2話目

人に押し潰されそうな程の満員電車の中で私はドアに背をつけて目の前の彼を見上げる。

「あの、ごめんね」

「別に」

私が潰されないよう庇うように立つ彼は私を見もせず素っ気なく答える。

けれどちらりと盗み見た彼は眉間に皺を寄せて外を見ていて、そんな彼の表情が照れているのだと私は知っていた。

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