいぶ高い。

 厚い雲と連日の雨のせいか、風が冷たく感じられる。

 装甲車の中では、チグがレーダー索敵と並行して〝謎の端末〟を調べている。

 微弱な電波をコンピュターが読み取り、蓄積されたデータからその輪郭を見つけ出そうとしていた。コンピュータにとっては、それが新しいものかどうかを判断する基準は存在しない。今まで学習したデータと照らし合わせるだけだ。その電波に乗っているものが画像なのか音なのかすら分からない状態で、その解析には時間が必要と思われた。

 レーダー索敵と並行するため、チグは二代目のラップトップに解析作業を行わせていた。そのまま基本的にはレーダーに注視する。ティマのような存在がいたとしても、戦力にマイナス要因がある状態では索敵の重要度はいつも以上に増していた。

 外で索敵を続けるティマのヘルメットにスコラの声が届く。

『ティマ──夕方になったら──薄暗くなったら、ここを出よう』

「シーラは?」

『大丈夫──思ったより回復は早そう』

「もう少ししたら一度戻るよ」

『チグにも動きがあったみたい』

「分かった」

 ティマが装甲車に戻った時、チグはラップトップの前で体を震わせていた。

 それを後ろから見守るスコラが、ティマの姿に振り向く。

 ナツメとヒーナが装甲車の整備をする音が車外から聞こえる中、何かを理解して震えるチグと、それを懸命に理解しようとするスコラ。

「チグ、あの端末ね──何か分かったの?」

 ティマの声はいつも通り冷静だった。

 それがスコラにとってはありがたい。

 しかし、チグは振り向きもしない。

「チグ?」

 再びティマが声をかけると、やっとチグの声が聞こえる。振り向かずにモニターを見つめたまま。

「……コンピュータが……学習してる……」

「チグ」

 ライフルを横に置いたティマが、チグの横に腰を落として続ける。

「六人の中でコンピュータに一番詳しいのはあなた……冷静に……分かるように説明して」

「……あの電波……コンピュータは言語として認識してる……」

「言語?」

「新しい言葉だと思ってる……それを今、学習してる……」

「コンピュータの解析ミスは?」

「暗号を解読出来ないのとは違う……人間が作る暗号には必ず規則性がある……コンピュータが作っても同じ……その規則性を見つけられずに、新しい言語だと判断した……」

 すると、スコラが呟いた。

「どこの国がそんなものを……」

 それにチグが即答する。

「どこかの国なら、その国ならではのクセがあるはず……コンピュータは、どこにも属さない言語だと判断した……」

 ティマが立ち上がり、言葉を繋げた。

「私達は戦勝国がどこかも知らない──勝ったのはその国かもね」

 スコラも立ち上がる。

 外が薄暗くなり、僅かに外から差し込んでくる陽の光が柔らかくなっていた。

 スコラが車外に声をかける。

「ナツメ、ヒーナ──整備はどう? もう行ける?」

 その声を隣で聞いていたティマは、スコラに僅かな焦りを感じた。

 車外からナツメの声が聞こえる。

「大丈夫。問題ないよ。行ける」

 その声を背景に外まで、ビルの入り口まで歩いたティマを、ナツメが追いかけた。

「まだ雨降ってるんだ」

 振り返りもせずにティマが返す。

「うん……雨が止む前に、夜の内に次の場所を探さなきゃね」

「あとどのくらいで帰れるかな……」

「帰ったら……どうするの?」

 少し間を開けてナツメが応える。

「……家族を探すよ…………ティマは?」

 ティマは外を見つめながら黙っていた。

 ナツメの中に後悔の気持ちが生まれた頃、珍しく柔らかい声のティマが口を開いた。

「見つかるといいね」

 その二人の後ろ姿を見ながら、スコラは思っていた。

 堕天使と呼ばれた冷徹で最強の兵士と、その兵士と唯一心を通わせるムードメーカーの兵士。正反対な性格なのに、お互いに信頼し合っている。なぜ気が合うのか、スコラには理解し難かった。

 ただそれは、自分とシーラに関しても同じなのかもしれない──シーラに依存している自分に気が付いていないわけではない。しかしシーラにとっては、自分という存在はどんなものなのだろう。今までも考えなかったわけではないが、ティマとナツメを見ていると、それを更に強く感じた。

 ──私は、シーラに寄り掛かりすぎなのかもしれない…………

 ティマは体を回し、装甲車に向かいながら声を張り上げる。

「スコラ、行こう。夜の内に出来るだけ移動して、朝までに次の拠点を見つける」

 スコラはすぐに返した。

「分かった。行こう」

 間違いのないことは、ティマが信頼の出来る最強の兵士であるということ。

 そして、スコラが指示を飛ばす。

「チグは当面のルート作成、ヒーナは運転席へ、ナツメは──」

 一瞬だけ言葉を詰まらせる。

「──ティマと、外の警戒を」

「了解」

 即答するティマ。

 そのティマが、運転席に乗り込んだヒーナに、後ろから声をかけた。

「大丈夫。チグが作ったルートに無駄は無い。ナツメが認めてる。さすがあなたの相棒だよ」

「……うん……そうだね…………そうだよね」

 正直、ヒーナは不安と恐怖で押し潰されそうだった。

 ティマの言葉に気持ちが込み上げる。

 そして、スコラの声が後ろから響いた。

「いいわヒーナ、出して」

 ギアを入れる。

 ゆっくりと、ヒーナはアクセルを踏み込んだ。





〜 第一部・第3話へつづく 〜

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る