第3話 養殖されるユウシャ①

 勇者となることを決めた日、俺にパーティメンバーがあてがわれた。平均レベル40台の精鋭達だ。国王の親衛隊の平均レベルが25であることから、かなりの実力者であることがわかる。対魔王戦において最前線でタンクを担っていたアレクサンダー。野戦病院をワンオペで回したこともある聖女のマリエール。つい最近まで幽閉されていたマッドサイエンティストのエリザベトだ。


「てか、こいつらここにいていいのかよ! 」


 アレックスは最前線中の最前線のメンバーだし、マリーがいなきゃワンオペの野戦病院は回らないし、エルザは論外。身内にこんなのがいるなんて危険すぎるだろ。


「だいじょーぶ大丈夫。アタシは勇者サマ達をモルモットにはしないから。魔族のヤツをちょちょっとね、やるかもしれないけど。」

「安心しろ勇者のアニキ。すぐにまた前線に戻るさ。こっから前線まで馬車で5日だから、6日後には勇者のアニキも立派な前線アタッカーさ」

「道中どんな傷を負っても、私が治して差し上げますので安心してください。制限付きですが蘇生も出来ますから、最悪亡くなられても大丈夫です」


 なんだか嫌な予感がしてきた。俺の中の勇者像が崩れそうな気がする。


「勇者様には、今から6日間で最前線に行けるようにパワーレベリングさせて頂きます」


 理想の勇者像がガラガラと崩れる音がした。


 1日目、大量のスライムをトレインして、最強武器の聖剣でイッキにワンパンした。ゴブリンの巣に突っ込んで、アレックスとエルザが瀕死の状態にしたところを聖剣でトドメだけ刺して回った。

 2日目、魔法の使い方を学んだ。聖剣の使い手である勇者は魔法の適正も高いはず、らしい。聖剣に魔力を流すと光った。なんか強そうだと思ったけど、光っただけだった。ゲーミング聖剣。なんかダサいな。タンクのアレックスの後ろから魔法を打って、シャドウウルフを倒した。

 3日目、対空戦を学んだ。ハーピーをアレックスの後ろから魔法で打った。死にかけてもマリーの回復魔法でどうにでもなるし、レベリングの休憩なんて見えない。レベルが上がると各種身体能力が上がる。瀕死だった俺が格上との戦闘で大量の経験値を獲得することによってどんどん死ににくくなってきた。もはや人間ではなくなっている気がする。




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