TS転生魔法少女ソレナンテ・エロゲ

どくいも

第1話

前世の私は雷に打たれて死んだ。


なお、原因は名もない神様。

自分が徳を積むためにほぼほぼ毎日地元の小さな祠に参拝していたのがどうやら、悪い方向に作用したらしい。

そのせいで、その名もない邪神に目を付けられ、ついでとばかりに殺されてしまったからだ。


『こちらの身勝手な願いで済まないが、どうか我が信徒とそして、世界を救ってくれ』


そうして、件の邪神に殺された先でこんなことを言われたのだ。

と言うのもこの邪神、この世界では名もない邪神に過ぎないがどうやら別世界ではぼちぼち力のある神だそうだ。

が、その別世界ではどうやら悪魔とかモンスターとかそんな感じの世界外からの侵略者によって、世界の危機とか人類の絶滅の危険とか、そういう問題が発生しているとのことだ。


「でも、たとえ世界の危機だからって、無関係の自分を突然殺すか?」


『もちろん、熱心な信者である貴様には悪いとは思った。

 しかし、それでも世界一つと信者一人ならワシは前者を選ぶ』


大変人間的な倫理観を持ってくださっているのは結構ではあるが、それの犠牲者が自分だというのだから救われない話だ。

で、結局この邪神様が言うには、このあとできるならここではない別世界へと生まれ変わり、この邪神の代行者としてその世界に侵略する化け物を退治してほしいとのことだ。

そんなこと自分にできるのかと思ったが、そこは神様パワーとかそういうので何とかなるらしい。

それなら自分でやれよとも思ったが、どうにも神様同士の決まりとやらでそういうわけにもいかないとのこと。

え、ならなんで俺を殺せたの?

自分に対する信者なら、あの程度のことはセーフ?

くそが。


「もし断ったら?」


『無論、我の信者とはいえ、その意志までは強制はできん。

 つまりはそのまま自然の摂理に従い、貴様の魂を輪廻の輪に戻す』


「つまり普通に死ぬってことですね、分かります」


残念ながらこちらに選択肢はないようだ。

かくして、自分はそのまま前世の世界では死亡し、いくつかの記憶と力を授かった状態で来世のいわゆる別世界へと生まれ変わった。

新しい人生、新しいからだ、新しい家族。

すべてが新鮮だが、複雑な気持ちで受け止めつつ第二の人生を過ごし、そして適齢期になったら、神の代行者としての使命をこなす。

無論、ここまでは文句はない。

いや、まったく無問題かと聞かれればそんなことはないが、まだ我慢ができる。


「そこまでです、悪党たちよ!」


お天道様のぼる真昼間。

悲鳴と気配をもとにたどり着き、そこにいたのは無数の妖魔に幾人もの被害者の姿。

幸いご老人はいないがそれでも男女大人子供合わせて少なくない数の被害者。

衣服は破れ、気を失い、あるいは半狂乱になっている残状。

そんな罪もない人々を貪りなぶる小柄な人型の化け物たち。

そして、そんな化け物に向かって立ち口上を述べる自分!


「罪もない人々を貪り襲う、悪鬼共め!

 貴様らの悪事もそこまでです!

 これ以上の悪行は、この私、冴える氷結、正義の魔法少女『ピュア・ダイア』がお相手します!!」


まず第一に、自分が少女、しかもよりによって魔法少女になっているという事。

うん、まだ、これはましだ。

第二の人生、すなわ齢〇十歳の元成人男性なのに、きゃぴきゃぴ(死語)ティーンの夢見る正義のヒロインの真似事をさせられている。

この事実は冷静に考えれば頭が痛くなるを通り越して、死にたくなる事実だがまだいい。


「ぎゃっはっは!魔法少女だぁ?」


「おいおい、随分とそそる格好をしてるじゃねぇか!

 お前が相手してくれるのかぁ……うおっ!!」


色々と、口うるさくわめく妖魔の足元に氷塊を炸裂させ、威嚇する。

自分の格好がいわゆる魔法少女な格好なのもまだ許す。

幸いにも、自分の魔法少女としての配属は【青】とか【水色】担当だ。

だからまぁ、ピンクやら黄色やらなんかよりは大分落ち着いて見えるんじゃないか?……いや、それでも十分つれぇわ。


「……っふ、ようやく来たか魔法少女!

 貴様が来るのがあまりにも遅くて……少々つまみ食いをしていたところだよ」


「それはつまり、無理やり無垢の市民の皆さんを襲っていた……ってことでよろしいのですね?」


「ふん、そんなもの言わずともわかるだろう?」


小さな妖魔たちの奥から、複数の裸の婦人を味わっていた大型の妖魔が現れた。

どうやらそれなりに知性が高いらしいが、品性は最悪のようだ。

そして、第3の不満点はこれ、どうしてこの悪鬼悪霊を発見次第即殺処分することができないのだろうか?

魔法少女の様式美とはいうが、それだって無垢な民間人の被害を度外視してまで行うことなのだろうか?

というか、このやり取りめんどい、不意打ちさせろや。


「くっくっく!我こそは、最強最悪の悪鬼なり!

 いずれはこの人間界を支配するが、手始めに、この地域の魔法少女である貴様を屈服させ、支配し、我がものとしてやろう!

 貴様はこの『ゴイッス・ロイエー』様の覇道の餌食となるのだ!」


その巨大な悪鬼がそう宣言すると、天が曇り、紫煙が漏れる。

その悪鬼の掲げられた両手の先に、目に見えるほど巨大な魔力球ができ、邪気が放たれる。

おそらくこいつはかなり強い妖魔なのだろう、それなりに距離が離れているはずなのに、こちらの肌がピリピリ震える。

周囲に小鬼が喚き、歓喜している。


(……そう、ここまではまだいい、まだまし……なんだだよなぁ)


いろんな意味で最悪な状況であるのに、目の前の光景を澄んだ目で見つめる。

いや、巻き込まれている側にしてみればたまったものではないが、まだここまでなら大分ましなのだ。

そう、今の状況は正しく正義と味方の戦い、場所が公園であることや自分の背格好を無視すれば、事前に神から伝わった通りの世界を救う正義と悪の戦い。

強制されながらも、日ごろ徳を積むことを生きがいとする自分としてはある意味では悪くない状況と言えるだろう。


「ぐっはっはっは!

 馬鹿め、もしや恐怖で足すら動かないか?

 さしもの魔法少女と言えど、我が魔力の前では無力であったと見えよう!」


……そう、この後あれさえなければ。

かくして、その大妖魔は魔力を貯めた巨大魔力級を振り落としながら、こう叫ぶのであった


「さぁくらえ魔法少女よ!

 これこそわが秘儀!

 



【らめぇ♥性感感度3000倍になっちゃう♪エロ爆大魔法】だぁあああああ!!!!」


――ご み か す め が!!!!!!


「ぐぺぁ!!!」


「お、おやぶううぅぅぅん!!!!!」


もう容赦なくその巨大な魔法級ごと、大妖魔の頭を切り裂き勝ち割る。

こちとら、元成人男性系魔法少女なのだ、いろんな威厳やら常識やらで、ぜっっっっったいにそんな攻撃をくらうわけにはいかないし、許すつもりもない。


「というか、その巨大な薙刀、いつの間に……」


「『マジカルステッキ』ですが何か?」


この悪鬼共、あんな攻撃やら一般人を【貪る(意味浅)】しているくせに変なところで教養はあるようだ。

しかし、どうやらその教養はある程度偏っているらしい。

最近の魔法少女は魔法だけでなく、素手や刀、何なら銃器だって使うんだぞ。

もちろん、自分の持つこれはただの【マジカル♪ダイヤ♦ステッキ】であり、薙刀なんて言う刀剣類とは別物なのでそこのところを気を付けてほしい。


「いや、どう見てもスッテキではないだろ、それ」


「お嬢ちゃん、銃刀法って知ってる?」


「うるせぇ、俺が【マジカル♪ステッキ】って言ったら【マジカル♪ステッキ】なんだ。

 分かったら死ねや」


「ぐああぁあああ!!!!」


「ご、ゴブリンAぇぇぇぇえ!!!!!」


「ついでお前も、いつまでもマッパで許されると思うなよ」


「ぐええぇぇええ!!!」


卑怯な精神口撃をする小鬼の唐竹割にして、返す刀でもう一匹も切り裂く。

そう、これが私の最大のお悩み。

なんとこの世界に侵略している化け物は【淫魔】と呼ばれる化け物であり、簡単に言うと、あれだ、そう、エロエロな悪魔どもなのだ。

もう少し丁寧に説明すると、この世界ではない魔界に存在する悪魔と呼ばれる化け物の一種で、そいつらは魔力とか精神エネルギーを食料としてる。

で、こいつら【淫魔】はその中でも特に、人間がエロエロエッチな気分の時の魔力とか精神エネルギーを好物として置き、そのためにわざわざ人間界に来て、人間を襲う(意味浅)そうな。


「……というか、そんなことするなら普通に合意の上でやれよ。

 探せばあるだろ、そういう仕事」


「いや、そういうのは全部枠埋まってて……おいらたちみたいな下っ端じゃ無理なんですよ」


「そうか残念だったな、じゃぁ死ね」


最後の一匹の首をマジカル♪ステッキで首はね、霞へと返す。

なお、こいつら【淫魔】は文字通りこの世の生物ではないため、基本殺したらしたを残さず砂のように崩れ消えるのが常だ。

実にファンタジックで、掃除いらずだ。

全部倒したのを確認し、ようやく一息つく。

そうして、天を見上げながら、思わずため息が漏れる。


「せめて、せめて、もうちょっと普通の、まともな敵が相手だったらなぁ」


かくして異世界転生した元成人男性『ピュア・ダイア』は、今日も【正義の魔法少女】として【淫魔】相手に奮闘するのでした。









なお、同時刻別の場所。


「んあああぁぁぁ♥♥♥」


「げっへっへっへ!魔法少女も一皮むければこんなものか!」


「っく、卑怯な、人質など……あああぁぁぁん♪♪」


別の相手をしていたはずの同僚魔法少女が、人質取られたとやらのせいで、触手巨大淫魔相手にひどい目に合っていた。

ちょっと無視するか写真撮ってSNSに上げるかを迷ったけど、普通に助けることした。

ガッテムシット。


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