クソ映画と一つ屋根の下

私は柳川、大学生だ。 つい先日は親に実家まで呼び出され、性根を叩き直された。 今日は山下から大事な話があるらしく、山下のアパートへ来ている。


 「怪異庁と名乗る奴に、出会ったんだ」


 「怪異庁? 素晴らしいネーミングだ。 今朝のトレンドに乗ってたぞ、エイと戦ってる動画付きで」


 「なんだ、知ってたのかよ、廃病院で怪異と戦った話はしたろ? そこで、阿波多良29って怪異庁の人が俺を命懸けで守ってくれたんだ」

 何が言いたいか理解できてきたぞ。


 「それで、怪異庁の助けになるようなことがしたいってわけだ」


 「勘が冴えてるなぁ柳川! その通り、恩には恩で返す!」


 「怪異庁には一度行ってみたかったんだ。 良い機会が出来た。 いつ出発にする?」


 「明後日にしよう、せっかくだから泊まっていかないか? Z級ホラーでも見ようぜ!」


 私は山下の誘いに乗り、久しぶりに友人の家へと泊まることにした。 Z級ホラー付きだが……


 [怪奇! グランベリー怪人の秘密] [ハンドレッドヘッドシャーク]などの苦痛を伴うホラーを見て、私達は布団へと入った。 かなりしんどい。


 

         [二時間後]

 今、私の目の前には、ハンドレッドヘッドシャークが悠々と泳いでいるのが見えている。 まずい状況だ。 明らかな怪異だろう。 寝室で寝ていたはずが、今いるのは深海だ。


 「や、やました。 やました、おきてるか、、」


 私は小声で山下を目覚めさせようとした。


 「うわぁぁぁぁぁ! くすぐったい!」


 「バカ! お、大声なんて出したら……」


 ハンドレッドヘッドシャークが、異様な数の頭を振り、襲いくる! 


 ことはなかった。 奴の首は一瞬で全てはねられ、息の根が止まった。 部屋が元に戻る。 そこには一人、女が佇んでいた。


 「怪異対策庁のflyFだ。 神器について聞きにきた。 間一髪だったが、大丈夫か?」


 私は自分の頭がZ級ホラー達のせいでおかしくなったのかと思い、山下に頬をつねらせた。 普通に痛い。 どうやら現実のようだ。


 山下も呆然としている。 困惑と安堵が混ざり、絶妙な空気がしばらくの間流れた。

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