転生先がドッペルゲンガーだった俺。引継ぎないのに勇者の仕事なんて務まりませんよ!?

A

第1話 拝啓。女神さまへ

ヒロインの登場まで5話ほどあります。


また、ヒロインの雰囲気を最初に見てみたいという方は、

10話『氷の騎士』と12話『雪解け』

が対となったエピソードとなっておりますので、最初にここを読んで、こういう子が救われる話が読みたいんだという人はお楽しみいただけると思います。









寡黙なヒューマンの騎士は言った。


「なぜ頭を撫でる。貴方が以前『村人は功績を伝えるのに必要だから、ある程度は守れ』と言っていたから守っただけ。そこに特別褒められる理由などないはず。」




(なんなのだろうこの人は。今までは村人を守り過ぎると必要以上の仕事はするなと怒鳴りつけてきたのに。・・・・・・撫でられた瞬間、この胸に沸き上がった感覚が何かはわからない。しかし、嫌なものではないのは確かだ)










高潔なエルフの魔法使いは言った。


「ねぇ!あんたなんでさっきの戦闘で私を守ったのよ。そんなんで恩義を感じるとでも思ってるわけ。それとも前の記憶が混乱してるってのが本当なわけ?まあどっちでもいいけど。調子には乗らないでよね。」




(なにこいつ。何を考えてるわけ。今までは自分の身は自分で守れとか言って、こっちがどれだけ疲れ傷ついていても自分の手柄になるようなことしかしてなかったのに。・・・・・・今回のはけっこー危なかったから少しは感謝してあげるわ。本当に少しだけね。)










優し気な獣人の巫女は言った。


「これでまた街がひとつ救われました。やはり貴方様は真の勇者です。人々が正しく英雄を認識できるようになってきていて私も安心しています。」




(どうゆうことでしょう。もしや私が王国の間者だと気づいて点を稼いでいるのでしょうか。いや、それにしては、これまでと言動や行動が違い過ぎてあからさま過ぎる。これでは、まるで本当に御伽噺に出てくる、全てを救う英雄みたいな・・・・・・いけません、私は母と妹を守るために為すべきことを為さねば。希望に縋って何度も裏切られてきたでしょうに。)














拝啓。


うららかな晴れの日が続きますが、女神様におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。


あの転生の際、頂いた能力はとても素晴らしいものですが、非才の私には少々荷が重すぎたようです。


というのも私は今、あなた様に頂いたドッペルゲンガーの能力を使い勇者様に変身しているのですが、


これまで生死を共にしてきたらしい勇者パーティの仲間から冷たい言動や視線を日夜送られているからです。




偽物とばれ、ましてや魔物と分かった場合には悪即斬プレイが待っていることが容易に想像できるので、もちろん勇者○シヒコ系ではなく、勇者○トとかその子孫系でガンガンいこうぜってるんですが、どうも未だに勇者様になり切れておらず偽物と疑われているようです。




つきましては、まことに恐縮ではございますが、農民くらいのレベルに転生し直させていただきますよう、お願い申し上げます。


(あの女神、適当な仕事しやがって!!知らない人のフリなんてできるか!!!)

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