現代によみがえった「歌物語」、ここに堂々の登場!

この小説は些細に見える事件から始まった傷心の主人公に刺さったものの様子を全て軽快かつ重量感のある詩で語る。まるで古の歌物語のようだ。現実を突きつけられた主人公が詩の中で主人公にとっての「真実」を語っていく様が、とても優美でリアルな心理描写になっている。素晴らしい。この手の作品はプロでもない限りどうしても痛いポエムに映りがちだが、この小説は違う。柔らかな肌触りの頑丈な布で包まれた切っても痛くないほどに鋭い刃。そう形容できるような美しさを誇っている。
見事。

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