5ー6 

 9年前


 1月1日に、正式に音楽制作会社のルピアーノと、ルピアーノ傘下の所属事務所ルピアーノプロモーションと契約を結んだ。


バンド名の標記は、 Real

前嶋大輝 Daiki  ドラム リーダー

長谷川瞬 shun   ピアノ、ギター 編曲 

桜井龍聖 Ryusei  ボーカル

武内悠弥 U−ya   ベース 

須藤桂吾 keigo  ギター、ピアノ 作詞作曲 


芸名というのか、Realとしての活動は、名前をローマ字表記にするとかで、大文字と小文字の確認とか、いろいろ細かい部分を確認したりした。

ローマ字表記って言われてるのに、U−yaって書いてて、いいの?って思ったけど、スタッフさんスルーだったから、まぁいいのか~って、俺もスルーした。

契約するにあたって、いろんな規約があって、1枚1枚署名捺印した。


 それからは、毎日いろんなところへ挨拶まわりしたり、レコーディングしたり、MV撮ったり、本当に毎日が新しい刺激でいっぱいだった。


2月14日にシングル【YO・I・N】で、華々しくCDデビューさせてもらって、Realは1年目からすごく忙しかった。

俺たちは、ルピアーノ主催の、第1回目のバンドコンテストのグランプリということで、事務所が気合いを入れてRealを売り込んでくれた。

マネージャーの木村さんに言わせると、通常の流れで、ルピアーノからデビューするのとは、全然違っていたらしい。

俺たちRealは常に、こんなことは異例です!と言われていた。

俺たちにとっては、通常も異例も わからないから、ただただ与えられた仕事をどんどんこなしていくって感じ。

雑誌、新聞、TV、ラジオなどのメディアのインタビューの仕事を、山ほどした。

7月に2ndシングル、9月に3rdシングルを出した。これは、ガッチガチのハードロックにした。

歌番組にもたくさん出た。

5月に出した初めてのアルバムは、オールラブソング 【LOVESICKNESS】

LOVESICKNESSが年間セールス1位になった。

Realは、いろんな部門の新人賞をもらった。

俺 個人は、作詞家の新人賞と作曲家の新人賞までいただいた。

考えてみたら、俺って子供の頃から全然優秀でもなかったから、賞状とかもらったこと1度もなかった。

生まれて初めてもらった賞状が、作詞と作曲の新人賞2枚って、すごい嬉しかった。


 さっき、ラジオでも言ったけど、NHKの密着番組は、長野のじじばばもすごく喜んでくれた。

NHKが桂吾の番組を作ってくれるなんて!!って、年寄りにとっては、NHKはすごいらしい。

近所の人たちからも、見たよ~!須藤さんちのお孫さん東京で頑張ってるのね~って、声かけられたって。

俺としては、ほんと くっそつまんない番組にしちゃったと思っていたけど、俺がほんとに曲を作ってるかの検証が目的だったなら、ガッツリ作ってます!ってとこ見せられたってことか。

あの時は、セカンドアルバムの曲を作っていた。

ファーストアルバムがオールラブソングだったから、逆にラブソングはなしってことで、パンチのきいたロックにしようと、ガンガン ギター弾いて作っていたな。

今は、パソコンとかで割と簡単に楽譜も書けるようになったけど、あの時はまだ五線譜に手書きで書いてたからな。

歌いながら書いて、ギター弾いてみて、やっぱり変えるかって消して直してって、超アナログな作業をしてたよな~。


 この業界って、まだ全然わからなかったけど、俺はとにかく よく誘われた。

行くとこ行くとこで、名刺を渡される。

5人でいても、俺だけ渡される。

見た目がかっこいいとかなら、龍聖の方がいい男だろ。

なのに、誰も龍聖に名刺を渡したりしない。

これを、どう解釈したらいいんだろうって悩む。

全然嬉しいなんて感じなかった。

連絡してね!って。

俺のことなんも知らないのに?

あんたのことも、なんも知らないのに、連絡なんてするかよ!っていつも思ってた。


だけど、モテることはいいことだって、大輝は言ってくれた。

「桂吾、おまえってさ、自分で思ってる以上に魅力的ってことだ。

なんだろな~、引き寄せられんだよな。

俺がおまえを誘ったのも、なんかしんね~けど、引き寄せられたんだと思うし。

おまえは、初めて会って、名刺渡すような女は気にくわないって感じだろうけど、なんてゆうのかな~悪気はないぜ!きっとな!

だからって、手~出せって言ってんじゃねーよ!名刺を渡したくなっちゃうほどに、初見で おまえのファンになってくれたってことだな。

だから、まぁ、付き合うとかじゃないけど、気持ち的には、大事に思ってやれよ」

大輝にそう言われて、気持ちが楽になった。

俺は軽い男に見えて、この5人の中で、一番簡単に落とせそうだって、思われているんだと思っていた。

簡単に遊べそうな軽い男って。

まぁ自分でも、そう見せている部分もあるけど。

だけど、俺を誘ってくる女たちは、俺を応援してくれるファンなんだって思ったら、なんだかありがたいな~って気になった。

そう言ってくれた大輝にも感謝した。

さすがにリーダーだな、大輝は。



 







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