第8話

 しばらくして。


「なるほど「プリオン」とかの属性「危」が付く物は根本的に取得した瞬間から、そのスキルの獲得条件、獲得機会とかを話したり書いたり出来ないくなる。分かったのです」

「どうします? 今からお母さんに教えに行きますか」


「寝ているのです」

「ここだけの話、メールでその文章を送りつければ、本人が確認しなくとも知っていると判定されるのですよ」


「それは、なんか気が引けるのです」

「善は急げですよ? 行きましょう。私なんか嫌な予感がするので」



〜洞穴〜


 「お母さん私が守るからね。あれ? お姉ちゃんと狐ーさんじゃないですか! 何をしに来たのですか?」


「ちょっと主に用なのです」

「そうなの? じゃあ私、退くね」

「ありがとう青。狐さん。見つけました?」


「見つけたのです」

「じゃあ、それをお母さんの口に突っ込みましょう!」


「やっぱり、余は嫌なのじゃ、お主がやれぇ」

「はぁ、分かりましたよ」


「あぁ、主の口に変な虫がぁ」

「飲み込みましたね」


「口、口に虫の足が、、、、」

「こんなの取ればいいじゃないですか」


「ひぇえ!!」

「あれ? 狐さんってもしや、虫が苦手だったりします?」


「そ、そんな事ないのです」

「まぁいいです。地下に戻りましょう」


 今何があったか端的に話すが、余らは、主に獲得機会と獲得条件をメールで送った。そして獲得機会である共食いを経験した生物を「蠱毒」によって生まれ毒虫を、空が主の口に突っ込んだ。


 空、恐ろしい子!


「「スキル獲得。「プリオン」効果は、スキル一覧を御覧ください」」



「地下に行こうと思ったんですが、この際ですから、狐さんにも「核融合」をお教えします。取得機会はこうです。まずこのボンベを二種類を持ってください。私が「閼伽」で、狐さんを包みますから、内部温度を1億度まで熱してください。詳しい事はメールで送ります」

「うん? わ、分かったのです」


「じゃぁいきますよ。「閼伽」使用」

「よし来いなのです!」


「「内部温度は、400度です」」


「あ、これ私が発熱すれば良いんだ。えい」

「アツ!!!」


「頑張ってくださいね? 狐さん。「碧眼」いっぱい使ってもいいので」

「そんな事、言われなくても使ってるわい!!」


「「内部温度は、1000万度です」」


「もうちょっとですね? 狐さん」

「待って暑い熱い! ってかなんで「閼伽」使ってるのに喋れてるのじゃぁぁ!!?」


「囲ってる膜を振動させてるんですよぉーあと喋り方戻ってますよー」

「なるほどぉぉぉぉ」


「「1億度に達しました」」


「温度は条件に達したので圧縮しますよー」

「空、苦しいのじゃ! それに熱い! お主隠れSじゃろ」


「さて、なんの事でしょう? 私は、なんの事か知らないですよ。それに、まさか先輩の立ち位置である狐さんが苦しそうな姿を見て、た、楽しんでなんかない、で、ですって」

「お主、今笑ったな!?!」


「だから笑ってないですって、ほらーもっと圧縮しますよ」

「鬼じゃ鬼!」


 そして、数分後。


「「スキル「核融合」を取得しました。効果はスキル一覧で確認してください」」


「おお、狐さん頑張りましたね」

「もう、ころ、して、ころ、して」


「意識が朦朧としてますね。一旦冷やしましょうか」


 そんな状態の余に彼女は何をしたかと言えば、海の沖に投げ込んだ。

 そして、何かをやりきったかのような顔をした。実際スライムみたいな状態で、表情は分からないものの、そう思えた。


 投げ込まれた余の体は未だに超高温なのだから、当然アレが起こる。


 体が水面に触れる前に、水面が避けるように姿を消していく。


「「スキル、水蒸気爆発を獲得しました」」


「良かったじゃないですか。良さそうなスキル取得できて」

「良さそうって、待ってなのです。ナウ、ナウで爆発中なんですけど?!」


「気の所為ですよ」

「気の所為じゃないのです!!」


「あら、青どうしたの?」

「お姉ちゃんあれ何?」


「あれ? うーん大きなクジラかしら」

「くじらさんて、あんなに大きくて、あんなに煙みたいなの?」


「そうなのかもね」

「あ! くじらさん上に、狐−さんが居る!」


「助けてなのじゃ!」



〜地下〜


「早く掘るましょうね?」


 怖い、この悪魔。

 今何が起きているかと言うと、手が拘束されている。


 そう、ツルハシに化けた空の一部が、ガッチリ私の手を握らせていた。


 いくら逃げようしても、足まで伸びた空が関節の動きをロックして、動こうにも動けない。

 この状態を、纏わり付くと言わずして、なんと申しましょうか。


 そう、何とも言えないのです。

 

 そんな事はどうでも良いですけど、そろそろ、人魂の数が減って来ました。



 拝啓、主様。


 今年も、石の割れる音が、程よく響く季節となりました。いかがお過ごしでしょうか?


 余は今、ツルハシにこき使われています。とてもつらいです。


 主様、恐れ多いですが、空は化け物でございます。

 今後の彼女の行動への制限をお考えください。

 これでは余が死んでしまいます。


 ああ、主様。余に安らぎの一時をくださいませ。

 あの時、そう主様に初めて余の尻尾がふわふわだと言われた時、余は初めて人に必要とされていると実感しました。


 確かに、今も労働力として求められています。

 しかし、これはイヤなのです。


 こんな、奴隷なような扱いは、中枢組織の余である狐火が受けて良いものなのでしょうか?


 彼女もまた中枢組織なのは余も承知です。


 しかし、こんな可愛らしい狐さんが、こんなアルビノカラスみたいな輩に踏まれて良いのでしょうか?



 助けてください。

 ゴロゴロして、生活したいです。

 働きたくないでござる。


 敬具。妖狐 狐火。



〜街〜


 「頭殿、あの野郎は何だったんでやんす?」


「俺のも分からない。とにかく俺より弱いのに何故勝てたのか理解出来ない」


「恐れ多いでうやんすが、頭殿はスキルが少なすぎるでやんす。それに大剣は強いものの攻撃実行時間とリロード時間が長いで、でやんす。だからあんなに非力な野郎に負けたでやんす」


「五月蝿い! そんな事は分かっている」


 どうすれば勝てる。この現状をヒックリ返す事が、どうすれば出来る?


「だから頭殿、一回、装備等を見直すのがいいでやんす。頭殿の装備は火力は申し分ないでやんすが、速力にかけるでやんす。確かにレベリングでの効率はいいでやんすが、やっぱり対人戦での装備やスキルを考えるべきでしゃんす!」


「やんすやんす五月蝿い!」


 とりあえず、ショップに行こう。レベルが30に到達した。新しい物が売られているかもしれない。



〜ショップ〜



「いぇいらっしゃい! おう、加藤の兄貴じゃないですか。新しい物入ってますよ。ごゆっくり! あら、どうしちゃったんだいそんな表情して、なんか悲しい事でもあったかい?」


「ちょっと色々あってな」


「そうかいそうかい。じゃあな兄貴、余り大きな声では言えんが、最近な世にも珍しい物が例の遺跡から出土してな。それが運良く手に入れたんだよ。お安くするよどうだい?」


「「イベント発生。例の遺跡の出土品。本イベントは会話終了時、終了します」」


「どうするでやんす? お安いでやんすが、高いでやんす」


「買おう」


「兄貴ありがとさん。ほれ2KGだ。持ってけ泥棒!」


 そう言って、大笑いするおっちゃん。


「まいどあり! またきてな!」


「「アイテム取得「チェーンソー(T?)」を手に入れました。


 効果、本武器は動作時ガソリンを必要としない。また破損時、自動修復する。動作時、通常ダメージを減算したに後に、割合標的のHP値の90%ダメージを与える」」


「兄貴、その装置の使い方わかるでやんす?」

「あぁ、分かるとも。なにせ現実世界の仕事柄で使うからな」


「流石でやんす。尊敬するでやんす」


「なんだか、あの野郎に勝てる日差しが見えてきた。早速、ギルメン集めてレベリングだ」


「はいでやんす!」




〜漆森〜


「ねぇ、加藤さん。この森気味が悪くないですか?」

「あぁ、確かに佐藤の言う通りだな」


「そうでやんす。気味が悪いでやんす」

「伊藤さんは、黙っててください!」


「そんな怒ることないでしょ、佐藤ちゃん?」

「もうベタベタしないでください。この変態! 斎藤さん! 流石に通報しましすよ!?」


「まぁまぁ、佐藤さん落ちつてって」

「後藤さんは黙ってて!」


「賑やかでいいですね。僕は寝たいです」

「遠藤ちゃん、何、寝たい? 小生と?」


「斎藤さん。リアル世界で肉片になりたい? 直々に僕の手で、粉々にしてあげるよ?」


「お前ら、ちょっとは静かにしろよ」


 音と共に爆風が吹き下ろす。

「藤、藤うるさいなー、なんで君たち僕達の森に来たの? 理由教えてよ」


「「敵対クリーチャー「竜人」属性、霊&緑&水です」」


「兄貴、怖いでやんす」

 俺の後ろに隠れるように身を隠す伊藤。


「あぁ。答える。貴様を殺して経験値を貰う為だ!」


 竜人は笑った。

「あーそうですか。分かりました。第二の管理者も舐められたもんだね。プレイヤーってつくづく嫌になる」


 次の瞬間。暴風と水しぶきが吹き荒れた。


「「強制パーティー解散です」」

「やってくれるじゃないか。おもしれぇ」


「「単独戦闘を開始します」」


「君は僕の敵じゃない」


 宙に浮くその化け物は、ニヤリと笑みを浮かべ左腕を上げた。


「スキル「霊樹龍」を使用」


「「状態異常「自動回復無効」「呪縛+++」「養素吸収」「変異++」を確認しました」」

「「状態異常によりダメージを受けました」」

「「残りHPは約30%です」」


 ゆっくり降りてきた、化け物にチェーンソーを突き立てる。


 しかし、チェーンソーの刃は化け物の皮膚を傷つけながら自身のチェーンの回転により上に向かって走った。


 キックバックだ。


 重心が手元にあるチェーンソーの刃は、並大抵の人間では操れない。

 俺は、多少の心得はある方だ。

 だが、多少の心得があっても非常事態は、話が別だ。


 反射的に、頭はそれを避けた。


 しかし、その先には首がある。


 そのまま首の表面を抉り取るように刃は回転し、血管をブチブチと、また骨をゴリゴリと音を立てた。


 GMSは痛覚リミッターがある。しかし、その痛みは今まで感じたことの無い程の痛み。



「「HPが0になりました。リスポーン、もとい、昇天を行います」」


 光が俺を包み込んだと思えば、宿の布団の上だった。


 テレポート間際、声が聞こえた。

「痛かったじゃないか、でも浅い」

 そんな声だ。


 布団の上で窓から見える空を眺めていた。

 圧倒的なスキルで、ねじ伏せられた。

 そんな圧倒的で破壊力のあるスキルがほしい。


「「スキル「チェーンソー」を取得しました」」

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