第6話

「という事で、自分だけの世界にやってきました!!」

「海に山、森に湖!! やほーい!」


「なんだか、主がはしゃぎ過ぎて保護者になった気分なのです」


「キツネちゃん。みてみて! 海だよビーチだよ!」

「はいはい、なのです」


「まって、これって星の砂じゃない?」


「「星の砂を回収しました。売価は20Gです」」


 20Gで売れるの? これ。

 高いなー。


 これなら、ぼろ儲け。


 まあでも、作業する前に拠点作らないと。


「キツネちゃん。その辺の原木取ってきて!」

「分かったのです」


「拠点はどの当たりが良いかな? やっぱり竪穴式住居が良い? 面白みはあるけど、拡張性に難ありかな。やっぱり地下室かな最初は。豆腐建築でも良いけど、ダサいし資材を集めるのが二度手間だな」


「原木を取ってきたのです。4スタック位、、?」


「何故に倒置法。この世界の1スタックはっと。1024個、、、、?」

「Kなのです」


「だね。Kキロだね」

 多いなーかさばらないから良いけど。


 それで、アイテム制作は某ゲームと同じく作業台が必要っぽいね。


 ん? あれ、見間違いかな?


 トンカチ、ノコギリが必要? それに木槌?


「なんだこれ!!」

「あー作業台の制作には、多少の鉄が必要なのです」


「鉄?! どうやって集めるの?!」

「え、あ、このエリアでは、砂鉄なのです」


「砂鉄、、、?」

「砂鉄なのです。自然磁石で集めるのです」


「自然磁石? なにそれ」

「磁赤鉄鉱とも言いますが、化学式はFe2O3、三酸二鉄なのです」


「そんな、一酸化二水素ミズみたいに言わないでいいから。で、つまりは酸化した鉄って事?」

「そうなのです」


「それを探せと仰るのですか?」

「そうなのです。ちなみに磁赤鉄鉱は大電流が流れないと自然磁石にはならないのです」


「電流なんて、磁石以前の問題じゃん」

「雷なのです。磁赤鉄鉱を見つけて、それに落雷させるのです」


「はぁ。で、雷の落ちる確率は?」

「え? あ、なるほど。でも残念ながら、「確率」なのです」


「確率?」

「そうなのです。「一定確率」じゃない理由は環境や天気で確率が変動するからなのです。でも、基準となる天気値、7の時の特定の物体への落雷確率は「一定確率」0.01%ですよ?」


「つまり?」

「一定確率を左右させる値が変数な為、値が固定されていない「”変動する”確率」なのです。どちらを採用させるかは難しいから、裁定を引用するのです。


 等しい確率が二つ有った場合。例えば、「天気値7の時、一定確率0.01%」と「天気値が7な為、確率は0.01%」とが、二つ共言えてしまう場合、条件が付いていない方を使う。双方とも条件が有った場合、または、双方とも条件が無かった場合、より多く採用されていた値を使う。


 この場合、”時”は条件なのです。なので、”な為”だから理由を使用するって事です」


「ムズ」

「とにかく、難しいのです。と言うか、幸運のコートによって裁定がより、ごちゃごじゃになったのです」


「ムズ」

「まぁ、落雷確率は、「一定確率」とも言えるけど「一定確率」じゃないのです」


「確率ってムズいんだね。考えるのが面倒だから、幸運のコート捨てようか」

「それはヤメておいたほうが良いのです。「スレイヤーワイト」が弱体化するのです。それに大変なのは、ゲームの設計者なのです。こんな言葉で処理するような、なんと言うかカードゲームに似たようなルールや効果って、難しいのです」


「それもそうだねー」

「そんな事より、磁赤鉄鉱を探すのです!」


「はいはい。わかりました」

「自然洞窟に行くのです!」


「行くのは良いのだけど、キツネさん、腐っても狐なんだから、鉱物を嗅ぎ分ける位、鼻良くないの?」

「うーんと、、、、余は音に特化している「妖狐」なのです」


「音? じゃぁ洞窟の音位聞き分ける事は出来る?」

「もう! 余ばかり頼って、お主も「妖狐」なのだから出来るはずです!」


 そういえばそうだった。

 

「あぁ、ごめんごめん」


 確かに遠くの音がよく聞こえるけど、なんの音かは分からんなぁ。

 匂いは、潮の匂いしか、しない。



 ガサガサ、パキッ。

 枝の折れる音? 


「お姉ちゃんこっちーやっと食べ物見つけたよ!」


 え? 森の方から?


「何か聞こえなかった?」

「余は何も」


「自然磁石探しは中止。今から森に入る」

「あ、はい、です」


「え、、、、、、お姉ちゃん?! お姉ちゃんってば!! 大丈夫?!!」



 また聞こえた。女の子の声。

 

 そして、私は鬱蒼と茂る森に入っていった。



 見つけた。


 ハーピー?


 森の中少し開けた場所に、その子達は居た。

 切り株に座った子と、それを支えるかのようにして立って居る子。


 クリーム色の翼兼腕が被っていてよく見えないが、痩せ細っているようで、隙間から肋骨がもろに見えている。

「「敵対クリーチャー。「ハーピー(T2)」のペアです。対象ペアの状態異常は、双方とも「飢餓」「低血糖」「骨折」です」



 彼女らは私たちを見るに、その細い体を強張らせた。


「君たち大丈夫? そんな怯えなくても大丈夫だから」


「貴方達だれ、やめてよ。私達何もしてないから。やめてよ」


「私達は何もしないから、安心して」


「そう言われて、何度、巣を荒らされたか、分かってるの? 嘘だよ。嘘!!」


「ちょっと落ち着くのです。鳥の子さん達。ちょっと主さん。何を考えているのです?」


「キツネさんはちょっと静かにしてて。ねぇ君たち。お腹空いてるでしょ?」

「だったらなんです?」


「今、私、美味しい美味しい食べ物持ってるけど、欲しいかなーって」

「欲しいけど、毒が入ってたら怖いから要らない」


「そう? じゃぁ今、私が少し食べてみて毒が入っていないか、確かめてあげようか?」

「そんなんじゃ、信じない! だって毒無効があるかもしれないもん!」


「なら私の状態異常を見たら良いよ。毒無効なんて付いてないから」


 そう言って私は、余分に買っておいた食べ物、そう、赤く光る宝石。りんご飴に齧り付く。


「ほら、甘くて美味しいよ。ほら、ヨダレ垂れちゃってるじゃん。食べたいんでしょ? ほらあげるよ?」

「これはヨダレじゃない汗だ!」


 そんな苦しい言い訳を言いながらも、視線はりんご飴に釘付け。


「お姉ちゃん助けたいんでしょ? なら食べさせてあげなよ。で君も一緒に食べよ?」

「なんでそれを知ってるの?」


「ん? 痩せ細ってるから、そうなのかなーって」


 その言葉を聞いたハーピーは何やら考え込むような素振りを見せた。


「分かった。貴方を信じるよ」

「ありがとう。ほらりんご飴」


「なんで、お礼を言うの?」

 飴を受け取った子が不思議そうに見つめてくる。


「なんでだろうね。ほら、早く食べさせてあげて」

「わかった!」




「ちょっと、主さん。どうするつもりです?」

「どうするって、何を?」


「あの娘達のその後ですよ」

「一緒に住もうかなーって」


「でもまだ、生活ラインいや、家すらも出来ていないですよ? そうするのです?」

「なんとかする」


「なんとかするって、そういうのを無謀っていうのです」


 そんな会話は当然、彼女らに届いておらず、二人でりんご飴を食べて、、、あれ?


 あー! えっちです!


 その光景は、何というか。そうと言うか。

 女の子同士の口移しは、えっちです。

 もう犯罪です。良い意味で。


 その様子に、ドン引きしている様子のキツネさん。

 絶景なのに。


「でさ、二人共、私と一緒に暮らさない? こんな所にいても、食べ物も少ないだろうし? って大丈夫?!」


「「「ハーピー1」のHPが4減。残りHPは15です。状態異常「喀血」を確認。折れた肋骨が肺を突いたようです」」


「どうしよう、お姉ちゃんが死んじゃう。お母さんみたいな人、助けて、、、、」

わ、分かったお母さん言うな、そんな歳ちゃうわい


 分かったと言ったけど、どうすれば良いんだ?

 キツネさんの「碧眼」は関係が無いと使えないし。


 関係?


 テイムすれば良いのか?


「「「ハーピー1」のHPが5減。残りHPは10です」」

 迷ってる暇はない。


「君! お姉ちゃん助けたいんでしょ?!」

「あ、はい」


「なら、これから、私達と暮らしてくれる?!」

「なんでですか?」


「理由は後で良い。安全と衣食住は保証する暮らしてくれる?」

「、、、」


「時間が無い。早く!」

「はい!!!」


 ごめんね。


「自身の突きにより、「ハーピー1」のHPが1減。残りHPは9です」


 スキル「テイム」を十回連続で使用!!


「「テイムの使用の結果、失敗。失敗。失敗。失敗。失敗。失敗。失敗。失敗。成功。九回目成功しました」」


「「クリーチャー名「ハーピー」個体名「青」をテイムしました」」

「「個体名「青」にHPが「喀血」により9減。残りHPは0。

 個体名「狐火」の「碧眼」が自動発動します。「青」のHPが全快しました」」


 残りのハーピーにも、テイムを十回使用。



「「成功しました。個体名「空」をテイムしました。姉妹の詳細。2つの個体は所持しているスキルが同じなため、片方の説明は省きます。


 属性、光&風&水+。


 スキル「閼伽(T?)」光&水+属性専用スキル。取得機会不明

 液体化し、変形可能」」


「空、何をして、、、なんで泣いてるの?」

「お姉ちゃん、、、」


「じゃぁ、二人共こんな気味の悪い森なんて抜け出して、食べ物探しに行こうよ!」


 ん? 待って、なんかテイム生物一覧に、キモい毒グモとかいっぱい居るんだけど?

 まいっか。


「「毒グモをご覧になられましたが、毒グモより糸を採取しますか?」」


 なるほど、神は私に釣りをしろと言ってるな?

 何時間でも受けて立つ。

「はい。ついでに竿を制作」


「「釣り竿を生成しました」」



 

「うわぁー!! 何ですか? この水の塊! 青、分かる?」

「ううん。分からない! だけど、これだけあれば飲んでも飲んでも、減らないから大丈夫だね!」


 そんな二人は、海水を口に運ぶ。


「うえぇ、しょっぱい!」


「海だからねー 海はしょっぱいんだよ」


「そうなんだ。お母さん物知り!」


「違うのです! お母さんじゃなくて、主さんなのです!」


別にどっちでもいいよまだお母さんって呼ばれるような歳ではないけどね


「あー! 自然磁石の事すっかり忘れてた!」

「そうなのです。すっかり忘れているのです」


「あの、青と空ちゃん。「閼伽」使って、道具に変身出来ない?」


「よくわかりませんがやってみますね!」

「よくわかりませんがやってみますね!」


 流石、姉妹息ぴったり。


「お姉ちゃんが先に使うね。スキル「閼伽」を使用!」

「空お姉ちゃん頑張って!」


「「「空」に状態異常、「液状化+」が付与されました」」


「あー凄い。スライムみたい」


 目の前に居たのは、「空」の翼と同じ色の空色スライム。


「ちょっと空お姉ちゃん。体にまとわり付かないで、くすぐったいよー」


 あーハーピーがスライムと戯れてる。

 良きかな。


「で、「空」ちゃん。この道具っぽいのに、変形出来る?」


「お母さん。空お姉ちゃん。この姿だと喋れないみたい」

「え? そうなの?」


「で、空がお母さんに言いたい事があるらしくて、道具のプリセット? があるらしい!」


 へぇ、なんか良いなー私も好きな姿に変身したい。

 状態異常をリンクとか、転送とか出来るスキルって、無いの?


「「実在します。

 スキル「星座」 ...獲得条件、光属性であること。獲得機会、星が降る日、星を素材とする道具を飲み込む。 


 スキル「鏡面鱗」 ...獲得条件、水属性であること。獲得機会、海に生きる海すらも飲み込む魚を喰らう。


 などが該当します」」


 えーっとこの中だと鏡面鱗が簡単そう?

 ってか、獲得機会的に、釣りをするのは絶対らしい。あと、食料調達うんぬんかんぬんでも釣りはする予定だったし。


 獲得機会ぐらい、明確に記せって。

 なんだよ、海すらも飲み込む魚って、そんなにデカいの?


 まぁとりあえず。


「作業台を作りますか。青ちゃんと空ちゃんよろしくね!」


「この必要な道具って、ショップで武器として買えたはずなのです」


 え?


「なにそれ」

「買えるのです。なんだか、作るみたいな雰囲気になってるけど、買えるのです」


「早く言ってください」

「なんか、そんな雰囲気だったじゃないですかぁ!」

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