ダンジョンインミヤオリ 混戦

阿波多羅29がオークのような怪異を軍用ライフルでボロ雑巾にしながら周囲を確認している。 俺はバットで木根さんを守りながら魔術師に合図をした。

  「秘乎瓈、羅衣鋭婀ッ符!」

 暗かった内部が照らされていく、道はまだまだ長そうだ。 引き続き魔術師に先陣を任せ、俺たちは奥へ進む。


  「しょぼくれていますね、私の拳は強大な敵を欲しています」

 緑太がそう呟き、指を鳴らした。 そんな緑太に応えるように、突如壁が破壊され、そこからゴーレムが出てきた。


 緑太はゴーレムの重い一撃を直に喰らい、破裂して死亡した。

 

 「なんて事だ、緑太が!!」

 悲しむ暇もなかった。 ゴーレムはこちらに向き直り、再び襲いかかってくる。


 その時、マサクルが衝撃波を発しながらゴーレムの頭へと飛びついた。 ゴーレムは衝撃波に耐えきれず破壊され、マサクルに残骸を貪り食われている。 やはりマサクルは頼りになる仲間だ。


 「どうする、死人が出たが、帰るか?」

 阿波多羅29が弾倉を入れ替えながら言う。


 「俺はまだまだ行ける」

 魔術師が興奮気味に返答する。


 根本さんはゴーレムの襲来時に巻き添えになってしまっており、死亡した。 彼らの仇討ちのためにも、俺は進むことを決意した。


 魔術師が呪文を唱え怪異にダメージを与え、阿波多羅29がライフルで止めを刺す。 俺とマサクルの出番は余りなかった。 一時間程進むと、開けた場所に到着した。


 「どうやら、お出迎えのようだぞ」

 阿波多羅29がライフルを構える。 数十匹もの怪異がエレベーターのような装置に乗り、運ばれて来た。


 俺はバットを家から持って来た包丁に持ち替える。 魔術師も呪文を唱え始めた。 マサクルは既に光の速さで怪異を蒸発させている。 ここが正念場だろう。


 俺はアルマジロ型の怪異を包丁で刺して攻撃しながら、周りの状況を見た。 怪異の数は減って来ているが、それでも徐々に押され始めている。


 アルマジロが体当たりをして来た。 避けらない、近づき過ぎていた。 ゴスっ と脇腹に衝撃が走り、意識が遠のきそうになる。 包丁で自分の胸を浅く切りつけ、状態をリセットさせた。 二度目の体当たりを準備しているアルマジロにしがみ付き、ゼロ距離で包丁を突き立てた。


      一回 二回 三回 四回     

    

    四回目でアルマジロの目から生気が失われた。 病院代は高くつくだろう。 魔術師の片腕が上空に舞ったのが見えた。 魔術師はそれでも呪文の詠唱を止めず、叫び続ける。


 魔術師の純白のローブを伝い、電流が疾走した。

次の瞬間、辺りは光で満たされ、怪異は一匹残らず

消滅した。 魔術師は力尽き、体を地面に落とす。


  「俺のことはいい、存分に魔術を使えて楽しかったぞ、山下」

 俺は泣きそうになったが、魔術師の手を取り、彼の胸に大切にしていた魔導書を置いてその場を後にした。


 生き残ったのは俺、阿波多良29、マサクルのみになった。 阿波多良29は怒りの形相になり、何処からかミニガンを取り出し天井に向かって全弾撃ち尽くした。


 怪異が乗って来たエレベーターへ乗り、最深部へと向かう、マサクルが形態変化し唸るのが見えた。   


        反撃の時間だ。

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