そこは果たして人間の尊厳が保障される幸せな世界なのか。

 地味なクラスメイトの女子に恋をした高校生の主人公は幼なじみの力を借りて付き合うことに成功します。

 序盤は爽やかな青春ドラマかなと勝手に想像し拝読し始めましたが、その女子の家に招待されたことで物語は大きく変化していきます。

 そこは主人公が見たこともないような隔絶された世界。異文化や異教の地でした。
 華波多真教国。地味な彼女は仮の姿で、真の彼女はそこで教祖的存在でした。

 主人公は夫候補として、次第にマインドコントロールされていきます。

 宗教やそこに渦巻く陰謀や事件。
 彼女には人の心を支配する特別な能力がありました。

 現実にもあり得るような宗教の世界を、さらに上回るような真教国。ここは日本であって、日本ではないような、生命の倫理も人間の尊厳をも保障されない世界。

 独特の世界観と緻密に描かれた情景描写。

 ――果たしてこの真教国で、人として生きる幸せはあるのか。

 作者様の際立つ筆力は、どの作品にも通じるものがありますが、本作は特に難しい問題に斬り込んだ力作だと思います。

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