第3話 殺殺滅殺大滅殺

 たっぷりふわふわもちもちマシュマロ。リコッタチーズパンケーキに熱熱とろとろのマシュマロをとろりとかけて。ナイフで切り刻んで斬斬ザクザク、甘さの暴力みたいなかたまりをキラッ☆と奥歯で噛み殺します。がぶがぶ。

 そしてこちらもどろどろこってり濃厚チョコレートを上から間髪いれずにかけて煮殺します。イメージは中国の拷問。熱した油でしたっけあちらは。熱でふやけていたマシュマロが上からの暴力に屈してさらにどろり。マシュマロは二回殺されました。

 さらにさらに、こちら用意したブラックコーヒー。焙煎した豆にこだわっているとかいう、ちょっとしたお値段のインスタントコーヒーです。珈琲、と言いたくなるようなくっきりきっぱりした良い香り。こちらに特に何も考えずに買った市販の牛乳をぶっかけてカフェラテにしてやりました。台無しです。

 コーヒーの死骸もといカフェラテはそれでも最後の断末魔とばかりにいい香りを鼻腔に残して倒れていきます。残念、殺しきれませんでした。

 パンケーキはまだまだ残っているので苺ソースもかけてやりましょう。血のように赤くべちゃべちゃしたソースをパンケーキにかけてやればほら簡単、白くなめらかな肌はあっという間に臓物ぶちまけたような汚らしい色になって凌辱されてしまいましたとさ。

 わたしの楽しい食事の時間。誰も入れないわたしの聖域。でもでも、ちょっとまだ足りない……お腹が満たされない……


「食事中すんません。拷問一人お願いシャッス」


 ノックの音とともに放り込まれたのは、なんだかとっても美味しそうな男の人でした。


 もとは裕福な人だったのでしょう。お肌はもちもちぽってりで、指なんかマシュマロみたいでそれなのに指輪つけてる。ちょっと血出てるけど、まだまだ血色もいいし、ジューシーで美味しそう。


「えー?何した人ー?」

「今までお金流してくれた人。いなくなると保険金とか色々いっぱい。金庫のナンバーとか聞いてくれるとアガります」


 ふるふる震えてる。大丈夫、やさしく噛み締めてあげるからね。

 さっきのは前菜。ここからはお仕事兼デザート兼メインディッシュ。楽しい楽しい食事の時間。

 今から想像する味にゾクゾクしながら、私は拷問対象にリラックスしてもらえるように、にっこり笑ってあげました。



(第三話 了)










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