ep.13





 桃華に渡されたメモを見ながら必要な食材を買っていく。桃華と生活をし始めてから、料理のバリエーションが豊かになったのもあり必然的に食材の量が多くなる。


 以前買った時よりも重いビニールを持って、外も暗くなってきているので早足で家に帰る。

 ただいまーと言って家に入ると、夕食の準備をしている桃華がキッチンからおかえりなさい、と返してくれる。


「…宇津さん、今日どこ行ってたんですか?」


「ん、友達と駅の近くのカフェに行ってきたけど、どうかした?」


 キッチンの前を通ると白いエプロンをした桃華から急に聞かれる。


「……なんか、宇津さんから女性の匂いがしたので… 」


「あー、……今日は隣の席の橘さんと少し遊んできたからかな」


 特に何もしていないのに、桃華から圧を感じて焦ってしまう。桃華に何か悪いことしたか、と必死に考える。ヤバい、まったく思いつかない。昨日は普通に過ごして、今朝も特に不機嫌にするようなことはしてないはずなんだけど・・・


 焦って必死に考えている俺をみて、桃華がふふっと笑う。


「少しからかいすぎちゃいました」


「なんだよ…、俺がなんか桃華にしたかと思って驚いた」


 その言葉を聞いて安心して息を吐く。びっくりするから今後こういうことはやめてほしい。


「もう少しでご飯できますから、制服着替えてくださいね」


 はーい、と答えて制服を着替え、リビングに向かうと既に桃華が夕食の準備を済ませてくれている。


「あ、そういえば今日宇津さんのお父様から何か届いたんですよね」


「親父から?なんだろう…」


 夕食を食べ終わってテレビを見ながらゆっくりしていると、桃華が思い出したように言って小さな段ボールを持ってくる。


「事前に連絡は受けていたんですけど、箱の中身は開けてからのお楽しみって言われて教えてもらえなかったんですよ」


「あー親父そういうところあるからなぁ。とりあえず開けてみるか」


 段ボールを開けると、中にはリンゴのロゴで有名な会社のスマホが入っている。どうやら、親父から桃華への入学祝いらしい。


 桃華は中身を見て眼を輝かせて嬉しそうにしている。頭の猫耳がピコピコと動いていて可愛らしい。早く使いたそうにしていたので最初の設定をやってあげると、不慣れながらも楽しそうにスマホをいじっている。


 日常生活で使うようなアプリを入れてあげて、各アプリの説明をしてあげる。無料で通話トークができるアプリを入れてあげると、これでどこでも宇津さんとお話できますね、なんて言ってきてどきっとする。


 

 桃華はまだスマホを使っていたようなので、一声かけてから風呂に入って自室に戻る。少し勉強するか、とは思ったがやる気が出ない。少しだけ、とベットに飛び込むと急に眠気が襲ってくる。今日くらいはいいか、と自分に甘えて眼を閉じると意識が遠くなっていくのが分かった。

 




 



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