第25話⁂青木ヶ原の樹海!⁂


 紫の花びらは高貴な色として*・*。・

 紫式部は高貴な色のむらさきに、ちなんで紫と名付けられたらしい。


 そんな紫色の藤の花が咲き誇る*・❀

 1954年5月のある日の事。


 A氏は同郷の40代半ばの呉服問屋の井上幸子と言う女性からの電話に、唖然とする。


「私あなたと同じ小学校で1級下の呉服問屋の井上幸子です。……柳田酒造の勇さん一家とは唯一の生き残りメンバ―として連絡を取り合っているのよ!……ケンちゃん一度会いたいのだけれど?」


「エエエエエエ―――ッ!生きていたのか?・・あの呉服問屋の幸ちゃんかい?是非会いたいよ!」


「ワァ~嬉しい!私ね今東京で暮らしているのよ!……どこで会えるかな~?」


「ああ!俺が東京に出向くさ!」

 こうしてA氏と井上幸子と名乗る女性は、お互いが分かるように首に青いスカ-フを巻いて渋谷ハチ公前で落ち合った。


「お~い!随分変わって、綺麗になっているから分からなかったよ?」


「…本当に?私は直ぐ分かったわよ!ケンちゃん」


「じゃ~久しぶりに昼食でも一緒に取ろうじゃないか」


 こうして和気あいあいとレストラン街に消えた2人だったのだが?

 その3日後に、A氏は愛車と一緒に湖の中から変わり果てた姿で発見された。


 この40代半ばの女性井上幸子とは何者なのか……?

 最後にA氏と一緒の所を目撃されていた、この井上幸子の後を追う刑事なのだが、この井上幸子は長岡大空襲で既に亡くなっている事が判明した。

 一体この井上幸子と名乗る女性の正体は???



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「キャ――――――――ッ!タタタッタスケテ――――――――ッ!」


「お前は酷い!酷すぎる!死ね――――――――ッ!」


「ギャ――――――――ッ」


 1973年4月某日、矢田静子は、学校での差別とモデル事務所での人間関係に疲れ果てて突如として行方不明となった。

 母親の町子は近隣住民に静子が行方不明になった事を、涙ながらに吹聴している。


「静子がおらん!」


「どうしたと?」


「あの子はね~?学校でも朝鮮人だといじめられ、モデルの仕事でも行き詰まっていたのよ……静子ばかりに良い仕事が入るのでロ-カルモデル達から散々陰口を叩かれていたのよ、学校にも仕事場にも居場所をなくして……最近は家に籠りきりだったのよ!可哀想に!ワァワァ~~ン😭ワァワァ~~ン😭そして急に家出してしまったのよワァワァ~~ン😭ワァワァ~~ン😭」


「ばり気の毒い~」


 実は静子は家出などしていない。

 今井小百合として今年度から東京で大学生活を送る為に、既に状況していたのだ。



 そして今井小百合ちゃんは、誰かの手によって青木ヶ原樹海の奥地で殺害されて置き去りにされたのだ。

 残酷な事です。こんな奥地まで引きずり込まれて殺害されたとは???

 それでも……証拠を残さないためには致し方のない事。

 それだけ恨みが深かったという事なのだ。


 ここ青木ヶ原の樹海はプロ数人が1日がかりで探しても。遺体が1体見つかるかどうかなのだ。


 ましてや犯人は殺害してこの樹海にしるし(木に紐を結ぶ)を付けてかなりの奥地に入っている為、まずは見つからないだろう。


 それからもし見つかったとしても、動物たちの餌食となっている事から白骨化して、やがては身元を特定する事が困難になるばかりか、死因を特定する事も出来なくなる。


 一体誰が今井小百合を殺害したのか?


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