第46話⁂殺害犯人❓⁂



 実は万里子お嬢様にいつもピタリとくっ付いている2人組の護衛達。

 一体この護衛2人組は何者なのか?


 この滝という護衛は初美が、鎌倉に居る頃からのガードマンで、主に家の警備に当たってくれていた人物なのだ。


【ATホ-ム】社長の剛は、初美を致し方なくあんな形で放り出してしまった事への自責の念に苛まれて、ましてや、まだ35歳になったばかりの美しい元妻初美と14歳の女の子2人を、あんな北九州市小倉北区の決して環境が万全とは言えない所に居住するなど危険極まりない話。


 そこで居ても立っても居られず、滝に九州行きを頼んだのだ。

 天涯孤独の身の上と言ってはばからなかった38歳の滝には、実は若干知恵遅れの弟がいた事が判明したのだが、滝は唯一の兄弟、弟と2人暮しで{自分が九州に行けば弟はどうなる?}


 たった1人の弟の事を案じて、最初は二の足を踏んでいたのだが、「弟さんも一緒に行ってくれないか?弟さんも一緒に警備に当たって貰うという事で!」

 こうして弟の将来も保証されて、意気揚々とこの小倉北区に降り立った。


 実は滝は、以前からこの優しく美しい初美を密かに思い焦がれていたのだが、あまりにも身分違いな初美を、遠くから只々眺めるだけで我慢していた。

 だが、九州に越して来てからは、今まで抑えていた感情が一気に噴き出してしまった。


 万里子お嬢様は、〷中学に転学してからというもの受験生という事もあり、塾通いで帰りがすっかり遅くなっている。


 そんな時に、いつもどんな時も傍でお支えする初美様が「デパ-トに絵画鑑賞と買い物に出掛けたいのだけれど頼むわね!」


 いつもの何気ない日常だが、真夏という事もあり、またデパートに出掛けるという事もあり初美もお洒落に余念がない。


 この季節にピッタリの黒の布地に鮮やかな黄色いヒマワリ柄のノ-スリ―ブフレア-ワンピ-ス、更には麦わら帽子の何とも華やかな美しい初美の姿がそこにはある。


 この日は万里子お嬢様が、従妹のめぐみの家にお泊まりしてくる日。

 そんな事もあり、デパートで沢山の買い物を済ませ絵画鑑賞した後、外で外食を済ませ、すっかり遅くなった初美と御供の滝。


 又その日は特に蒸し暑い日だったので、助手席に座る初美の肌をさらした細い腕とふくよかな胸元を強調した鮮やかなヒマワリ柄のワンピ-ス、更には夜風も手伝って、甘いコロンの香りに、等々抑えていたものが一気にはじけた滝なのだ。


 もう辺りも静まり返った公園に車を止めた滝。

{只の使用人としか思わない滝が、まさか私に手を出すことなどありえない事}

そう高を括っていた初美は、とんでもない目に合う。


「滝場所が間違っているわよ?」


 するといきなり滝が、初美に覆い被さりシートを倒し、胸の空いたワンピ-スに手を忍ばせ勢い良く乳房を掴み、瞬く間にスカ-トの裾に手を伸ばして陰○に指を突っ込んできた。


「ナッ何をするの?……ヤッ止めて頂戴!」

「ボッ僕はもう死んでも良い!……思いを遂げて死ねたら本望です。一生只お側で自分の気持ちを押し殺して生きて行くくらいなら死んだ方がマシだ!……あああ~!もうどうなったって良い!…死んでも良い!」


 こうして抵抗する初美の言葉も聞き入れずに、延々と初美を愛し続けたのだ。

 初美は、滝を首にしようか……?考えあぐねている。



 それでも…初美は、鎌倉に居る時から、もう既に精神的に追い詰められていたのだが、滝には犯罪に関わる事は一切相談していないが、社長の剛と別れ話が出ている話を滝に打ち明けていた。


{唯一心の許せる滝を追い出してしまえば、この未知の地でどうやって生きて行けば良いの?}


 こうしている間にも初美は、容態が思わしくなく、1日中寝付く日々が続いた。

それを救ったのが誰であろう滝なのだ。


 こうしていつの間にか、この優しくて危険な香りを放つ、どことなく暗い影を持ち合わせた、ク-ルでシャ―プな滝に身も心も許してしまった初美。

 この関係は、初美が死ぬまで続いた。


 滝にしてみればこんな勿体無い夢のような出来事に、自分の全てを初美に尽くし捧げようと強く心に誓う。


 そんなある日、初美が以前からの睡眠不足や不整脈、更には過度のストレスが原因で、突然心筋梗塞であっけなくこの世を去った。

 初美が亡くなるその日まで、滝と初美は、完全に身も心もひとつとなっていた。

{折角、身も心もひとつになれたのに!}滝は悔しさで一杯。



 お互いにすねに傷持つ身の上、滝の両親も初美の家族に負けず劣らずの過去を持つ、借金で犯罪の片棒を担ぎ殺された過去が有ったのだ。


 施設に預けられた滝だが、可愛い坊やという事も有り、養子に貰われて行き、やがて………。

 こうして一流企業【ATホ-ム】のガ-ドマンとして勤務する事になった。


 初美は、死に行くその日まで万里子の事を滝に事あるごとに頼み込んでいた。


「もし私に何かあったら娘の万里子を頼むわね!」


 滝にしてみれば、鎌倉に居る時から支えていた命より大切な初美奥様が、こんな未知の地に追いやられて早世してしまった原因は{一にも二にもあの貴美子と小百合が原因だ!許せない!}今尚恨んでも恨みきれない気持ちで一杯なのだ。


 こんな事から最も恐ろしい形で殺人の連鎖が起きて行く事に………?





















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