第23話

 異形の化け物の体がボロボロと崩れ、黒いモヤとなって消えていく。

 最後に残されたのは魔石の欠片。

 以前倒した魔石と合わせたら一つの魔石の半分になりそうだ。

 ということは、あと似たような魔物が二体残っている? 

 はぁー。

 最悪だ。

 嫌な予感が、悪寒が消えてくれない。

 別に異形の化け物は強くない。

 残り二体もこの程度だったら僕は余裕で倒せるだろう。

 だが、本当に消えないのだ。悪寒が。

 何なのだ。

 初めて見る存在。

 初めて感じる存在。

 意味がわからない。

 どうなるのか読めない。

 あぁ、最悪。

「零くん!」

 明日香が突進してきて僕に抱きついてくる。

「よかった。よかったよぉ」

「ははは。ちょ」

 僕は明日香の肩を叩く。

「しまってる。首しまってるから」

「あ、ごめん」

「ケホッ、ケホッ」

 やばい。

 現実世界で一番のダメージかもしれん。

「いやー、凄まじいな君は」

 退散していた自衛隊の人たちが僕の方に向かってくる。

「本当に助かった。君がいなかったらどうなっていたことか……」

 間違いなく全滅していただろう。

 というか、これやばくないか?

 普通に考えて、ゴブリンエンペラーもオークエンペラーも異世界で1000年に一度の大厄災と呼ばれるような魔物だ。

 ゴブリンエンペラーはともかく、オークエンペラーは正真正銘の大厄災だ。

 異世界でも国の1つや2つ簡単に吹き飛ばすような大厄災である。

 そんなものがここに現れたのだ。

 僕がいなければ確実に日本は終わっていただろう。

 本当に世界はどうなっているのだ?

 世界各国にもオークエンペラーレベルの化け物がいた場合、世界各国は容易く滅んでいるのではないか?

 それともなんだろう。

 僕が知らないだけで何かそういう特殊な機関が存在するのだろうか?

「本当に助かった。感謝してもしきれない」

「いえいえ、僕が勝手に戦っただけですから」

「本当にありがたい。それにしても……」

 自衛隊の人が半壊しつつも未だ形を残している人骨で出来た玉座に視線を向ける。

「悪趣味だよね!人骨で出来た巨大な玉座なんて!あぁ、おぞましい!」

 明日香が嫌悪感たっぷりに話す。

「……そうだね」

 それに僕も弱々しく同意した。

 ……。

 ………。

 悪趣味ですか?

 人骨でできた巨大な玉座は悪趣味ですか?

 やっぱりアウトだろうか?

 僕のコレクションの中には全部人骨とは言わないものの、そのほとんどが人骨で出来ている玉座があるのだが……。

 悪趣味ですか?

 割とお気にの一つなのに……。

 みんなの前で使うのはやめておこう。

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