ep.19

  授業の終わりを告げるチャイムが鳴り、先程まで気怠げにしていた生徒も揃って立ち上がり、生き生きとしている。

 静さんの家へ向かうため、教科書をさっさとしまう。桃華にそれじゃ、早めに帰るとは思うから、と一声かけて教室を出る。


 静さんに今から行きますね、と送っておく。すぐに既読がつきスタンプのみが帰ってきて、あんまり大変そうじゃないな、と思い苦笑する。

 早く行って早く帰ってくるか、と思い、少し早足でカフェへと向かった。


 

 カフェに着き、閉店中とは書かれているが店内へと入っていく。カウンターの奥に入って二階へと上り扉を開ける。


「お邪魔しまーす。 手伝いに来ましたよー」


「入っていいですよ、こっちの部屋に入ってきて下さい」


 静さんの部屋から壁越しに声が聞こえてくる。静さんの部屋まで行こうとすると、キッチンには溜まりにたまった食器、リビングには脱ぎ散らかされた服が散乱していた。その様子に顔を引きつらせ、一応ノックしてから静さんの部屋へと入る。


 部屋は明かりが消されており、モニターの光が静さんの顔を照らしている。相当集中しているのか、俺が部屋に入ってきたことには気づいていない。


「手伝いに来ましたけど、部屋の外のあの惨状は何ですか?」


 部屋の明かりをつけると、眩しそうに眼を細らせて俺に気づく。困った様に笑ってあの惨状の状況を説明してくれる。


「えーとですね…… イラストの締め切りが近くて、家事とかやる時間が無くて……いつの間にかあんな状況になっちゃいました… 」


 あはは… と苦笑をする静さんを見てため息をつく。お淑やかで頼れるお姉さんという勝手に作っていたイメージが崩れ去り、ポンコツなお姉さんというイメージが新たに作られていく。


「はぁ… それじゃあ、家事の方やりますから静さんは仕事の方やっててください」


 俺がそういうと少ししょんぼりした静さんがお願いしますと言っている。それを横目にキッチンへと戻り、溜まった食器をにらみつけ頬を叩いて気合を入れる。


「よし、やるか」


 そうつぶやくと、勢いよく食器を洗っていく。これでも、桃華が来るまでは家事を一人でこなしており普通の人よりはできる方なのでみるみるうちに食器が減っていく。30分程度で溜まっていた食器が洗い終わり、ついでにシンクの掃除もしておく。


 キッチンの掃除が終わり、一息つくと次の掃除場所のリビングへと眼を向ける。脱いだ服があちこちに散乱していおり、中には下着と思われるものもある。

 

 下着を男の俺に片づけさせて大丈夫なのか?と心配するが、静さんも俺を信用しているから頼んだんだろうなと思うと、何かをする気にもならない。


 (まずは散らかったを服を集めるところからはじめるか)


 そう思い、リビングに行き掃除を始めるのだった。

 

 


 

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