#10 インキュベーション

 おれたちがさっきまでいた場所には、オレンジ色に光り輝く大きな球体が地面にめり込み、威風堂々と鎮座していた。




 その球体は、ちょうど運動会で使う玉転がしの玉と同じくらいの大きさだった。


球体の表面には細かな0と1の羅列が浮かび上がり、時折りノイズがさざ波のように走っている。




 「おいおい、いったいなんだよあれは?」




 「爆弾……じゃないよね?」




 「やっぱりなんかのイベントじゃないかな?」




 「いや、序盤のクエストにこんなのはなかったはずだけど……。」




 「撃ってみようぜ!」




 「やめとけよ。」




 球体を遠巻きに見ていたプレイヤーたちから、口々に疑問の声が上がる。




 「……卵、ですかね?」


おれの隣で球体を見ていた夜兎さんが、ぽつりとそう呟いた。


「卵?なぜ、そう思ったんですか?」


おれは思わずそう聞き返した。




 「ほら、聞こえませんか?ドクン、ドクンって音。まるで心臓みたいな。」


おれは耳を澄まし、球体が発する音に意識を集中した。




 ……ドクン、ドクン。




 ……確かに聞こえる。


まるで脈動する心臓のような音が、目の前の球体から発せられているのだ。




 もっとよく観察してみようと球体に近づいた時、おれはあることに気付いた。


球体表面に、微かだがひび割れのようなものができているのだ。




 さらにひび割れは、球体の発する鼓動に呼応するかのように、徐々に大きくなっていく。


ドクン、ドクン、ドクン……ビシッ、バリバリ……!




 ひび割れが、まるで稲妻の様に縦に走る。


さらに、ひび割れからは数本の黒い爪のようなものがヌッと突き出され、内側から殻をこじ開けていくのだ!




 「わっ!」


おれは思わずそう叫んで、その場に尻餅をついてしまう。




 卵が割れる。




 殻を破り、何かが生まれようとしている。




 卵から生まれ出たそれは、身体を仰け反らせ、大きく咆哮した。




 夕陽に照らされた怪物それの姿。




 T-REXを思わせる巨大な体躯。




 頭から生えた大きなツノ。




 全身を覆う黒光りする鱗。




 鋭い鉤爪が生えた巨大な腕。




 見たこともない巨大な竜がそこにいた。




 怪物はひとしきり咆哮した後、こちらを睨み据え大きく顎を開き、再び咆哮した。




 琥珀色に光る蛇のような眼が、おれを睨みつけた。










 _繝?せ繝サ繝帙?繝ウ lv99 が出現しました。












 続く

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