留年生と草薙剣

カナンモフ

故郷にて

私の名前は柳川、今年で21になる大学生だ、最も今は留年中だがね。


 大学に入ったは良いものの、そこからがダメだった。 受験勉強から解放されたという安心感から遊びまくり、飲みまくり、今では大学に入る前より頭が悪いかも知れない。


 留年のショックもあり、一旦故郷へ帰ることに決めたのは一週間前だった。 久しぶりの帰還は、吉と出るか凶と出るか、何はともあれ行ってみなければわからない。 


 休みの期間を利用して荷物を整理し、出発した。


 午後9時に列車は故郷へとたどり着いた、かなりの長旅で、スマホが悲鳴を上げていたし、私の腰も悲鳴を上げていた。 


 実家に帰るのは流石に不味いと感じた私は、周辺のホテルを探して泊まることにした。


 朝7時に目が覚めた。 今日から二日間はリフレッシュタイムだと決め、ホテルから出て街へと繰り出す。 


 懐かしいとまではいかないが、久しぶりの風景を目に焼き付けていたら、気づいた頃には夜だった。 ホテルに帰ろうと歩を進めた瞬間、何かが聞こえて足を止める。


  振り返ると、教授の顔をしたキメラのような化け物がこちらをじっくりと眺めていた。


「うわぁぁぁぁぁあ!ぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁあいいい^_^」


 私は情け無い悲鳴を漏らしながら夜のシャッター街を疾走した。


 化け物は四つもある足を気味が悪い程器用に使いこなしていて、私がこのまま普通に走っているだけだと10秒も保たない位の早さで追いかけて来ている。 

 何か工夫をしなければいけなかった。 


 「うおおおおおお!!!」


 都合の良い所に配置されていた○ンタッキーのカー○ル○ンダース人形を蹴り飛ばし、怪物の歪な目にクリーンヒットさせ、私は何とか神社にまで逃げのびた。


 その神社は廃墟のようになるまで放置されていたらしく、とても神聖な地とは思えないほどの不気味さを出していた。 社は半壊し、本殿は崩れかけている。 

 

 私は恐怖を押し殺し、化け物から逃げるために社を抜け奥へと向かった。


 唖然とした、一瞬正気を失いそうになった。 

 奥の奥、本殿には、両足を食いちぎられて二度とサークル活動が出来ないようにされた大学生が数百体転がされていた。


 どうやらあの化け物は私の足が目当てらしい、あんな未提出レポートの怨念の塊に私の足が食いちぎられもいいのか? 良いはずがない! 私はすぐに武器を探した。 

 

 見つかったのは無残な死体となった大学生が持っていた卒業論文のみ、だが、私は高揚し、叫んだ。

 「哀れにもキャンパスライフを失くした大学生!! この卒業論文に力を!」 


 卒業論文はそれに応えて光り、草薙剣と化した。 

 ブゥーン、ブゥーン、化け物がマッハ100を超えて迫り来る、私は剣を斜めに逸らし、化け物を切り裂いた。 

  


 それから10日、私は今病室にいる。 化け物の死骸は見つからなかったが、犠牲者となった大学生の無念は晴らすことが出来たのが救いだといえるだろう。 

 退院したらちゃんと講義を受けよう、教授にも謝ろう、しみじみと思った。

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